62歳・原監督が継承した「日々新なり」を座右の銘とする名将は
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年7月22日 17時25分
![62歳・原監督が継承した「日々新なり」を座右の銘とする名将は](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_236019_0-small.jpg)
【プロ野球広島対巨人】 試合に勝ち、通算1035勝を達成した巨人・原辰徳監督 =マツダスタジアム
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、7月22日に誕生日を迎える、巨人・原辰徳監督の“座右の銘”にまつわるエピソードを取り上げる。
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【プロ野球広島対巨人】試合に勝ち、通算1035勝を達成した巨人・原辰徳監督=2020年7月14日 マツダスタジアム 写真提供:産経新聞社
「(7連勝で貯金「10」について)しかし、もう過去だから。また新たに。日々新(あらた)なり」
21日にナゴヤドームで行われた中日-巨人戦。首位を走る巨人は、エース・菅野が3安打完封で無キズの4連勝。打っては4番・岡本がセ・リーグいちばん乗りとなる10号2ランを放つなど、4-0で7連勝を飾りました。
開幕から25試合目にして早くも貯金を2ケタの「10」に乗せましたが、そのことについて聞かれた原監督の回答が、冒頭のコメントです。貯金2ケタといっても、まだ開幕から1ヵ月。21日現在、2位・ヤクルトも3ゲーム差で追走していますし、5連勝で最大借金「8」を一気に返済、貯金生活に入った3位・阪神も不気味な存在です。勝って兜の緒を締めよ……百戦錬磨の指揮官に抜かりはありません。
7連勝がスタートしたのは、14日の広島戦でした。その前まで巨人は雨天中止を2度挟み4連敗中で、長らく白星から遠ざかっていましたが、7-2と快勝。この勝利で原監督は、長嶋茂雄・終身名誉監督を抜く球団歴代2位の「通算1035勝」を達成。1位はV9の名将・川上哲治氏の1066勝ですが、21日の勝利で原監督は通算1041勝。歴代トップまで「あと25勝」に迫り、今年(2020年)中の更新はまず間違いないでしょう。
この節目の勝利でムードが一変し、巨人は広島・DeNAを連続3タテ。名古屋に乗り込んでも勢いは止まらず、この7連勝はすべて敵地での勝利です。手綱さばきが冴える原監督ですが、22日に遠征先で62歳の誕生日を迎えました。
前日21日の試合後、名古屋の宿舎で会見が行われ、報道陣が原監督にバースデーケーキと、高級ワインをプレゼント。このワインは、14年前・2006年産の「オーパス・ワン」。監督通算14年目にちなんでいるそうで、何とも粋な計らいです。このワインのように、指揮官として円熟期を迎えている原監督ですが、会見ではこんなコメントも。
「還暦を迎えてから、61歳も62歳も一緒。(還暦で干支が)1回転したところで、いわば“2歳”だよね。そういう点では、まだまだ積み重ねなければいけない」「これが10歳ぐらい、70歳になるとまた変わるかも知れない。“思春期”みたいなものが来るかも知れない(笑)」
独特の言い回しで、報道陣を笑わせた原監督。何歳になろうと、通算何勝しようと、指揮官が忘れていないのは、「常に新鮮な気持ちで野球に取り組むこと」です。
その姿勢を集約した言葉が、冒頭のコメント「日々新なり」。……これはかつて巨人を率い、西鉄・大洋・近鉄・ヤクルトでも指揮を執った“知将”三原脩氏の座右の銘です。選手の適性を見極めた巧みな起用法で、弱小チームだった西鉄・大洋を日本一に導いた三原監督。原監督は、三原氏が生前書き残したノートを見る機会があったそうで、野球哲学・人生訓などが記されているなかに、「日々新なり」という言葉がありました。
おおもとになっている言葉は、中国の古典・四書五経の『大学』にある「苟日新、日日新、又日新」(まことにひにあらたに、ひびあらたに、またひにあらたなり)と思われます。「昨日よりもきょう、きょうよりも明日と、日々よくなるよう行いを正すべし」という意味ですが、原監督も「日々新なり」を座右の銘として継承。事あるごとに口にし、実践しています。
とくに、新型コロナウイルスの影響で開幕が延期され、過密日程が組まれた今シーズンについては、開幕前から「2020年型の戦い」をすると宣言。通常の143試合制が、120試合に削減されたことで、他の監督たちが「開幕ダッシュが重要」と口にするなか、原監督は「選手に無理はさせない」と明言しました。
7連勝の起点になった14日の広島戦は、エース・菅野が登板しましたが、これは中10日での登板で、原監督はさらに大事を取って、5回無失点で降板させました。昨シーズン、終盤の無理がたたり、菅野はCSを欠場。強行登板した日本シリーズでも力を発揮できませんでした。原監督はその反省をふまえ、雨天中止が続いたのを機にローテーションを組み替え、菅野にリフレッシュの機会を与えたのです。
これが功を奏しての、21日の完封劇。この時期にあえて休養を与えたのは、中止分が組み込まれる終盤の過密日程を見据えてのことです。坂本をときどきスタメンから外しているのも同様の意味で、ベテランを休ませたときは、2軍から昇格して来た選手を即起用。これが若手たちの発奮材料にもなっています。
また、編成とも緊密にコンタクトを取り、楽天で出番を失っていたウィーラーを起爆剤としてトレードで獲得。入団会見の日に即、先発出場させるなど、活発に新陳代謝を行っているのは「チームを常に新しくしよう」という意思の表れでもあります。
22日の予告先発は、今シーズンからローテーションに抜擢され、開幕3連勝と結果を出している高卒2年目の戸郷。彼も「日々新なり」を象徴する存在です。
「ただ、新鮮でいられる仕事場があることに感謝しています」
62歳にして(原監督のなかでは“2歳”ですが)、この言葉を口にできる指揮官。知将の精神を受け継いだ“永遠の若大将”が目指すのは、リーグ連覇に止まらず、8年ぶりの日本一奪還です。
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