作家・まさきとしか~生活をするためには小説を書くことしか残っていなかった
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月5日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に作家のまさきとしかが出演。小説を書く日常生活について語った。
黒木)今週のゲストは作家のまさきとしかさんです。現在は北海道札幌市で執筆活動をされていますけれども、東京生まれということですが、何かをきっかけに札幌に行かれたのですか?
まさき)親の仕事の関係で、2歳のときに札幌に行き、その後、東京に住んでいたことがあります。
黒木)そうなのですね。作家として、「最初は勘違いで」とおっしゃっていました。自分がプロとして、作家として生きて行こうという気持ちになったきっかけは何ですか?
まさき)「プロとして生きて行こう」と思ったことはないです。本当にダメ人間なのです。怠惰で、努力することもできなくて、自分でもなぜ地道な作業ができるのか不思議です。仕事もいままで転々としていて、20では済まないほど職も変えています。会社勤めも20代後半になってから、「このままではいけない」と思い始めたのですが、会社に行くのが嫌で、よくズル休みをしていました。朝、出勤前にシャワーを浴びるのですが、髪を洗いながら、「こんな毎日は嫌だ」とうんざりしていました。でも、小説家になったら、小説を書くのは好きだし、うんざりしない生活を送れるのではないかと思い、消去法で小説を書くということしか残っていなかったのです。
黒木)それは、小説家になるべくして生まれて来たのですね。
まさき)そうなのでしょうか。
黒木)それしかないということですよね。
まさき)他は何もできないです。
黒木)ご自分でそう思っていらっしゃる。羨ましい限りです。私はまさきさんの著書を読んで「素晴らしい本に出会えた」と、生きていてよかったと感動してしまいました。
まさき)そういう声を聞くと本当に嬉しいです。なかなか人と接することが普段はないので、本を読んでくださった方からそう言っていただけると、天にものぼる心地になります。
黒木)まさきさんの本の1つの特徴に、「こういうものが嫌い、こういうものも嫌い、でも本当に嫌いなのはそう思っている自分だ」というフレーズが、どの本にも出て来ますよね。
まさき)すごいですね。
黒木)いまお話を伺って、だからその文章が出て来るのだと思いました。
まさき)そこまで読まれていましたか。そこまで読んでいただいたことに驚きです。読者の方から直接声を聞くことが少ないので、本当にきょうは貴重なお時間です。
黒木)まさきさんは、どのようなルーティンで書かれているのですか?
まさき)私は、いまは小説だけを書いているのですが、いつお休みにするかということは決めていません。朝型なので、7時~8時のあいだに身支度をして、そのあと1人でラジオ体操をして、毎日同じ朝ごはんを食べます。
黒木)同じ朝ごはんですか。
まさき)野菜と納豆、お味噌汁、ご飯と、たまに鮭がつきます。それからコーヒーを淹れてパソコンに向かいます。
黒木)何時ごろまでですか?
まさき)だいたい10時から始めて、休憩を挟みつつ6時~7時に終わります。「きょうは行けるかも」と思ったら、もう少し遅くまで書いています。
黒木)「きょうはやめた」という日もありますか?
まさき)そういう日もあります。そういうときは、お酒を飲みます。
黒木)いいですね。
まさき)そうでしょうか。
黒木)物語を紡いでいらっしゃるわけでしょう。ゆったりとした豊かな時間のなかで、ミステリーを書かれているのですね。
まさき)自分でも、環境にはすごく恵まれていると思います。
黒木)充実していらっしゃるから、こういった斬新な本が書けるのでしょうか?
まさき)無趣味で、人生の楽しみが全然ないのです。生活のなかで楽しいことが見出せないから、本当に無機質に生きているという感じです。
まさきとしか/作家
■1965年、東京都生まれ。北海道・札幌育ち。札幌市に在住。
■2007年、『散る咲く巡る』で第41回北海道新聞文学賞を受賞。
■2013年、母親の子どもに対する歪んだ愛情を描いたミステリー『完璧な母親』が刊行され話題になる。
■他の著書に『夜の空の星の』『熊金家のひとり娘』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ゆりかごに聞く』『屑の結晶』などがある。
■最新刊は『あの日、君は何をした』(小学館文庫)
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