アメリカがオープンスカイズ条約から脱退する理由
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年5月22日 21時40分
米疾病対策センター(CDC)を視察するトランプ大統領=6日、米ジョージア州アトランタ(ロイター=共同)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月22日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。オープンスカイズ条約について解説した。
オープンスカイズ条約(領空開放条約)
オープンスカイズ条約(領空開放条約)は2002年に発効したもので、アメリカとロシアを含む批准34ヵ国が互いに非武装の偵察機を領域内に派遣することを認め、軍事活動や施設の状況を相互監視することを目的としている。アメリカのトランプ政権は、この領空開放条約から脱退を通告する方針を表明した。これはポンペオ国務長官が声明で発表したもので、ロシアによる条約違反が理由だとしている。
飯田)22日にすべての加盟国に通知する方針ということですが、それこそコロナで大変な国々です。
オープンスカイズ条約ができた目的
宮家)例えば町内会に仲の悪い2つのグループがあるとします。しかし、お互いに相互乗り入れで、「靴を脱いでくれるなら、私の家にいらっしゃい」と言い合うようなものです。「仲よくはできないけれど、お互いに悪いことをするのだけはやめましょう」というためにつくられたルールです。実際には衛星で見ているから、偵察機が飛ぼうが飛ぶまいがあまり関係ないと言う人もいるかも知れません。でもやはり、領空に非武装の偵察機が入ってもいいということになると、信頼醸成措置という点では大きな意味を持っていたと思います。
アメリカが一方的に破る理由~ロシアによる旧東ヨーロッパへの近年の働きかけ
宮家)その信頼醸成措置をアメリカが一方的に破るのは、近年のロシアによる旧東ヨーロッパへの働きかけへの懸念だと思います。プーチンさんからすると、ソ連が崩壊してロシアの影響力が小さくなってしまった旧ワルシャワ条約機構、東欧諸国への影響力をもう一度高めたい、それによってロシアの安全保障を確保したい。そういうことを考えると、ロシアはいまも欧州において相当えげつないことをやっているはずです。実際にサイバー攻撃など、いろいろなことをやっています。カリーニングラードという、バルト三国とポーランドの間に小さな飛び地があります。昔はポーランド領でしたが、ドイツ領になったときもありました。ドイツが持っていたときに、ソ連がドイツに勝ったから占領し、それをロシアが引き継いだのです。この地域でロシアはいろいろな世論分断工作をやっていると思います。しかも、もしそのカリーニングラードにロシアが新型ミサイルを配備するようなことになれば、軍事戦略バランスが相当変わることになる。当然、ロシアとしては何をやっているか見て欲しくはない。だからいろいろ妨害をしているのかも知れません。
いずれにせよ、東西冷戦時代に戻ろうとしているとは思わないけれど、ロシアからすれば、NATO側の旧東欧諸国に対する攻勢があまりにも厳しいから、対抗措置を取ろうとする。そうすると、いままでの信頼醸成措置とはまるで違うことをロシアはやっているではないかということで、今度はアメリカが怒っているのだと思います。ついでに言うと、この地域では、いわゆる中距離核戦力(INF)全廃条約というものもありましたよね。これをアメリカが破棄してしまったわけですが、このときには、中国の中距離弾道ミサイルの脅威を考えてのことだったと思いますけれど、今回は中国というよりは、ロシアそのものに対するアメリカの不信感が高まったからだと見るべきでしょう。
NATOに危機感を持つロシア
飯田)プーチンさんからすると、冷戦が終わった後で、自分たちの領域だったところがどんどんNATOやEUに加盟して崩され、いよいよ喉元まで来たという危機感があるのですね。
宮家)そうだと思います。いまアメリカがこういう状況ですから、ロシアにとってはいろいろなチャンスがあると思っているでしょう。ウクライナでもちょっかいを出しているし、アメリカの大統領選挙にも事実上介入しているわけです。プーチンさんにしてみれば当然のことをしていると思っているでしょうが、西側から見ればとんでもないことなので、全体としてはあまりいい状況ではありませんね。
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