OPECプラス1000万バレル減産で合意~心配されるその影響
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年4月11日 17時45分
![OPECプラス1000万バレル減産で合意~心配されるその影響](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_218592_0-small.jpg)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月10日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。OPECプラスの会合で合意された日量1000万バレルの減産について解説した。
OPECプラスが緊急会合を開催
石油輸出国機構(OPEC)の加盟国と、ロシアなどの非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は9日、テレビ会議で緊急会合を開き、史上最大となる日量1000万バレルの減産で合意した。なお、アメリカなどにも生産の抑制を求める。
飯田)これを受けて、原油の価格にさほど変わりはないという感じでしょうか。いまのところシカゴの先物、23ドル21セント辺りで取引されているようです。
減産する1000万バレルをどこの国がどのくらい減らすのか~悪魔は詳細に宿る
宮家)サウジアラビアの最大生産量が日量1200万バレル、普通で1000万バレル程度ですから、サウジアラビア1国ぶんの量の石油を減らそうと言っているわけです。すごい話です。ただ、現時点で値段が上がっていない理由はいろいろあると思うのですが、私は当然だと思っています。なぜかというと、このような減産の話はときどきあるわけですが、いつも問題になるのはその日量1000万バレルもの減産を、誰がどのくらい減らすのかということです。
飯田)割り当てみたいなものでしょうか。
宮家)悪魔は、詳細に宿るわけです。そもそもここに至るまでに、私の知る限りでは紆余曲折がありました。OPECプラスのなかで発言力、影響力があるのはロシアとサウジです。実はロシアとサウジがつい最近まで喧嘩をしていて、ロシアが言うことを聞かないので、サウジが大増産をした。その結果、油価はさらに下がったのです。おそらくそのショック療法のおかげで、ここにまで来たのでしょう。その意味では、減産に合意した産油国はいい方向に向かっている。だけど本音では、「そんなに言うならサウジがまず減産すればいいではないか」と、他の国は思っているでしょう。小さな産油国にとっては死活問題ですから。値段を上げて、生産量は下げないというのが普通の産油国の考え方です。みんながそれをやってしまえば、どこも減産しないわけだから、値段がまた下がる。この繰り返しです。OPECやOPECプラス、みんなで議論するのは簡単だし、合意するのも簡単だけれど、実際にそれを実行するのは各国の思惑があってなかなかできない、というのが実情です。だからこそ、先ほど言ったように悪魔は詳細に宿り、まだマーケットは反応していないのです。実際にサウジが生産量を減らし、ロシアが減らして、それに小さな国も従うということになるとしても、それまでにはまだまだ紆余曲折があるのだと思います。
飯田)全体より、個別の数字が出て来ない限りは。
宮家)そうです。それから、アメリカにも生産抑制を求める。アメリカの関係者から見れば、「呼ばれてもいないのに何で」という人もいるでしょう。シェールオイルのおかげで、いまアメリカは確かに世界最大の産油国の1つです。しかし23ドルでペイするシェールオイルは、必ずしもすべてではないですから、当然すでに減産が起きているはずなのです。その上でさらに減産しろと言われるのですから。儲かっている会社にとって、また減らせとはどういうことだ、それならちゃんと俺たちも入れて議論に参加させろ、ということになります。
飯田)これだけ価格が下がると、日本ではガソリンの価格が下がっているからいいのでしょうけれど。
![](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2020/04/jpp032551451-2-1.jpg)
無人機の攻撃を受けたサウジアラビア東部アブカイクの国営石油会社サウジアラムコの施設から上がる黒煙(ビデオ映像より)(サウジアラビア・アブカイク)=2019年9月14日 写真提供:時事通信
低価格で中東・湾岸地域の政治的安定に問題が起きないか
宮家)これには2つ問題があります。1つは、経済がこのような状況で、産油国の石油の値段が乱高下するようになれば、世界経済によくないのはもちろんだけれども、もう1つはこんなに低価格で産油国が持つかどうかです。中東のイランはいま厳しい制裁がかかっているから輸出できないかも知れないけれども、それ以外の国の収入が減るということは当然、その国の人々が不満を持つわけで、中東地域や湾岸地域の政治的安定にもいろいろな問題が生じかねないと心配しています。
飯田)国家財政を産油に頼っている国は多いですし、ロシアも1バレル当たり60~70ドルくらいでないと安定しないと言われています。
宮家)そのレベルで国家予算を組んでいますから、いまのままでは大幅な赤字になるのです。ロシアもそういうことを考えて、準備金を積み立ててはいるだろうけれど、果たしてうまく行くでしょうかね。各国とも大変だと思います。
飯田)社会不安ということになると、それこそアラブの春のようなことが起こるのかどうかと考えてしまいます。
宮家)でも、産油国はまだお金持ちですからね。苦しくて騒ぐ人たちは出稼ぎ労働者で、数年おきに交代しているから、そこは人口が少ないので大丈夫だとは思います。大丈夫であって欲しいです。湾岸地域は長期安定してもらわないと困りますから。
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