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劣化しつつあるアメリカの政治~トランプ氏、共和党大会で指名受諾演説

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月30日 11時40分

劣化しつつあるアメリカの政治~トランプ氏、共和党大会で指名受諾演説

 26日、米共和党大会で演説したペンス副大統領=メリーランド州(UPI=共同)

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月28日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。2020年の共和党大会について解説した。

26日、米共和党大会で演説したペンス副大統領=2020年8月26日 メリーランド州(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

共和党大会、ペンス副大統領候補が受諾演説

11月3日のアメリカ大統領選挙に向けた共和党の全国大会は、3日目の8月26日、1期目に続き副大統領候補に指名されたマイク・ペンス副大統領が受諾演説を行った。ペンス氏は「アメリカを立て直すために必要な選択肢は明らかだ。あと4年間、トランプ大統領が必要だ。バイデン氏は中国共産党の応援団だ」などと述べ、トランプ大統領の再戦を訴えた。共和党大会は最終日の27日、トランプ氏がホワイトハウスで正式な受諾演説を行い、閉幕となった。

18日、オンラインの米民主党大会で、司会役を務める女性の後ろの画面に映し出されるバイデン前副大統領とハリス上院議員の写真(ゲッティ=共同)=2020年8月18日 写真提供:共同通信社

観客の入らない党大会の難しさ

宮家)ペンスさんは偉いですよね。あの大統領にずっと忠誠を誓って、3年以上も弁護しているのです。今回、民主党と共和党の全国大会を見て面白いなと思うのは、民主党の方は全部デジタルというか、バーチャルなのですよね。観客もほとんどいない。最後にバイデン夫妻とハリス夫妻が外に出たとき、駐車場に支持者が少しいましたけれども。これに対し共和党は、それではダメだということで数を少なくし、ソーシャルディスタンスを意識した上で、かなり人を入れてやっています。しかし、どっちもどっちですね。今年(2020年)の大統領選挙は、みんなやりにくいと思いますよ。手応えがありませんからね。普通のように、演説したらワッと拍手があって、興奮で演説が中断され、モメンタムができあがって行くというプロセスがまったくないので、選挙がどのくらい盛り上がっているかを見るのは難しいと思います。

24日、米共和党大会で親指を立てるトランプ大統領(左)とペンス副大統領=2020年8月24日 ノースカロライナ州シャーロット(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

変質しつつある共和党~肩身の狭い穏健派

宮家)そのなかで、ペンスさんは一生懸命やっていると思います。彼だって本当はまともなのですよ。もともとはインディアナ州の知事でしょう。日本のこともよく知っている人ですが、なぜかトランプ現象の一部になってしまったというのは、僕に言わせれば悲しい話です。理由があってやっていることなのですよね。

飯田)理由があってやっている。

宮家)簡単に言うと、共和党が変質しつつあるのです。レーガン時代は、もともと民主党にもいた保守層が、レーガン大統領の旗のもとに結集したわけです。私は保守合同と言っています。しかしソ連がなくなり、この保守合同の再分裂が始まっているところに、トランプさんがやって来て共和党を乗っ取ってしまった。ペンスさんはもともと保守派ですから、そこまで違和感がないかも知れませんが、マケインさんやロムニーさんなど、共和党穏健派の人たちは非常に肩身が狭い。下手にトランプさんに喧嘩でも売ろうものなら、党内で孤立してしまうのですよね。トランプ応援団がいて、ワッと押しかけて来たり、抗議の電話をされたり。下手をすると予備選挙で対抗馬を出されて、予備選挙に勝てなくなる。そういう現象が、いまの共和党では起きているようですね。

米西部ネバダ州ラスベガスでの支持者集会で演説するトランプ大統領。「米国は偉大なる再起の途上にある」と述べて11月の大統領選での再選に向け結束を求めた=2020年2月21日 写真提供:産経新聞社

日本にとって付き合いやすい共和党の人間がいなくなりつつある

宮家)急速に共和党の一昔前の中堅、中道、穏健派の人たちがどんどん淘汰されて行って、逆に、それこそ陰謀論が好きな変な人たちや、極端な白人至上主義者の人たちが、トランプさんの指示を受けながら増殖している。こういう状況だと、共和党自体が非常に限られた支持層の……簡単に言うと、白人労働者ですよね。そのような政党になってしまう恐れがあります。それが本当にいいことなのか。日本としては共和党、民主党のどちらも大事なのですが、よく言われるのは、日本は民主党よりも共和党の方が好きではないかということです。でも、それはトランプさんのような人たちではなくて、共和党の保守ではあるけれども穏健な人たちが、同盟国を大事にしながら、国際社会で安定を維持しつつ、もちろんアメリカのリーダーシップも拡大したいと考えてやってきた。実はこういう人たちが、我々にとっては付き合いやすかったのですよ。でも今や、その人たちがいなくなりつつあるのです。

ホワイトハウスのローズガーデンで行われた、新型コロナウイルスに関する記者会見でのトランプ米大統領 2020年5月11日 ワシントン (Photo by Brendan Smialowski / AFP) AFP時事 写真提供:時事通信社

アメリカの政治が両極端に割れて行く可能性

宮家)中国に対しては強硬かも知れませんが、強硬にやればいいというわけではないです。やはり同盟国を大事にしてもらわないと。中国を念頭に置くなら、日本とアメリカだけではできません。ヨーロッパやNATOの同盟国も含めて、きちんとした連携、ネットワークをつくらなくてはいけない。アメリカはそれを全然やっていないのですから。その意味で今回は、いまの共和党がどんどん変質しているということを、如実に表すような党大会だったという印象です。

飯田)共和党の支持層が限られたところに固まって来ると、残りを取ろうとする民主党は有利になりますか?

宮家)民主党も割れていますからね。いまは反トランプで一緒になっていますが、勝った途端にあの党は割れますよ。サンダースさんは11月4日から、自分の進歩的な政策を追求すると言っていますから。

飯田)そうするとサンダースさんは、閣僚に入ったりとか。

宮家)それは流石にないと思います。しかし、どうもアメリカの政治が劣化しつつある気がして嫌ですね。

飯田)合意形成ができづらいということですか?

宮家)そうです。両極端に割れてしまって、まともな中道の穏健派の人たちが消えて行くのは、いいことではないと思いますね。

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