映画「時には懺悔を」6月公開の中島哲也監督、14年「渇き。」出演女優巡るトラブル説明し謝罪
日刊スポーツ / 2025年1月21日 17時37分
中島哲也監督(65)が21日、noteを開設した。その中で、2014年(平26)の監督作「渇き。」に出演した女優との間で性暴力シーンを巡るトラブルがあったと報じられたことに関し、コメントを発表した。今年1月1日に、打海文三氏の小説を構想15年を経て実写化する、同監督にとって18年「来る」以来7年ぶりの監督作「時には懺悔を」の製作と6月の公開を発表したが「渇き。」をめぐるトラブルに関し、同監督から説明、コメントが一切、出されておらず、対応を疑問視する声が上がっていた。
一部報道では、当該女優が脚本を読み性暴力シーンを了承しつつも、バストトップを露出する描写はNGという前提だったものの、不本意な形で当該シーンの撮影が行われたと指摘。編集でカットするとの説明がありながら、関係者が集まった試写ではそのまま上映され、その後も協議を重ねたが薄いぼかしがかかっただけだったため、同女優は自殺未遂を繰り返し、芸能界から去ったなどと報じられた。
中島監督は、一連の報道後、コメントを出さなかった理由について、まずつづた。「そもそも私は声高に自身のことを語るのは不得意であり、さらに自身への非難や誹謗中傷にまるで無頓着で、何かを発言しそれに対して様々な反論が巻き起こって…という状態が長く続くくらいなら、私が一方的に責められそれで終りにしたいという、今から考えれば浅はかで呆れるほど甘く身勝手な考えによるものでした。誠に申し訳ありません」と謝罪した。
今回、コメントを出したことについては、「時には懺悔を」が公開されることを受けてのことと説明。「今回、多くの人々の協力と支援で7年振りに新作映画を作ることが出来、しかしながら週刊誌の報道に対し当事者の1人である私が何の発言も謝罪もしないまま映画を公開しようとしていることへの多くの方々からの厳しい批判に接し、また私1人が責められるならまだしも全力で今回の映画作りに参加していただいたスタッフキャストにまで人々の不信感が飛び火し、多大な迷惑をおかけしていると知り、やはり当時の報道に対し正式に私自身が発言すべきであると決意するに至りました」とした。
まず問題となったシーンの撮影について、当該女優A子さんが、バストトップが露出するヌードはNGで、そのことは事前に所属事務所を通じてプロデューサーに伝えていたということに関して「私は、その事実を撮影当日まで知りませんでした」と説明。「そもそもこの役のキャストを探す際に、バストトップも含むフルヌードでの撮影になることはプロデューサー、キャスティング担当者に伝えていましたし、それが可能な人のみオーディションに参加するよう要請しました。この役のオーディションを受け、役に決定したA子さんが実はフルヌードNGであることを知らされたのは当日そのシーンの撮影直前で、A子さんがその撮影に多くの不安と不満を抱えていたことにも正直、気付いていませんでした」とした。
その上で「とりあえずその日の撮影は中止し、プロデューサーとA子さんの話し合いに遅れて私も参加、その席で『編集時にA子さん本人にも参加してもらい不都合な部分をカットする』と私が提案(すでにA子さんで数シーン撮影済みであったためです。)して、A子さんにもそのことを納得してもらい、翌日そのシーンの撮影を行いました」と説明した。
ただ、編集室にA子さんを呼ばず、彼女のチェックを受けないままスタッフや関係者用のゼロ号試写が行われたということに関しては「事実です」と認めた。理由については「1シーンといえど編集には長い時間がかかりますし却って迷惑をかけるかもしれないと思い、問題となったシーンのワーク編集を終えたテープをA子さんにチェックしてもらい意見を聞いて修正を行えば良いと考えました。今から思えば、ちゃんと編集室に来てもらった方が、このような行き違いはなかったのかもしれませんが」と反省した。
その上で「そのシーンを編集したテープは制作プロダクションのプロデューサーからA子さんの事務所のマネージャーに送り、A子さん本人にチェックしてもらうようお願いしました。後日、A子さんから編集についてのレスポンスがあったとのプロデューサーの連絡を受け、私はいくつかのカットを短くしたり、カット自体を無くす、見えて欲しくない部分を合成処理で消すなどの作業も行いました」と、編集を終えたテープを見たA子さんの回答を受けて、編集や処理を行ったと説明。一方で「それはもちろん、編集テープを見たA子さん本人からの指示だと思っていましたし、ゼロ号試写まで彼女がそのシーンの編集を見ていなかったというのは、週刊誌の記事で初めて知り、本当に驚きました」とA子さんが当該シーンの編集を見ていなかったことは知らなかったと主張した。
中島監督は「映画が完成し公開となる過程で、納得出来ない気持ちを抱えたA子さんが監督の私に直接会い、彼女の思いを伝え、また私からもこうなった経緯の説明を聞きたいと何度も要請したということも、私は何も聞かされていませんでしたし」と、A子さんが直接、面会を希望していたことも聞かされていなかったと説明。その上で「さらに言えば報道で言われているような『監督の演出にイチ俳優が口を出すな』などという発言は、A子さんに限らず他の如何なる俳優さんに対しても断じてしたことはありません」と、一部で報じられた自身の、俳優へのハラスメント的発言は一切、したことがないと強調した。
自らのスタンスについても説明した。「そもそも私は監督としてキャストやスタッフと頻繁にコミュニケーションを取るタイプではありませんし、カメラ前で起こる出来事にのみ集中し、それ以外のことに細かく気を配るのは不得意です。『そんな人間が監督などするな』と言われればその通りですし、反論の余地はありません」と、製作陣とのコミュニケーションを取るタイプではないとした。その上で「俳優にとって多大なリスクを伴うこのようなシーンの撮影にあたり、事前に監督である私がA子さんと直接話し合う機会を持たなかったことがこのような事態を引き起こした大きな要因であると、私は認めざるを得ません」とA子さんとの向き合いが足りなかったことが、一連のトラブルの要因であると認めた。
「時には懺悔を」では、主演の西島秀俊(53)と共演の満島ひかり(39)とは初タッグを組む。さらに黒木華(34)宮藤官九郎(54)柴咲コウ(43)塚本晋也(64)片岡鶴太郎(70)佐藤二朗(55)役所広司(68)と、日本映画界の名優が名を連ねた。で、重度の障がいを抱える子どもを通して描く、親子の絆の物語。
中島監督は、同作の公開を踏まえ「今後、このような不幸な出来事を操り返さぬために、私にいったい何が出来るのか。今回の新作映画にもいくつか気を遣うべきシーンがあり、その撮影時プロデューサーとも話し合って、インティマシーコーディネーターに入ってもらいました」と説明。「私が『渇き。』において遭遇した不幸な出来事の大きな原因は、監督である私と出演者A子さんの間に正常なコミュニケーションが成立していなかったこと、私とA子さんの間にあまりにも多くのスタッフがおり、結果、監督である私の意図はA子さんに正しく伝わらず、またA子さんが役を演じる上での不安や不都合が監督の私にまでダイレクトに届いてこなかったということでした」と、A子さんとのコミュニケーション不全を認め、俳優との間に多くのスタッフがいるシステムが原因だとした。
その上で「今思い出しても、とても情け無いことです。この問題は制作体制をなるべくシンプルなものに改善し、かつインティマシーコーディネーターに入ってもらい両者の立場を尊重し丁寧に伝え合うことで、完全とは言えぬまでも多くの部分が改善されたように思います」と、反省をし、製作システムを改善したと強調。「撮影現場におけるキャストやスタッフの人権を守るためのシステム、その完成はまだ遠く、でも小さな努力を重ねることで少しずつ前に進んでいくより他に方法は無いと私は考えますし、その努力を続けようと思います」と続けた。
そして「最後に…あらためまして今回完成した映画『時には懺悔を』に参加していただいた全スタッフ、キャスト、さらに今まで我々の映画を応援して下さった全ての方々に多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを深く深くお詫び申し上げます」と新作「時には懺悔を」の関係者に謝罪した。
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