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利水から治水へ~洪水対策としてのダム活用

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月19日 17時35分

利水から治水へ~洪水対策としてのダム活用

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。日本のダム活用の見直しについて解説した。

ダムの活用見直し

菅官房長官は8月17日に更新した自身のブログのなかで、これまで洪水対策に使われていなかった経済産業省や農林水産省が所管する発電用のダムや、農業用水用のダムについても、洪水対策に活用できるよう見直しを行ったと伝えた。都道府県が管理する利水ダムについても、積極的に洪水対策に活用する考えを示している。

飯田)12日に官房長官は、群馬県の須田貝ダムを視察したということです。ここは発電用のダムです。

佐野市の秋山川の堤防が決壊し、住宅も水に浸かった=2019年10月13日、佐野市赤坂町 写真提供:産経新聞社

日本のダムは利水ダムとしてつくられて来た

佐々木)渋いニュースですが、重要な話です。いまは水害が多く、台風19号のときには、八ッ場ダムが水を貯めて洪水を防いだということがありました。ダムは治水、水を貯めるものだと思われていますが、日本のダムの大半は利水、水力発電や工業用水、農業用水などの水を使いまわすための利水ダムです。

飯田)映画『黒部の太陽』の黒部ダムも大きいですが、発電用ですよね。

佐々木)誰が始めたのかと言いますと、1972年に田中角栄元首相が日本列島改造論のなかで始めたものです。先日、ダムの歴史を調べるために『日本列島改造論』を古本屋で買って読みました。4ページくらいにわたってダムのことが書いてありますが、ほとんどが利水のことしか書いていません。治水にも役立つということが書いてあるのは、4行くらいです。

飯田)たった4行。

佐々木)当時、ダムは工業用でした。その発想でやって来たので、工業用につくったダムは治水にはあまり使わないという、縦割りのような区分けがあるのです。水を貯めて利用するという発想だと、簡単に放流してはいけないのです。

飯田)使う目的がなければいけない。

【九州豪雨(大牟田)】大雨で冠水し、ゴムボートで救出される住民=2020年7月7日午後、福岡県大牟田市 写真提供:産経新聞社

利水ダムも治水として利用するようにする~利根川、荒川水域が危ない

佐々木)台風のような大雨が来るとなると、事前放流で空にして、雨が降ったら貯めるというのが治水です。八ッ場ダムがうまく行った理由は工事中だったため、完成間際で水を貯めていなかったからです。そこに台風19号が来て水が貯まったので、ちょうどよかったのです。もし八ッ場ダムが稼働していて、水が満杯であれば、あれほどの水は貯められませんでした。今回の話は、水を貯めているようなダムも、集中豪雨や台風が来そうになったら事前放流し、雨が来たら貯めるという発想です。特に利根川、荒川水域が危ないです。

飯田)流域に0メートル地帯がたくさんありますよね。

佐々木)そうです。荒川、利根川の陸地はとても低いのです。我々の想像では、江戸川区の辺りが低いというイメージだと思いますが、足立区も低いし、さらにその奥の越谷まで、ずっと低いです。利根川、荒川が決壊すると、埼玉の奥の方まで水浸しになります。地下鉄に水が流れ込んだら水没します。そうなると、完全に首都圏は麻痺します。「利根川水域は絶対死守」というのが、東京の最大の命題です。ここ5年くらい前から、東京メトロは入口のところに止水板を設置しています。あれでも高さ1~2メートルだから、大洪水になったら間に合いません。上流で何とかしなければいけない。利根川に関しては八ッ場ダムができたのと、渡良瀬遊水地など、次々とやって来ました。それに加えて、須田貝ダムのような巨大な貯水量を持つダムも、事前放流して水を貯められるようになったので、以前と比べれば安心できるようになって来たと思います。

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