撤回の背景に何があったのか~イージス・アショア配備計画
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年6月26日 17時45分
衆院安全保障委員会でイージス・アショア配備計画停止について答弁に臨む河野太郎防衛相=16日午前、衆院第17委員室
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月26日放送)に慶應義塾大学教授・創発プラットフォーム理事の松井孝治が出演。河野防衛大臣がイージス・アショアの配備計画の撤回を表明したニュースについて解説した。
イージス・アショアの配備計画~河野防衛大臣が撤回を表明
新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画をめぐり、河野防衛大臣は政府が24日に開いた国家安全保障会議(NSC)で、山口県と秋田県への配備を断念する決定を行ったことを明らかにした上で、代わりの場所への配備も困難だという認識を示した。
飯田)25日、自民党の部会に出席して、その旨を明らかにしたということです。突然の撤回でとても驚きましたが、どうご覧になりますか?
松井)私も驚きました。
飯田)いままでは日本を守る根幹の1つだったはずなのですが。
松井)日本は盾の部分、防御を徹底し、矛、敵への攻撃の部分は米軍を信頼して、役割分担をするという従来の考え方は、基本的には変わらないと言っているのですが、盾の部分の性質をこれからどうやって維持して行くのか。北朝鮮の状況も変わらないですし、近隣の東アジアの環境は厳しいです。そのなかで物事を捉え直して行かなければいけないという時期だと思います。
どのような背景でイージス・アショアの配備計画撤回に至ったのか
松井)まさにいま問題になっている、敵基地攻撃能力をどれだけ保持して行くのか。全体として、盾の部分をより強化して行かなければいけないのだけれども、そのテクノロジーの問題。そして日本という狭い国土のなかで、イージス・アショアのシステムではうまく機能しないということが、ある程度明らかになったわけですから、いまは日本の安全保障の転換点だと思います。とても大切な議論で、それをいま河野太郎さんに口火を切らせたという政権の判断が、どういう背景でそこに至ったかということにものすごく関心があります。ここしばらく、自民党内、与党内でどのような議論をするのかを見ると、いろいろなことがわかって来るのではないでしょうか。いまの段階では何とも言えません。
飯田)確かに、河野さんが批判の矢面になり、25日の部会でも相当やられたという話も報道されていますけれど、そういうところも含めて「仕事しろよ」ということを預けられた部分もあるのですか?
変化する安保環境のなかで日本はどのように国民を守って行くのか
松井)そうですね。いまの安倍政権だけでは終わらない話です。これから日米関係をどうして行くのか、ということにも関わって来ます。アメリカもトランプさんであれ、どなたであれ、従来的な戦後の日米関係、安全保障を支えて来た荷物を徐々に下ろしたいと思っている状況のなかで、我が国がどれだけ防衛能力を持って行くのか。もちろん日米基軸は変わらないにしても、重心を少しずつ移して行かなければいけない時期に来ていると思います。しかもここ10年~20年で、安保環境はだいぶ変わって来ています。テクノロジーも発達している。昔、日露戦争の時代は大艦巨砲主義でバルチック艦隊を倒したように、海軍の時代でした。それが、第二次世界大戦では空を制するものが戦争を制するようになり、最近はさらにテクノロジーが発達して、宇宙を誰が制するかという状況になっていますし、サイバー的なところでの攻撃や防御も大事になっています。いろいろな意味でテクノロジーの転換、進歩のなかで、我が国はどのように国民の生命や安全を守って行くのか。どの国も自国だけでは防衛できない状態のなかで、役割分担や、新しいテクノロジーへの対応を、限られた日本の国防予算のなかで、何に重点を置くのかということを考えて行かなければいけないし、それは日本だけでできることではありません。安倍政権だけではなく、その次の政権、あるいは議論に対して野党がどう対応して行くのかということも含めて、これからが政治のホット・イシューだと思います。
飯田)いままでであれば、アメリカをどう見るか、批判するのか同調するのかも含めて、1つの軸がありました。ところが、そのアメリカがオバマ政権以降、世界の警察という立場からどんどん引いて行っているなかで、ある意味、1から議論を構築して行かなければならない。いまもイージス・アショアと敵基地攻撃能力の議論のなかで、アメリカの戦争に巻き込まれるという論が依然として出て来る。しかし、アメリカは引こうとしているから、そんなことはやらないのではないかと素朴に思うのですが、どこを軸に議論して行けばいいと思いますか?
世界の軍事バランスが変わるなかでどう対応するか
松井)日米を基軸にするということは、安易に捨てない方がいいと思います。かつて、日英同盟というものがあって、基軸を捨ててしまうと漂流するわけです。日米基軸は捨てずに、そのなかでアメリカの状況もあるし、中国の圧倒的な台頭もあります。軍事バランスが世界のなかで変わろうとしているということと、北朝鮮という暴発要因があるなかで、どう対応するかだと思います。
飯田)尖閣における中国の行動やイージス・アショアの話が出ると、どうしても防衛という面ばかりがクローズアップされますが、外交の部分や法律戦も併せて行かなければいけない。
松井)そうです。そこは大切なところで、敵という言い方はよくないかも知れませんが、外交上はそれぞれが、特に中国は、自国の利益の最大化ということで戦略的に取り組んでいます。我が国も、外務省、防衛省が連携し、官邸機能を強化して、経済的な外交も含め、さらに企業の国際的な展開や、新たな技術を取り入れて総合的な戦略機能を高めて行かないと、これからの時代は厳しいと思います。
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