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読めぬアメリカ大統領選~旬を過ぎた候補者と変わった現大統領の戦い

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月2日 11時35分

読めぬアメリカ大統領選~旬を過ぎた候補者と変わった現大統領の戦い

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月31日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。トランプ大統領がアメリカ大統領選の延期提案をツイートしたニュースについて解説した。

ホワイトハウスのローズガーデンで行われた、新型コロナウイルスに関する記者会見でのトランプ米大統領 2020年5月11日 ワシントン (Photo by Brendan Smialowski / AFP) AFP時事 写真提供:時事通信社

トランプ氏がアメリカ大統領選の実施日の変更を提案

アメリカのトランプ大統領は7月30日にツイッターで、郵送で投票する「郵便投票」が広く導入された場合について、「2020年の大統領選は史上もっとも不正確で欺瞞の選挙になる。人々が適切かつ安全に投票できるようになるまで選挙を延期するべきか?」と投稿し、11月3日に予定されている大統領選を延期したい考えをにじませた。しかし、アメリカ大統領選の実施日は、連邦法で「11月の第1月曜日の次の火曜日」と規定されている。実施日を変更するには法改正が必要だが、下院は野党の民主党が多数を占めていて、実現の可能性は極めて低く、議会を通さず大統領権限などで延期することはできない。

飯田)突然、このようなツイートが出て来ました。

「スーパーチューズデー」で予備選が行われた米カリフォルニア州ロサンゼルスでの集会で、聴衆に笑顔をみせるバイデン前副大統領。スーパーチューズデーで獲得代議員数を積みあげ、「本命」に返り咲いた=2020年3月3日 写真提供:産経新聞社

トランプ大統領の悪あがきの始まり~バイデン氏支持率が上がり

宮家)失礼な言い方かも知れませんけれども、要するに「悪あがき」ですよ。トランプさんにとって、いまの状況はよくないわけです。投票率が上がってしまうと、彼の信任投票で「否」という票が増えてしまうから、何とか普通の投票所での対面の投票にしたいわけです。4年前はヒラリーさんが民主党候補者でしたから、「ヒラリーさんならどっちもどっちだから、投票所へ行かない」となり、全体の投票率があまり伸びないなかで、トランプさんは自分の岩盤支持層を使って、何とか勝ったのです。今回もそれ以外に勝つ方法はないので、選挙戦術としては正しいと思います。しかし、大統領選挙の日にちを変えることはできない。法律に書いてあることを大統領令で変えられるわけがないのです。それが連邦議会で通るわけもありません。悪あがきの始まりだと思います。トランプさんは、勝てばいいですが、もし負けてしまったら、「投票は無効である」、「やり直しだ」と言い出すでしょう。「決着がはっきりするまで自分はホワイトハウスに居続ける」ということを言ってもおかしくないですね。何しろ彼は、敗北を認められない性格だろうと思いますから。本当に困った人ですよね。

飯田)コロナの影響などもあると思いますが、バイデンさんの支持もそれだけ伸びているということでしょうか?

宮家)いまのところそうですね。しかし、まだ投票日までは100日を切ったばかりです。4年前のことを考えると、世論調査でいまごろはヒラリーさんが圧倒的に強かったわけです。それがひっくり返ったのですから、4年後にまた同じ間違いをしたくないので、いまの段階でバイデンさんが勝つということは言いませんが、世論調査ではどの分野においてもバイデンさんが優勢であることは間違いありません。いままで、経済についてはトランプさんはそれなりに評価されていて、その点では彼の方が支持率が高かったのですけれども、それもいまは逆転していますから、トランプさんにとっては八方塞がりです。

飯田)アメリカのGDPも、コロナの影響で30%以上下がっていると。マイナス32.9%というと、相当な数字ですよね。

宮家)さすがにこれは中国で始まったのですから、コロナの感染はトランプさんの責任ではありません。しかし、感染拡大防止のやり方はあまりよくないです。日本では患者が1日1000人と言って大騒ぎしていますが、向こうは7万人だと言っていますから、桁が違うわけです。

ホワイトハウスで記者会見するトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年7月28日 写真提供:時事通信

読めない今回の大統領選

飯田)すごい数になっていますね。

宮家)このように大統領選はトランプさんの思い通りにはならないと思うのですが、ではバイデンさんで大丈夫なのかと言えば、少し「旬を過ぎたかな」という印象は否めません。10年前なら間違いなく当選していると思うのですが、どうでしょうか。アメリカ人は行き詰まったときには、新しいものを求める傾向があります。湾岸戦争があって、その後にイラクで米兵がどんどん亡くなり、これではダメだとなると、オバマさんのような上院議員になってから数年しか経っていないような人を、大統領にしてしまうのです。しかし、バイデンさんは40年以上も上院議員をやっています。しかもワシントンというところは、長くいればいるほどいろいろなしがらみもあって、いい情報も悪い情報も残るわけです。そうすると、若干、旬を過ぎた大統領候補しか出せない民主党と、共和党のあまりにも変わったいまの大統領との戦いというのは、なかなか結果が読めないですね。

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