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米が「TikTok」使用禁止する安全保障上以外の“もう1つの問題”

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月3日 17時45分

米が「TikTok」使用禁止する安全保障上以外の“もう1つの問題”

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月3日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカが「TikTok(ティックトック)」の使用を禁止する2つの理由について解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

アメリカ国内で禁止の「TikTok」、マイクロソフト売却は難航か

アメリカのトランプ大統領は8月1日、中国のIT企業・バイトダンスが運営する動画アプリ「TikTok(ティックトック)」は安全保障上の懸念があるため、アメリカでの使用を禁止することを明らかにした。トランプ氏の意向で、バイトダンス側がティックトックのアメリカでの事業をマイクロソフトに売却する交渉は、一時停止しているとみられている。

飯田)ハイテク関係で米中が角を突き合わせているのか、という印象もありますが。

須田)IT関連の覇権争いというような見立てもできるのですが、そうではなく、例のファーウェイ問題の延長線上に位置づけられている問題です。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

オープンソースなアンドロイドとクローズドソースなアップルの違い~設計思想の違い

須田)少し話が横に逸れるのですが、それぞれのスマートフォン端末、アイパッドなどの端末を含めて、セキュリティの強度は4段階に分かれていて、1が脆弱、4が最強と専門家のなかではランキング付けされています。アンドロイドとアップルの両陣営に分かれていますが、アンドロイドの情報強度は1.5しかないのです。そして、アップルは3.5あります。強度の差が著しくあるのです。ただ、それはアンドロイドがいままで何の策も講じていなかったとか、致命的な欠陥があるというわけではなく、ソフトの設計思想の違いなのです。アンドロイドはもともと、「みんなで一緒にいいものをつくって行きましょう、問題があればみんなで直して行きましょう」というオープンソースだったわけです。それに対して、アップルは「全部自分たちでやるのだ」というクローズドソースでした。この違いが出て来てしまっているのです。もともとアップル陣営はマーケット視野もそれほど大きくなく、極めて限定的だったものですから、中国のような国がハッキングやバックドアを仕掛けようという魅力を感じるのは、アンドロイド陣営だったのです。ですからOSをアップして行くためにも、その手のものがかなり入り込んでしまった。しかも、アプリケーションソフトを含めてオープンになってしまっているから、問題のあるアプリも具体的には言いませんが、けっこうあります。それらが使えるような状況になって来ている。そのため、中国のやりたい放題になっているのがアンドロイドなのです。だからといって問題だとは言いません。設計思想の違いでしかありませんからね。

ファーウェイのショップ=2018年12月9日、中国・深圳(共同) 写真提供:共同通信社

バックドア的な仕組みが入っている「TikTok」はアメリカ国内で使用させられない

須田)そんななかでティックトックは間違いなく、私も具体的な証拠は提示してもらえなかったのだけれども、バックドア的な仕組みが顔認証などで入っているということです。その証拠はあるのだから、それが使われているという裏付けはないけれども、そういう痕跡がある以上、アメリカ国内で使用させるわけには行かないというのが実態のようです。ですから、一定程度の中国に対するけん制もあるでしょうし、今後起こり得るリスクを回避するというところもあるでしょうけれども、ハードの部分からソフトの部分にアメリカの中国包囲網が進んでいるということです。別にティックトックのアメリカ国内の運営をマイクロソフトに渡しても、もともとの仕組みがそうなっているのだから、主体が誰であっても一緒だというのがアメリカサイドの認識なのです。

飯田)そこも含めてつくり変えることをすれば、アメリカでも流通できるかも知れませんが、そんなことはできないだろうと。

須田)マイクロソフトにそういったものはないのだと、自己認証させようという考えもないことはないけれど、100%自己認証した上で買収はできないですよ。

飯田)そうなると買収した上で、全部検証しなくてはいけない。お金もかかるしリスクも背負う。マイクロソフトがペンディングしているのも、そういうところがあるわけですか?

須田)つまり、国防権限法に引っかかってしまうのです。

飯田)国防権限法というのは、それだけ広範囲にいろいろなところへわたっているのですね。

須田)そうですね。

外国による香港への干渉を決して許さない駐英中国大使  15日、英ロンドンで記者会見を開いた中国の劉暁明駐英大使=2019年8月15日 写真提供:共同通信社

人権問題からヨーロッパもアメリカに続く~日本も欧米に同乗すべき

飯田)ハードの戦いというのが、ファーウェイ製品を入れるかどうかというところだったわけです。ここから先はソフトの部分も、いまアメリカで起こっていることですけれども、影響は他の国にも及ぶのですか?

須田)イギリスが7月14日にファーウェイ製品を規制する方向に動いた理由は、覇権争いという点ではなく、ウイグルに関しての人権問題にも絡んでいます。犯罪的組織という言い方をアメリカはしましたが、「そういう犯罪的組織の製品をあなた方は使うのですか?」と、アメリカ上院議員がイギリス議会に問いかけた。それに対して、何の反論もできなかったという実態があるのです。そうなると、ドイツやフランスも人権問題が出て来た以上、そちらの方向に行かざるを得ない。ヨーロッパの価値観ですから。ただ単純に「IT・ハイテクをめぐる覇権争い」というセンテンスで見ていると、本質を見誤ることになると思います。

飯田)そのロジックで、基本的人権などの問題でイギリスに迫って行った。日本に対しても、アメリカが同じように迫って来る可能性はあるわけですよね?

須田)日本はどちらかというと、実利の方ですから、機密情報が漏洩しているということになれば、そこは抜け穴を塞いで行きます。だからNTTはファーウェイ製品を使いません。あれほど中国に対して軸足を置いていたソフトバンクも、5Gではファーウェイの基地局は使いませんから。人権というよりも、実利の部分で日本は動いているけれども、その人権についても、欧米の基準に同乗すべきだと思います。

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