東日本大震災から9年~今後の復興で目指すべきは“小さな町づくり”
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年3月12日 11時30分
東日本大震災・首相官邸献花式で標柱へ一礼する安倍晋三首相=11日午後、首相官邸
ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月11日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。東日本大震災からの復興の課題について解説した。
東日本大震災から9年
東日本大震災の発生から、11日で9年を迎えた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府主催の追悼式は中止され、代わりに安倍総理大臣らが出席する献花式を総理官邸で行った。献花式では地震発生の午後2時46分に黙祷を捧げ、安倍総理が追悼の言葉を述べた。
安倍総理大臣)かけがえのない多くの命が失われ、東北地方を中心に未曽有の被害をもたらした東日本大震災の発生から、9年の歳月が流れました。最愛のご家族やご親族、ご友人を失われた方々のお気持ちを思うと、いまなお哀惜の念に堪えません。ここに改めて、衷心より哀悼の意を捧げます。また、被災されたすべての方々に、心からお見舞いを申し上げます。
森田耕次解説委員)安倍総理大臣は総理大臣官邸で献花式に出席し、哀悼の言葉を述べました。発生から9年を迎えた東日本大震災ですが、住宅や道路などのインフラの復興事業は最終盤になって来ているようです。一方で、依然として4万7737人の方が避難しており、生活再建は道半ばというところです。政府は2020度末(2021年3月)で設置期限が切れる復興庁については、2030年度末まで延長するとしています。津波の被災地では、2021年度からの5年間で復興事業の完了を目指すということです。被災者向けの災害公営住宅3万戸は、9割以上が整備された状態になっています。一方で、被災した自治体は人口がどんどん減少している状態にあります。
河合)もともと、日本全体でも人口が減る局面に入って来ているところに、拍車をかけた形になってしまっていますね。
森田)特に減少率が高いところで、宮城県女川町は震災前に比べると41.4%になっていたり、南三陸町も35.7%と、岩手県は被災したすべての12市町村で人口が減少しているという状況です。
今後の復興の進め方~9年間の復興の問題点
河合)一方で、仙台市やその近郊はむしろ人口が集中していて、同じ被災地でも9年間でずいぶん変化がありました。9年前の状況とはまた違った、それぞれの被災地のあり方を考えて行く段階に入っているのだと思います。
森田)見た目は綺麗になっているでしょうが、コミュニティづくりで苦労しているところもあるでしょう。
河合)この9年間を振り返ってみると、戦後復興と同じようなことをしてしまったイメージがあります。つまり、人口が増えて行く時代の復興のやり方だったのです。いろいろな意見があるので、取りまとめは難しかったのだろうと思いますが、元の生活や街並みをそのまま再建するのだという計画を立てました。しかし、日本全体で人口が減って行く局面だったことを考えると、被災地では震災がなくてもある程度人口が減っていたはずだと思います。本当はこれを機に先例的な、人口減少社会にあったまちづくりを考えた方が、結果として持続可能性が高まって行ったのではないかと思うのです。
森田)元に戻すのではなく。
河合)元々あったものをそのまま復興というよりも、人口が減って高齢化して行くという日本全体の問題を睨んで、小さくてもきちんと機能するようなまちづくりをしたら、日本全体のモデルケースが東北地区にいくつもできたと思うのです。残念ながら、この9年間を見ていると、そういったまちづくりに取り組んだところは見えて来ませんでした。やっているところはあるのかもしれませんが、人口が増えていたときの発想で復興に取り組んで来たのは残念だったと思います。
拡大発展型より、小人口でも快適なまちづくりを目指すべき
河合)いまからでも遅くないので、ある程度の拠点のようなものをつくって行く。高齢者同士が助け合って暮らせるような、コンパクトなまちづくりに取り組んだ方がいいと思うのですよね。地元の企業が頑張っているところもありますので、そういう企業を中心として雇用も考えながら、500人~1000人規模の拠点をいっぱいつくって行くことだと思うのです。高台や沿岸地であっても場所は選ばないわけですが、これまでのような拡大発展型の開発は、被災地だけでなく日本中でできなくなって来ます。1000人なら1000人がきちんと暮らせるコミュニティを考えて、施設をつくって行くやり方の方がいいと思うのです。
森田)東北地方が先進的なまちづくりをするケースになれば、全国に広がって行くということですよね。
河合)東北地方の自治体の首長さんに提言したことがあるのですが、震災のときに電気などのエネルギーが途絶えたではないですか。一方で、北欧などには高気密住宅のような、1回室内を温めたらずっと暖かさが続く住宅をつくっている企業があるのですよ。東北地方には林業が盛んな場所も多いので、電気を多く使わなくても暖かくいられるような、林業と合わせた家づくりをしたらどうかと。そんな住宅を世界に売って、その地区を維持して行く。そうすると1000人くらいの規模でも、十分に経済的にも潤う場所ができるのです。
森田)仮設住宅もプレハブだと寒くて仕方ないのですが、北海道の企業が木材でつくった、トレーラーで運べるようなプレハブではない仮設住宅があるのですよ。あれは気密性がよくて、海外に売り出そうという企業もあるようです。
河合)日本の林業が復活しますね。
森田)いい木材を使ってコンパクトな家をつくり、小さな町をつくって行くというのはあるかもしれませんね。
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