最期は人のそばでゆったりして~保護犬の引取り介護&医療ボランティアにママ獣医師が奮闘~
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年7月25日 21時0分
【ペットと一緒に vol.206】by 臼井京音
獣医師の服部真澄さんは、動物病院の強みを活かした保護犬のボランティア活動に取り組んでいます。
今回は、譲渡先を見つけられない老犬を自ら引き取って介護と病気治療を行い、新たな家族として中型犬の子犬を迎え入れたという服部さんのストーリーを紹介します。
動物病院だからできる保護犬ボランティア
東京都文京区にあるなないろ動物病院院長の服部真澄さんは、2013年に開院してからこれまでに、約100匹の保護犬と保護猫を新しい家族のもとへと送り出して来ました。
関東圏内の多頭飼育崩壊の現場をはじめ、沖縄県宮古島の愛護団体経由など、全国からなないろ動物病院に保護犬がやって来るそうです。
「開業当時から、私にできる範囲で保護活動にも力を尽くそうと思っていました。なので、どんなコが来ても希望を捨てず向き合っています。
毛玉と呼べるレベルを通り越したひどい被毛状態で来る長毛犬種や、人に心を許すまでに数ヵ月かかる保護犬もめずらしくありません。保護犬の心身のケアや病気治療が終了して、譲渡が可能だと判断したら、いよいよ里親募集を始めます」と、服部さんは語ります。
咬みつき犬や攻撃的な猫でも「大丈夫」な場合も
服部さんがSNSに保護犬の募集情報を出すと、すぐに応募があることも少なくないと言います。「先日はインスタにアップしたその日のうちに、パピヨンと新しい家族とのご縁がつながりました」とのこと。
服部さんが保護活動に携わり始めた10年ほど前よりも、最近は保護犬そのものへの認知度が上がり、「保護犬以外は飼いたくないと思っていた」と語る方も増えているそうです。
「人に対して不信感を抱いているのか、咬んで来るので口輪をしていたトイ・プードルや、決して人が触れず猫パンチを繰り出して来るような猫でも、譲渡希望者が現れることもあります。『大丈夫です』と。
きっと新しい家庭でたくさんの愛情を注がれたからだと思いますが、そういったコたちの半数以上は、1~2年のうちに口輪も不要で攻撃性もなくなり、飼い主さんが触れるようになっています」
犬生最期だけでも穏やかに過ごして欲しい
服部さんの動物病院には、譲渡先を見つけられず、最後まで面倒をみるつもりで迎え入れた保護犬も暮らしています。
1頭は、悪徳ブリーダー崩壊の現場から引き取ったマルチーズの老犬。目も見えず、耳も聞こえず、腎臓の状態も悪いと言います。もう1頭は、大型犬に近いサイズの中型犬の雑種で、脚元もおぼつきません。
「一般家庭で世話するのが大変な犬たちこそ、動物病院でしてあげられることが多いと思うんです」
群馬県の雪降る山谷で保護された、中型犬の晴男くんを見つめながら、服部さんは次のようにも語ります。
「晴男たちがここでの毎日をどう感じているかはわからないけれど、最期の数年だけでも、人のぬくもりに包まれながらゆっくり過ごしてもらえたらいいなぁ、と思っています」
初めて服部家で保護犬の子犬を迎えて
元保護猫2匹と暮らす服部家では、10ヵ月前に子犬を迎えました。
「宇都宮市の多頭飼育崩壊の現場から、生後2ヵ月くらいで保護されたビーグルのミックス犬で、コールと名付けました。もともとは猫派だったのもあって、実は私、子犬から育てて飼うのは初めてなんです。子犬との生活って、こんなハチャメチャで大変なんだー! と、新鮮な数ヵ月を過ごしました。1歳になりましたが、いまだに、1匹の愛猫はコールがそばに来ると逃げて行きます」と、服部さんは笑います。
子犬は保護されてもすぐに譲渡先が見つかるのと、また、日本犬の血が入っている場合は“ワンオーナードッグ(ひとりの主人と関係を築く)”と呼ばれる日本犬気質により、成長すると他の保護犬となごやかに過ごせない可能性もあるため、服部さんはこれまで何年も子犬を迎えようと思いつつ縁がなかったそうです。
「コールは、ビーグルミックスとはいえ『ラブラドール・レトリーバーの子犬?』と散歩中によく聞かれるほど、ビッグサイズです。20kgを超えました。サイズが大きいと譲渡先も限られて来るので、さまざまな条件的に我が家で引き取るというご縁があったコだったのでしょう。今後は、当院での輸血に協力してもらう予定でもいます」
これからコールちゃんは、輸血が必要な犬たちの命を救う供血犬としての仕事を担うとともに、持ち前のフレンドリーさと明るさで、病院に到着した保護犬を安心させたり、譲渡前の子犬の社会性を養うための教育係になってもくれることでしょう。
よき学びとパートナーを得た服部さんが、今後も保護犬のハッピーな第2の犬生の橋渡し役となってさらに活躍するのは、間違いありません。
連載情報
ペットと一緒に
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。
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