「うがい薬を買いに走るような話ではない」吉村知事・松井市長の“効果期待”発表に辛坊治郎が疑問
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月4日 19時55分
キャスターの辛坊治郎は8月4日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、この日午後に大阪府の吉村洋文知事と松井一郎大阪市長がポビドンヨードのうがい薬の新型コロナウイルスへの効果の可能性を発表したことについて、“まった”をかけた。
吉村大阪府知事と松井大阪市長、4日午後に共同会見
大阪府の吉村洋文知事と松井一郎大阪市長が、4日午後の会見で新型コロナウイルス対策の一環として、ポピドンヨードの含まれたうがい薬を使うことで、重症化を抑制出来る可能性があると発表した。
辛坊)軽症患者が使用することで重症化を抑制する効果があるとの研究を紹介したということで。ポビドンヨードはどのようなものかというと、昔からヨードの殺菌作用というのは有名で、代表的なところはヨードーチンキがあります。ヨードチンキはヨードを何で溶いているかというと、消毒に使うエタノールで溶いていました。となると、傷に塗るとすごく染みて痛いのだけど、アルコール度数90%くらいで、なかなか飲めないじゃないですか。同じような効果があるので、うがい薬としてはエチレアルコールではないものを溶媒にして製品化したものがたとえば「イソジン」であり、明治のうがい薬だったりします。ヨードの他の使い方でいうと、ヨードは強力な殺菌作用がありますから、これを別の溶媒で溶くと「ルゴール」という商品名で、扁桃腺になると喉の奥に塗ったりします。ヨードというのは強力な殺菌作用、それからウイルスを不活化する、活動力をなくして伝染能力をなくしたりする効果があります。まず、前提としてポビドンヨードを含むうがい薬というのは、ウイルスや最近を無毒化する、あるいは消毒、殺菌する作用はあります。だから、これを口のなかに入れてガラガラすると、このうがい薬が到達した範囲における細菌とウイルスは完全に無くならないけれど、感染力は下がります。
増山さやかアナウンサー)触れたところはある程度。
辛坊)はい。だから口のなかにウイルスが入って、喉のうがい薬が到達する範囲にあるものは、ガラガラペッとすることで活性化しなくなります。だから、まったく効果がないわけではありません。うがい薬というのはそういうものですから。だけど、感染経路でいうと、鼻からウイルスを吸い込んで、鼻の奥でウイルスが増殖する。喉のもっと奥で増殖する。肺炎を起こすケースなんかは、ウイルスがそのまま肺の奥まで到達しているケースもあるわけです。そうすると、そんなところにうがい薬が到達するかというと、到達しないわけです。じゃあ、なぜ松井さんがそんなことを言い始めてしまったか。第一報を伝えている新聞のネット版によると、「軽症患者が使用することで重症化を抑制する効果があるとの研究を紹介した」とありますが、本当にそのような論文があって、医学関係者がその論文を読んで、「たしかにそうだね」という内容であれば、これは画期的な話なのだけれども、もしかして口のなかのウイルスを除去するというだけのものならば、さして効果はない。他の経路からもウイルスは感染してくるわけなので、鼻の奥、肺に直接、喉の奥ということになると、うがい薬でなんとかできる範囲じゃないです。本当にそのような研究があるなら、5日あたり1面トップにくる話ですが、もしそんなものがあまり信用できない論文だった場合には、小さな扱いにならざるを得ません。5日の(新聞での)扱いというのが注目です。
誤嚥性肺炎が起こる可能性が下がるのは間違いないが
辛坊)私が少し心配しているのが、松井さんは、この前から「感染予防のために抗体検査を受けろ」というわけです。抗体検査は過去の感染歴を調べるものだから、いま感染しているかどうかはわからないのに、「感染予防のために抗体検査を」と言ってしまうということが、最近相次いでいました。(松井市長が)お医者さんからこんなことを言われたという情報を若干耳にしたのですが、口でウイルスがうつるということ。これは、間違いではないです。粘膜で移りますから、ウイルスが付いた手で鼻や口、目を触ってはいけませんと言います。だから、重要な感染源として、手が媒介して口からウイルスが入るということはあり得ます。口から入ったウイルスが、どうも気管で誤嚥したウイルスが肺のなかに入って、肺のなかでウイルスが増殖して肺炎になるというような、印象認識を持っているのではないかと思います。
増山)ウイルスを誤嚥性肺炎で肺のなかに入れてしまう。
辛坊)そうなると、口のなかのウイルスを除去すれば、肺のなかにウイルスを飲み込むリスクは下がるから、誤嚥性肺炎が起こる可能性が下がる。誤嚥性肺炎は口のなかをきっちり殺菌しておけば、リスクは下がるというのは間違いがないです。
増山)介護現場でもよく言いますよね。
辛坊)たしかに、口のなかは雑菌がいっぱいです。肺の奥とかはほぼ無菌状態で、そこに雑菌でいっぱいの食べ物が気管に入り、肺に入るとそこで繁殖して、肺炎を起こして亡くなる。ご高齢の方が亡くなるリスクが非常に高い。このあいだ、97歳で亡くなられた台湾の元総統の李登輝さんも、最後は牛乳を誤嚥されて、誤嚥性肺炎がきっかけで亡くなられているわけで、高齢者の死亡原因としては誤嚥性肺炎は非常に高いので、口のなかを高齢者の方が殺菌することは悪くないですが、それが新型コロナウイルスだけに特異的に効くのか。
メカニズムの話は出ておらず、騒ぎすぎである
辛坊)私がいま言ったような単純なメカニズムで、口のなかのものがヨードで殺菌されてウイルスが死んで、それを誤嚥したときに、肺のなかにウイルスが到達しないから、少なくとも新型コロナで肺炎になるリスクは下がる、という理屈だとするならば、みんな揃ってうがい薬を買いに走るような話ではない気がしますが、ネット記事で「通販でバカ売れの可能性」みたいな記事がすでにあります。具体的には何を言ったのでしょうか……
「大阪府の宿泊療養施設の療養患者41人を対象に1日4回、「ポビドンヨード」によるうがいを実施したところ、ウイルス陽性率の低下が認められたという。4日間でうがいを実施していない人の陽性率は40%までしか低下していないのに対し、うがいを実施した人の陽性率は9.5%まで低下したという」
~日本ネット経済新聞 2020年8月4日記事【コロナ感染対策に効果?!『イソジン』など「ポビドンヨード」配合のうがい薬が通販でバカ売れの可能性】より
なるほどね。これをもとに発表したのでしょう。ということでいうと、大阪の状況証拠からそういうことが出たということだけれども、メカニズムそのものの話は出てこないね。もしかしたら、私がここで言った範囲のなかから出ていないという感じがします。すると、ちょっと騒ぎすぎだという気がします。
増山)この記事では、
「軽症者の陽性率の低下への効果や、他者への感染拡大の抑制に効果がある可能性について説明がなされたが、感染自体を防ぐという内容ではなかった。まだ研究段階であり、効果については慎重に捉える必要があるだろう」
……とも書かれています。
辛坊)そうだろう。
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