作家・まさきとしか~両手にサイリウムを持って1人で“ももクロ”のライブに行きます
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月6日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に作家のまさきとしかが出演。嫌なミステリー、「イヤミス」と呼ばれることについて語った。
黒木)今週のゲストは作家のまさきとしかさんです。無趣味で、何をやっても長続きしないとネガティブなことをおっしゃっていますが、そうなのですか?
まさき)唯一、ももクロが好きで、ファンクラブにも入っているのですけれども、ももクロのライブやDVDを観るときは、少しだけ輝けているような気がします。ライブは一緒に行ってくれる友達がいないので、いつも1人で両手に赤のサイリウムを持って掛け声をかけています。それは誰にも見られたくない姿です。
黒木)そうですか。ももクロちゃんのファンで、ライブのときだけ華やぐと。そんなまさきさんの作品は、嫌な気分になるミステリー、「イヤミス」と言われますが、そう言われて、まさきさん的にはどうなのですか? イヤミスの作家は、他にも真梨幸子さんや沼田まほかるさんなどがいらっしゃいますが。
まさき)初めて「イヤミス」と言われたときは驚きました。イヤミスと言われることに抵抗があったり、嫌だったりすることはないのですが、自分としては嫌なことを書いているつもりはまったくないので、これがイヤミスの部類になるのかと不思議です。
黒木)言葉にすると、嫌な気分になるミステリーを「イヤミス」と呼びますが、嫌な気分になるから読みたくない、ということではなく、目を逸らしてはいけないところを抉ってくれるので、目を逸らしたくなる自分がいるという意味だと、私は思います。本当の美しさや宝物がその先に眠っている、汚いものと綺麗なものの表裏一体というところが、イヤミスの醍醐味だと思っています。女の人の隠された部分を書いていらっしゃるので、共感したくないのですが、してしまう感情が生まれます。「こんな人はいないでしょう」と思っても、「いや、いるかも知れない」と思い直してしまう。「事実は小説よりも奇なり」と言うではないですか。でも、この小説は逆なのです。不思議な感覚に陥ります。
まさき)書いていても、ニュースを見ると「事実には追いつけない」と思うので、何とか追いつき、追い越したいと思っています。
黒木)日常生活のなかで、こだわりはありますか?
まさき)小説家になってからは、毎日朝ごはんは同じものという以外、「こだわりをできるだけ持たない」のがこだわりです。
黒木)こだわりを持たないのがこだわりですか。
まさき)私はズボラで怠惰なのですが、反対に神経質な面もあり、こだわりを持ってしまうとそれに囚われて、すごく不自由になってしまいます。ですので、日常生活はできるだけ臨機応変に、あまり頭を使わずに生きて行きたいと思っています。
黒木)小説家の方は、物語を紡いで行くではないですか。そういうものがあったら書けないのでしょうね。
まさき)いちばんつらいのは、寝ているときに頭のなかで文章を書いてしまうときです。それだと全然眠れないので、「頭のなかを洗いたい」と思うこともあります。
黒木)そういうときに、パソコンの前に行かれることはないのですか?
まさき)布団に入ったら、出るのが面倒なので明日に回すのですが、次の日になると忘れています。
まさきとしか/作家
■1965年、東京都生まれ。北海道・札幌育ち。札幌市に在住。
■2007年、『散る咲く巡る』で第41回北海道新聞文学賞を受賞。
■2013年、母親の子どもに対する歪んだ愛情を描いたミステリー『完璧な母親』が刊行され話題になる。
■他の著書に『夜の空の星の』『熊金家のひとり娘』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ゆりかごに聞く』『屑の結晶』などがある。
■最新刊は『あの日、君は何をした』(小学館文庫)
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