平松愛理「歴史の年表のただの1行にしないため」30年限界説超えて記憶歌い継ぐ/阪神淡路30年
日刊スポーツ / 2025年1月17日 0時0分
シンガー・ソングライター平松愛理(60)が、故郷を襲った阪神・淡路大震災から発生30年となる17日、神戸煉瓦(れんが)倉庫K-waveで5年ぶりとなる復興支援ライブ「平松愛理プロデュース1.17KOBE MEETING~あれから30年~」を開く。
神戸市出身の平松は震災で実家が全壊。医師だった父は、がれきの下から点滴袋、薬を取り出し、医院の隣の空き地で無料診療を行い、地域に寄り添った。
地震が発生した95年1月17日、自身は全国ツアーの合間に東京でインフルエンザでダウンしており、震災を体験することはなかったが、友人や知人を数多く失い、罪悪感を抱いてきた。
97年からは「音楽を介してメッセージを発信できる場所を」との思いで復興支援ライブ「KOBE MEETING」を毎年欠かさず開催。収益金を寄付してきたが、19年に父が亡くなったことなどもあり、発生25年にあたる20年でひと区切りとしていた。
20年のライブ後、コロナ禍が世界を襲った。ライブができなくなり、配信などできることを模索する中で、21年8月、新型コロナに感染。生死の境をさまよった。
「東京五輪をやってて、ちょうどデルタ株で亡くなってる方が多い週。シリアスな感じでした。救急隊員の方は来てくれたんですけど、搬送するところがなくて。自宅にいて、早い内に手当てをしていたら違ったのかもしれないですけど、後遺症が本当にひどかった。それが長かったので、コロナ前の自分の活動を復活させることが難しかった」
そんな「人生の予定になかった5年間」を過ごし、震災から30年が近づいてきた昨夏、「30年目だな、何かやれることはあるかなって一番最初に思った」。
震災発生直後に現地リポーターから“何から何まで”やった時のように「原点に戻った感じで、なんでもやらせてもらいたい」と漠然と動き始めた。
11月になると、思いはより突き上げてきた。
「自分がやらないでどうする」
自分にできること。それはやはり音楽だった。
「被災地に行くとみんなすごく頑張られている。それ以上ないくらい頑張ってらっしゃるので『頑張って』って言えない。でも、歌だと『頑張って』ってことをメロディーに乗せて伝えられるってことのすごさに気付いた。言葉じゃなくて、歌なら伝えられる思いがある。被災地の方々が頑張ってる姿を見ると、胸を痛めながらも勇気をいただけた。私にだってもっとできるわって思った」
歌があったからこそ、罪悪感を感じていた自分自身も救われてきた。
1度はライフワークから外れたイベント。5年のブランクで関係者の世代交代などもあり、準備には苦労した。それでも、開催を発表すると喜んでくれる人、協力を申し出る人も多かったという。
「5年ぶりにやりますって言った時に喜んでくださった。それがうれしくて。今は前のポジションにいなくても、できる限りやりますと言ってくださる方もいて、非常にありがたい」
30年限界説という言葉がある。災害発生から30年たつと記憶が薄れ、継承が困難になるのだという。
平松は「初めて知りました」と話しつつ、「そうではないようにしていかないといけないと思います」と力強く言い切る。
これまでも節目は経験してきた。そのたびに「命の重みに節目などない」と言い続けてきた。
「阪神淡路のみならず、他の日本各地の人たちにも、こういうことが神戸で起こって、人の心の傷はいつまでも癒えないけど街は立ち上がっていった。被災者の人がこんな経験をして、こんなふうに思って、どうやったかっていうことをちょっとでも知ってもらいたい。お客さんに“語り部”になってもらえるような気持ちになってもらえるライブをしたい。それが今回のテーマ。30年目にしかできないことがテーマになっている」
30年という節目で取り上げられやすいタイミングだからこそ、できることがあると信じている。
「30年前の1月17日に起きたことを思い出したくない方もいらっしゃると思う。そういう方は頑張って無理して思い出さなくてもいい。決して強制的なものではないです。あの日の出来事を歴史の年表のただの1行にしてしまわないために、誰かに話したいなと思う人は来ていただいて、一緒にその思いを育んで、どなたかに実行していただけたらうれしいな」
今回の収益金は神戸レインボーハウス、東北レインボーハウス、宮城・山元町で行われている「黄色いハンカチプロジェクト」の維持管理を行う「やまもと語りべの会」へ寄付される。【阪口孝志】
◆平松愛理(ひらまつ・えり)本名・平松絵里。1964年(昭39)3月8日、神戸市生まれ。89年に歌手デビュー。92年に「部屋とYシャツと私」のヒットで日本レコード大賞作詞賞を受賞した。
◆阪神・淡路大震災 1995年1月17日午前5時46分、兵庫県淡路島北部を震源にマグニチュード(M)7・3の地震が発生。神戸市、淡路島などで観測史上初となる震度7を記録した。死者6434人、重傷者約1万人、被害家屋は約64万棟。同震災から、避難生活のストレスなどで体調が悪化して亡くなる「災害関連死」との概念が生まれた。阪神高速が横向けに倒壊した映像は世界に衝撃を与え、その後全国の道路橋などで耐震性の強化が進められた。
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