マイクロソフトのTikTok買収が示す~米中による“ネットの分裂”

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月5日 17時40分

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月5日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。トランプ大統領がマイクロソフトのTikTok買収を容認する意向を示したというニュースについて解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

トランプ大統領がマイクロソフトのTikTok買収を容認、合意期限は9月15日

アメリカのトランプ大統領は8月3日、中国企業が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」について、アメリカIT大手のマイクロソフトによる買収交渉を容認する意向を示した。一方で、9月15日までに合意に達しなければ、アメリカ国内での事業を禁止する考えも示している。

飯田)安全保障上の懸念があるということです。

佐々木)これは難しい問題です。前提情報として知っておいて欲しいのですが、中国発のIT企業で世界的プラットフォームになっているのは、TikTokが初めてなのです。よくアメリカのGAFAに対して、BATHなどと言われています。バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ、どれも中国ローカルの企業です。しかし、TikTokは日本でも人気がありますし、アメリカでも爆発的に人気のあるグローバルなプラットフォームです。TikTokは中国人が経営しているし、運営しているバイトダンス社は中国の会社ですが、出資しているのはシリコンバレーの投資家などで、必ずしも純粋な中国企業とは言い切れません。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

TikTokの持っているユーザーの個人データが中国政府の管理下に~中国の悪口をTikTok上で言えば、指名手配される可能性も

佐々木)アメリカが懸念しているのは、トランプ大統領が反中国だからということではなく、TikTokはユーザーの個人情報をたくさん持っています。それが中国のサーバーに送信されるということは、中国政府の管理下にあるということになります。例えば、我々は日ごろグーグルのサービスを使っています。そのデータは日本国内にも、アメリカのデータセンターにもあります。しかし、少なくとも中国にはありません。アメリカのデータセンターにあれば、アメリカ政府が見る可能性がないこともありませんが、日米関係で言うと、アメリカ政府が見たからと言って、同じ民主主義国であり、それほど問題はありません。しかし中国政府が見るということになれば、危機感を持つ人が多いと思います。香港で国家安全維持法を中国が施行しました。反中国的な言説をしていると逮捕される可能性があり、香港や中国国内に限らず、海外にも適用されます。実際、アメリカに住んでいてアメリカの市民権を持っている、朱牧民(サミュエル・チュー)さんという人に逮捕状が出て、指名手配されています。

飯田)出ていますね。

佐々木)日本の政府、警察が日本に来たことのないアメリカ人に対して、「日本の悪口を言っただろう」と言って、逮捕状を出しているのと同じです。TikTok上で中国の悪口を日本人が言ったら、国家安全維持法に基づいて中国政府が指名手配することも、やろうと思えばできてしまいます。そこに対して危機感を持つのは当然だと思います。

飯田)アメリカは中国に対して、ポンペオ国務長官の演説に象徴されますが、いろいろな閣僚が4回にわたって演説をしています。このところ、トランプ大統領の個性だけでは語れないような対立の仕方ですよね。

佐々木)分断を招くと言いながら、TikTokそのものは可能性のある動画サービスだと思います。観たことはありますか?

飯田)若い子が使っているのを覗いたことならあります。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

SNSに乗り遅れ、TikTokを買収したいマイクロソフト

佐々木)数十秒ぐらいの短い動画が大量にあり、ただ踊っているだけとか、YouTube的なものとは違います。人気があるので、マイクロソフトが買収しようと進めていますが、買収できればマイクロソフトにとっては天の恵みです。GAFAMと言われ、他のIT企業に準じて語られるマイクロソフトですが、OfficeやWindowsなどの主力製品はあるけれど、SNS的なものは持っていません。グーグルがYouTubeを持ち、フェイスブックがInstagramを持っていて、SNSで巨大化して来ましたが、マイクロソフトはそこが遅れています。TikTokを買収したら、SNS市場に自社の圏域をつくれる可能性があるので、マイクロソフトにとってはありがたい話なのです。しかも、バイトダンスはTikTokを売却してアメリカ企業にならない限り、アメリカで生きて行けないという状況なので、売るしかありません。

中国の習近平国家主席(左)とトランプ米大統領=2020年5月14日 写真提供:時事通信

中国政府から「売国奴」と怒られているバイトダンス、TikTok~米中でのネットの分断が起きている

佐々木)バイトダンスには難しいところがあって、中国では売国奴だと言われているのです。要するに、「中国企業のくせにアメリカに媚びを売って、アメリカで生き残ろうとしている」と言われ、批判殺到中です。ファーウェイは5Gの端末をアメリカでは使わないとしています。グーグルにアプリを載せないと言われて、携帯電話が売れにくくなっています。ファーウェイは、中国では愛国的な企業として評価されていて、「みんなでファーウェイのスマホを買って支援しよう」と言われていますが、バイトダンスとTikTokは売国奴だと怒られているのです。ナショナリズムとグローバルプラットフォームの狭間で、中国側とアメリカ側にインターネット企業が引き裂かれています。まさにネットの分断が起きているのだと思います。

飯田)ネット空間がブロック化して行くのでしょうか?

佐々木)以前からインターネット版の万里の長城と言われていて、中国国内では、テンセント、アリババ、バイドゥは使えますが、グーグルもフェイスブックも使えません。このように分断が進んでいましたが、それがさらに進むことになるのだと思います。実際、トランプ大統領は、以前からデカップリングと言って、グローバル経済を中国経済とそれ以外に分離すると言っています。グローバルサプライチェーンは分断できるはずがありませんが、無理やり分断させる動きをアメリカ政府はやって来ました。もしかしたら、そうなって来るのかという気もします。今回のことは、単にTikTokの話だけでなく、グローバル経済全体にどう影響を与えるかということも注視する必要があると思います。

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