タリバンが和平合意に賛同~それでもアフガニスタン情勢が変わらない理由
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年2月24日 6時35分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月21日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。タリバンの強硬派の幹部が和平合意に賛同姿勢を示したニュースについて解説した。
タリバンのシラジュディン・ハッカニ師がアメリカに対して賛同発言
シラジュディン・ハッカニ師は、アフガニスタンの反政府勢力タリバンのなかで最も危険な武装勢力と言われる「ハッカニ・ネットワーク」の指導者だ。ハッカニ師は20日のアメリカの新聞ニューヨーク・タイムズ電子版への寄稿で、アメリカと和平合意に調印すれば「全条項を完全に履行すると約束する」と明言し、賛同の姿勢を見せた。タリバンとアメリカは7日間の暴力削減が実行された場合、2月末にも和平案に調印するということである。
飯田)これがうまく運べば、アフガニスタン情勢が変わるのかというところですね。
これでアフガニスタン情勢はよくなることはない
宮家)むしろ悪くなるでしょうね。
飯田)悪くなるのですか?
宮家)もちろんです。考えてみてください、ハッカニ勢力などと言っていますが、彼らは最も悪い奴らなのです。あえて誤解を恐れずに言いますが、あるシマがあって、そこに反社会勢力があるとするではないですか。そこにはびこっている連中は暴力団ですよ。そのなかで最も武闘派の男がいる。、警察官がやって来たけれど、どうしても鎮圧できない。そこで警察官は暴力団に手打ちをしようと持ちかける。しかも最も危ない男と手打ちをして、つまり和平交渉をして、協定に調印する。調印したら、警察官はそのシマから出て行く。そうしたらどうなるかと言うと、最も悪い奴なのだから、そんな協定を守るわけがない。もちろん再び武装闘争をやりますよ。そもそも外国でアフガニスタンをまともにコントロールできた国はないのですから。
外から入ってアフガニスタンをコントロールすることはできない
飯田)外国が外から介入して来て。
宮家)そもそもパキスタンからアフガニスタンに入るところの山脈は、ヒンドゥークシュ山脈と言います。ヒンドゥークシュとはパシュトー語で、インド人殺しということなのです。あの場所には、インドもなかなか入って行けなかったのです。
飯田)インドは大きな帝国でしたよね。
宮家)歴史上いわゆる帝国でアフガニスタンに入って行って、まともに出て来れた人たちはいないのです。近代以降はイギリスがやって大失敗し、ソ連がやって大失敗している。だから、アメリカが成功するわけがないのですよ。結局は消耗戦になり、向こうは戦いをやめない。これはアメリカの敗北です。要するに、ベトナムと同じなのです。
飯田)泥沼化して。
宮家)大変な場所ですからね。アフガニスタンはいろいろな部族がいて、いろいろな宗教がある。そのなかで、あの狭い山岳地帯にみんなで肩を寄せ合い、けんかしながら生きているところに、突然部外者が入っていって引っ掻き回そうとしても、それは絶対に無理です。
飯田)ただバランスが崩れるだけ。
アメリカは終わりのない戦争をやめられるがアフガニスタンは変わらない
宮家)結局、外から来た人たちは追い出される。今回もその典型です。そういうことを、なぜアメリカがやったのか。あそこにアルカイダがいたからです。9.11でニューヨークを攻撃した連中が、実はここにいたわけです。だからアメリカが攻撃するのは当たり前なのでしょうが、その後に民主主義を導入して、大統領を選んで、などといろいろとやったではないですか。でもこれが難しいのです。そんなことを今までやったことがない人たちなのだから。
飯田)民主的な選挙であるとか、そういうことを。
宮家)民主的な選挙と言ったって、みんな部族で、地域で別れているから、一緒になるのは非常に難しいわけです。それを善意か悪意か知らないけれど、アメリカは一生懸命やったのですが、やはり案の定、失敗したというのが今回の悲劇です。アメリカとしては、終わりのない戦争はやめるのでしょう。しかし、これでアフガニスタンがよくなるのかと言うと、とんでもない、まだまだ昔のままだということです。
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