イスラエルとUAEの国交正常化がもたらす“アラブ諸国への大きな影響”
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月17日 17時40分
![イスラエルとUAEの国交正常化がもたらす“アラブ諸国への大きな影響”](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_240022_0-small.jpg)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月17日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。トランプ大統領がイランへの国連制裁を復活させる手続きを取ることを明らかにしたニュースについて解説した。
トランプ大統領~イランに対し国連の制裁復活の手続きへ
アメリカのトランプ大統領は8月15日、イランに対する国連制裁を復活させるための手続きを取る方針を明らかにした。2015年にイランと米英独仏中露、常任理事国にドイツを加えた枠組みで結んだ核合意に基づく措置だが、アメリカは2018年5月に核合意を離脱しているため、実現できるかどうかは不透明。
飯田)ここへ来て、中東がやたらと動いているなという感じがあります。
須田)そうですね。13日に、その端緒となったイスラエルとUAEの国交正常化が発表された。しかも、ワシントンのホワイトハウスで発表されました。驚いたのですが、この発表を受けて反トランプと言われているメディアのニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNが翌日、一斉に絶賛したのです。「トランプ大統領はすごい」と。
飯田)そこは絶賛するのですね。
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13日、米ホワイトハウスの執務室で発言するトランプ大統領(ロイター=共同)=2020年8月13日 写真提供:共同通信社
イスラエルとUAEの国交正常化により、今後アラブ諸国がイスラエルの国家承認に動く
須田)その点については是々非々でやっていますからね。絶賛せざるを得ない状況だったのだろうと思います。第1期トランプ政権における、最大の成果と位置付けてもいいでしょう。何十年にもわたって膠着して来たパレスチナ問題が、場合によっては、全面解決に動き出すのではないかというほど大きな出来事なのです。それが意味するところは何かと言うと、実はイスラエルという国は、国連加盟国200ヵ国強のうち、イスラエルを国家承認していない国は35ヵ国あるのです。そのうち26ヵ国がアラブの国です。アラブの大国であるUAEが国家承認に動いたということは、今後、アラブ諸国が雪崩を打ってイスラエルの国家承認に動く可能性が極めて高いのです。ただ、いきなり国家承認ということが行われたわけではなく、その前哨戦は長い間ありました。2020年1月末に、トランプ政権が和平案を出したことを憶えていらっしゃいますか?
飯田)中東和平について、パレスチナの扱い等の話でしたか。
須田)そうですね。入植地はこれ以上広げないとか、エルサレムの扱いをどうするかなどの中東和平案を、1月末にトランプ政権が打ち出したのです。日本国内では批判一色で、NHKは「これではパレスチナ側が受け入れるはずがありません」などと報道していました。しかし、これが効いて、ベースになっているのです。
飯田)今回のことを受けて、一時は入植中止ということが少しだけ報じられていました。
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中東和平案を発表し、握手するイスラエルのネタニヤフ首相(左)とトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年1月28日 写真提供:時事通信
現実的な取引を取り、イスラエルを取ったアラブ諸国~イスラエルと欧米を巻き込んでイランと対峙する
須田)それがベースになって、今回のアラブ諸国は、「これ以上、事態を悪化させないためにはいい案ではないか」という評価になったのです。
飯田)なるほど。現状は追認するけれども、これ以上悪くはならないと。現実的な取引ですね。
須田)なぜ現実的な取引になったのかと言うと、アラブ諸国にとって、自分たちの本当の敵は一体誰なのか。自分たちの体制を脅かしているのは、一体誰なのかという問題です。もっと具体的に言えば、「それはイスラエルなのか、もう1つの敵であるイランなのか」ということです。アラブ諸国とイランとの関係は、それこそペルシア時代のころから対立の構造にあって、第一次世界大戦も含めて続いています。ここへ来てのイランの動き、つまり海外のテロ組織等を使って、自分たちの体制を脅かそうとしているのはイランではないか……それはわかっているのです。だとすると、アラブの国々としても、やはりここはイスラエルとバックにいるアメリカやイギリス・ヨーロッパを巻き込んで、イランと対峙しなくてはならないという、先ほど飯田さんがおっしゃったように現実的な選択肢を取ったのです。
飯田)なるほど。そのためにはパレスチナに泣いてくれという部分もありつつ、これでまとめられるのであればいいと。
須田)そうしなければ自分たちの体制崩壊にもつながりかねないという、非常に強い危機意識があるのです。なぜならば、イランと組んでいるのは誰かと言うと、確かに中東エリアでは、シリアと若干組んでいます。それ以外を考えると、そのバックには中国とロシアがいるわけですから、そこと対峙するためには、英米、ヨーロッパと組まないとバランスが取れない、均衡しないだろうという思いがあったのです。ですからパレスチナも、場合によっては最終的にイスラエルの国家承認へ動く可能性すらあるのです。
飯田)そうすると、現状の部分では国境未確定なのかも知れませんが、二ヵ国論のようなもので、パレスチナとイスラエルが成立する可能性が出て来る。
須田)無きにしも非ず。
飯田)これは歴史的なことですね。
須田)そうです。だから「歴史的な行為」と、アメリカのメディアは評価しているのです。
飯田)そこまで見通しているとなると、中東戦争などが全部片付くわけですよね。
須田)そうです。「トランプ政権最大の成果」と冒頭に申し上げたのは、そこに意味があるのです。ところが、日本のメディア含めて有識者は、1月末の中東和平案そのものを否定してしまったために、いまさらながら今回の出来事を評価する、または背景を説明するのは自己矛盾に陥ってしまうのです。だから扱いも小さくなるのでしょう。
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29日、カタールの首都ドーハでアフガニスタン和平合意に署名する米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表(左)と、反政府武装勢力タリバンのバラダル師(共同)=2020年2月29日 写真提供:共同通信社
両陣営のパイプ役になれるのは日本しかない
須田)もう1点、最後に言っておきたいのは、ここへ来ての日本の役割です。両陣営が対立を深めて行くとなると、誰が仲介に入れるのかと言えば、日本しかいないのです。
飯田)ヨーロッパもアメリカも中国も、それぞれが当事者だから、経済大国で入れるのは日本だけということになるわけですね。
須田)ですから、中国漁船問題、漁期の問題がありましたが。
飯田)中国としても、日本との関係を悪くすることができないわけですね。両方に頼られている。
須田)中国も日本しか役割を果たせる、パイプ役になれるところはないという認識を持っているのです。
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