中国空母が南シナ海で訓練~一方で米が抱く日本への不信感
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年4月14日 17時35分
中国・北京駅で、新型コロナウイルスによる犠牲者に3分間の黙祷をささげる駅関係者や旅客ら。中国政府の指示によるもので、犠牲者への追悼が全国規模で行われた =4月4日午前10時
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月14日放送)にジャーナリストの有本香が出演。中国の南シナ海での動きと、中国へ向けた今後の日米関係について解説した。
中国空母「遼寧」が南シナ海で軍事演習
台湾国防部の発表によると、中国が完成させた初の空母「遼寧」が12日、随伴艦艇と共に台湾の東部および南部沿岸を航行し、軍事演習を行った。
今回は空母打撃群を編成しての活動
飯田)この遼寧ですが、そもそも東シナ海の長崎県五島列島の辺りからずっと南下して、宮古海峡を通る動きをしていますので、日本もまったく他人事ではないですね。
有本)そうですね。遼寧がいかなるものかというのは、日本が考える空母よりは型が古いなどと言われています。しかし、空母を海に浮かべておくことそのものが、恣意行為になるわけです。遼寧が日本の沖縄本島と宮古島との間を通るのは、確か4回目くらいでしたか。
飯田)そのようですね。
有本)過去にもこの番組で飯田さんと、その話題を取り上げた記憶がありますが、だんだんと通り方が違って来ていますよね。普通に通過しただけでなく、今回はミサイル艦、フリゲート艦、高速戦闘支援艦などを従えて空母が通って行き、その後に南シナ海で訓練をやるということですから、だいたい何を意図しているのかということは見えます。
飯田)空母そのものだけでなく、空母は守りが弱いから周りに艦を従えて。これは空母打撃群なのですよね。
焦りもある中国~南シナ海の情勢は危険度を増す
有本)打撃群ですよね。そういう構えになっています。コロナウイルスが蔓延し始めたときに、かえって台湾海峡の危険度が増すのではないかと言われていました。これは本当にそういうことだと思います。北朝鮮の権力委譲があって、ひょっとすると半島情勢も厳しくなるかも知れない。台湾海峡から南シナ海にかけても、緊迫の度合いを増して来るのではないか。中国自身も経済的には相当に打撃を受けています。一部の日本の通信社やメディアは、日本が陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊を宮古島へ配備したことに対する、対抗的恣意行為ではないかということを言っていますが、4回目だと考えるとそういう問題ではありません。向こうは着々と、サラミスライス的に自分たちの力を周りへ見せつけて、台湾海峡から南シナ海にかけては自分たちの海だということを主張しているわけです。更に言うと、いまは経済でも打撃を受け、日米が中国に進出している企業へ「帰って来い」と言っているではないですか。日本は、拠点を日本に戻せば3分の2を補助するという、思い切った策を出しました。こういうことに対する焦りの表れかも知れません。
飯田)今回の行動が中国の国内向けであり、対外向けでもあるということですね。
有本)しかし、それが単なるポーズに終わらなくて、下手をすると本当に危険な状況をつくり出しかねないということを、覚悟した方がいいと思います。
飯田)それに先立って、週末に産経新聞が独自で報じていましたが、アメリカ海軍の駆逐艦が台湾海峡を通過した際、大陸と本島の間の中間線を中国側に越えた海域で航行していたと。これに中国側は敏感に反応したようです。国際法上は、もちろん公の海ですから。
世論も含めて「中国を許さない」方向へ行くアメリカ
有本)通行するには問題ないと思います。ただ、これからいろいろな闘いが錯綜して行くと思います。新型コロナウイルスによって日本でも報道されたように、アメリカ空母の乗組員が1人亡くなりましたよね。
飯田)「セオドア・ルーズベルト」の。
有本)空母に乗っていた働き盛りの屈強だろうと思われる人が、こんな簡単に亡くなってしまうということについて、アメリカの世論も含めて「中国を許さない」という方向へ行きますよね。いきなりアメリカから仕掛けるということはないにしても、これから情報戦もますます激しくなります。中国は新型コロナウイルスに関して、自国の責任を回避し、他に責任を持って行こうというプロパガンダをますます強めて行きますよね。
飯田)このウイルスの呼び方1つとってもそうですよね。
有本)そういった宣伝戦や、日米に関して言うと中国へ行っていた企業を、自国へ呼び戻す動きが出て来ます。そうなると中国経済は厳しい局面になります。アメリカは関税の問題でも、厳しい措置を取るということになるでしょう。
日本が犯した過ち~中国に配慮し過ぎてアメリカから疑いの目で見られている
飯田)14日の産経新聞で古森義久さんがコラムに書いていますが、アメリカ議会で中国に対して。
有本)責任を追及し、賠償請求しようという動きですね。
飯田)そこで関税もうまく使って、関税の上乗せ分を補償の基金として積むという案まで出ています。この辺はトランプさんの動きに響いているところがあるのでしょうか?
有本)連動していますよね。2019年くらいにアメリカ議会は、中国に対して相当攻勢を強めました。トランプ政権だけでなく議会も一緒になって、台湾や香港、新疆ウイグルについての法案を次々に通して行きました。この圧力は、いまになって効いています。台湾との関係も今後ますます深まって行くでしょうし、年明けには頼清徳さんがアメリカへ行ったり、台湾側もアメリカとの関係を深めています。ここで日本は、このサークルへきっちりと入って行かなければいけないと思います。
飯田)頼清徳さんは前の首相などもやっていて、次のリーダーだと言われています。そういう人を送り込んで、存在感もアピールして。
有本)もちろん、私的な訪問だと断ってはいましたけれども。
飯田)その辺りに対しての日本のスタンスですね。中国に対して非常に暖かく迎えるという人も、国会議員や霞が関を含めてかなりいます。そういう部分を、アメリカが疑いの目で見るところもあるのでしょうか?
有本)それはそうですね。今回の一連のことで、日本側に対してアメリカが全幅の信頼を置けなくなったと言う人もいます。日本はあまりにも中国に配慮し過ぎました。もちろん安倍総理とトランプ大統領の個人的な信頼関係は厚いのですが、日本の外交当局は今回のことで、完全に北京を向いていましたからね。アメリカにとってみればショックだというところはあるでしょう。
飯田)その辺の立て直しを、もう1回できるのかどうか。
有本)今回のウイルスの蔓延を、日本が一種の国防的な事柄として、最優先に物事を考えるところに行かなかった辺りも、アメリカからは「やっぱりな」と思われてしまっていると言う関係者もいます。
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