マイナンバーに国民のデータを集約するべき理由
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年7月15日 17時35分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月15日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。14日に政府が閣議決定した「特定非常災害」について解説した。
特定非常災害
政府は14日、九州を中心に甚大な被害が出ている7月の豪雨災害について、「特定非常災害」に指定することを閣議決定した。これにより運転免許証の有効期限延長など、被災者は行政上の特例措置を受けることができる。
飯田)14日の閣議で指定を決定し、具体的な内容に関しては、今後、各省庁が告示するということになりました。運転免許証もそうですし、お金を借りるということも含めて、手当てはいろいろ必要ですよね。
マイナンバーに国民のデータを統一すればいろいろなことが可能になる
佐々木)データを統一してしまえば、いろいろなことが1度にできます。将来的には、マイナンバーに保険証や運転免許証を入れるという話が出ています。そこに病院の電子カルテや処方箋のデータが入って、それがクラウド上に保存されていれば、どこからでも自分の必要なデータが取り出せます。3.11のときに津波で家が流されてしまって、家のなかに置いていたお薬手帳がなくなったり、病院自体もカルテを紙にしていたところは、処方箋も何もかもわからなくなってしまいました。あのころまでは総務省や経産省が「電子カルテに」と盛んに言っていましたが、厚生労働省と医師会各地が「そんなこと、病院が望んでいない」と反対していました。病院は面倒だから望んでいなかったかも知れません。しかし津波で流されてしまうと、クラウド上に電子カルテが残されていることが重要だということになり、以降、電子カルテ反対とは言わなくなりました。
マイナンバーが普及すれば災害や感染症にも迅速に対応できる
佐々木)マイナンバーのような話が出て来ると、必ず監視社会だと言って反対されて来て、70年代から国民番号制は出ては消えということを繰り返して来ました。そのなかで、ようやくマイナンバーが出て来たのですが、中途半端であまり紐づけされていないので、「何に使うのか」と言われていました。今回、特定給付金が早くもらえるということや、マイナポイントで5000円もらえるということで関心が集まっていますが、これを機に一気にマイナンバーを軸にして、いろいろな国民のデータを紐づけ、災害や感染症が起きても対応できるような姿勢をつくることが大事です。マイナンバーが全員に普及していれば、特定給付金の10万円だって配るのは容易でした。
飯田)しかも全員一律ではなく、本当に困窮しているところに出すことも可能でした。
佐々木)そこに金融資産、銀行口座にいくらお金があるか、毎月の給与はいくらかも紐づけすると、現預金が100万円未満で毎月の収入が20万円しかない人には優先的に給付金を送りましょうとか、毎月の給与が20万円以下で、あるいは年金生活をしていても、金融資産が1000万円ある人は後回しにしますというようなことが可能になるのです。いまの状態だと、収入が低い人に給付金を送るということはできますが、その人がいくら資産を持っているかはわからないので、何千万、何億円を持っていても、年金生活をしていると給付金をもらえてしまうということになります。そこを機能的に活用させようと思うと、ある程度はデータを把握する必要があります。しかし、これはなかなか難しい議論なのです。
日本はデータやAIをもっと活用して災害に対応できる社会に進むべき
佐々木)つい先日、『サピエンス全史』『ホモ・デウス』を書いたユヴァル・ノア・ハラリさんと、台湾のIT担当大臣であるオードリー・タンさんが対談している記事が日本語訳で出て話題になりました。ハラリさんはイスラエル人ですが、ユダヤの人で一神教的な価値観だから、「データやAIに支配されてしまうのは、人間の尊厳を揺るがす」という発想があります。『ホモ・デウス』も「データが神様になったら、我々はどうなるのか」と警鐘を鳴らす本でした。一方でオードリー・タンさんは台湾の人ですから、「AIやプログラムは物理法則みたいなものだから、それで社会がよくなるのなら活用すればいい」と。これは儒教的だと思いました。儒教は人間の尊厳や民主主義がなくても、誰もが認める優秀な人が出て来て政治をやってくれるのであれば、その人にお任せすればいいという発想です。
飯田)なるほど。
佐々木)日本は儒教国家ではありませんが、優秀な人がいるのであれば、その人にお任せすればいいという発想があるわけで、そのような形で今後、AIやデータを活用して行くと、東アジアの方が欧米よりも優位性があるのではないかと思うのです。欧米は、あまりにもAI的なものに反対するが故に、コロナ禍のような事態に対応できなくなって来るのではないかと思います。日本人はAIをもっと活用して、災害に対応できる社会に進めて行けばいいと思います。
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