新型肺炎~政府の「ダイヤモンド・プリンセス号」への対応と今後するべきこと
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年2月19日 17時40分
大黒ふ頭に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」と出入りする救急車両=16日午後、横浜市中区
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客に対する政府のこれまでの対応について解説した。
新型肺炎陰性が確認された乗客が順次クルーズ船から帰宅
新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」について厚生労働省は18日、ウイルス検査で陰性が確認された乗客を19日から順次下船、帰宅してもらうと発表した。
飯田)感染拡大が止まらない新型コロナウイルスですが。
錯綜する情報
佐々木)情報が錯綜していて、マスコミの情報が信用できるかというとそうでもなく、ネットを見るとますます混乱しています。そのなかでわかって来たことは致死率が2%ぐらいで、10%くらいあったSARSに比べたら低く、インフルエンザよりは高い。インフルエンザは0.1%ほどなので20倍です。もう1つは軽症ですが、1週間ぐらい経つと重症化するケースが多く、軽症のうちに外を出歩いたら感染が拡がりやすいということ。この2点だと思います。もう1つ、ファクトチェックの楊井さんがブログで指摘していました。いま日本で感染がわかっている人たちは、2週間くらい潜伏期間があると言われているので、逆算するとみんな1月中には感染していたと。騒ぎになる以前に感染しているため、日本の水際作戦など成り立っていなくて、市中感染というどこから感染しているかわからない状態が、既に1月中に起きていたのではないかということです。
飯田)いわゆる武漢しばり、湖北省しばりと言われた、行ったことがある人、あるいは行った人に濃厚接触した人以外は、そもそも検査しないという状態が長く続いていました。潜在的にはいたかもしれませんが、表に出ていない人がいた。
後手に回ってしまったのは、日本に感染症の専門家が集まった組織が存在しないから
佐々木)実際にツイッターを見ていると、武漢にも中国にも行ったことがないけれども、コロナウイルスかと思って病院に行ったら「検査しません」と言われて、しつこく求めた結果、コロナウイルスだったというケースがいくつか報告されています。そこは後手に回った感が否めませんが、過剰に騒ぐのもどうなのかなと。今回のダイヤモンド・プリンセス号に関して言うと、神戸大学の岩田健太郎さんという感染症の専門家が、ユーチューブでダイヤモンド・プリンセス号に行ってみたという動画を上げています。これはショッキングです。通常、船内での感染症の対策というと、危険なエリアと安全なエリアはきちんと分ける。原発などもそうですよね。放射能対策でも、防護服を着ないと入れない場所を分けます。それが全然できていなかった。
飯田)ランダムに客室にいたと。
佐々木)通路に感染症の人が歩いていて、そこを厚労省の係官も歩いている。これは非常に危険な状態で、感染させるための装置となってしまっています。岩田さんは「日本に感染症の専門家が集まった組織が存在しないからではないか?」と言っています。
飯田)こういうときに、どう仕切ったらいいかというノウハウがないのですね。
専門家の知見を結集する仕組みをつくるべき
佐々木)アメリカにはCDCという疾病予防管理センターがあり、そこに感染症専門家のお医者さんが集まって、新型のウイルスなどが流行したときには対応します。日本はそれがないので、厚労省がやっています。厚労省の官僚は優秀な人ですが、お医者さん、専門家ではありません。見よう見まねでダイヤモンド・プリンセス号の船内対策をやってしまっているから、こういう体たらくになっているのです。日本でも、専門家の知見を結集する仕組みをつくらなければいけません。安倍首相も日本版のCDCをつくるという意向を答弁で言っていましたけれども、まさしく求められているのではないかなと思います。
飯田)19日の産経新聞の東京版に、「船内感染国際ルールなし」と出ています。たしかに公海上では旗国(船籍国)と言って、今回の場合はイギリス船籍ですが、そこの責任で行うべきとする考え方があるようです。しかし港に入って来たら、その国が仕切ってもおかしくはないですよね。
佐々木)そうですね。港にいるのに、それは「イギリスの問題だから日本は関係ない」というのも言いすぎでしょう。かといって日本国内とは別のエリアですから、「日本国内の問題であって他の国は関係ない」というのも言い過ぎだと思います。そこが日本かどうかという、つまらない議論をしている場合ではない。感染者数の統計データに、ダイヤモンド・プリンセス号での感染者数を入れるかどうかで揉めていましたが、そういう話ではなく、国際協調で対策を取るということが求められているのではないかと思います。
間違っていることがたくさんあった「ダイヤモンド・プリンセス号」での対処
飯田)みなさんが船室にいると、ダクトをつないでの感染はないのかということでしたが、CDCもそれはないと言っています。
佐々木)空気感染はしませんからね。
飯田)そう考えると、外に出たいという人をいたずらに外に出してしまい、そこで手すりを触って感染するような環境をつくってしまった。
佐々木)なかにはテント村などをつくって住ませればいいと言った人もいましたが、高齢者が多いので、その人たちが隔離期間の2週間をテント村で過ごすことになると、原発事故の関連死の話につながります。船内にとどまってもらい、そのなかで「接触する・しない」ということを分ける。少なくとも飛沫感染しかしませんので、分けることは可能だったはずです。方向としては悪くなかったのですが、間違っていることもたくさんありました。
飯田)現場のハンドリングのところで間違えてしまった。
今回の結果を教訓に生かし、対策を取り直すことが必要
佐々木)そうです。「だから政府はダメなのだ」という話ではなくて、今回の経験を機に「客船内の隔離はどうするのか」ということの対策をもう1度取り直し、教訓にして生かすことが大切です。悪人を見つけて叩けば解決する問題ではありません。
飯田)それでコロナウイルスがなくなればいいのですが、これから先もなくならずに、日本にとどまることがおそらく確実だろうと。
佐々木)新型インフルエンザと同じです。新型インフルエンザでも大騒ぎしました。それが消えたのではなく、危険性はあるものの社会に受け入れられて終わっているということです。今回の新型コロナウイルスもなくなることはなくて、長い期間感染して亡くなる人も居続けるわけで、これをどうやって社会で受け入れるのかという話になります。
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