新型コロナの指定感染症2類の運用の見直しで何が変わるのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月31日 17時30分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月31日放送)に中央大学法科大学院教授の野村修也が出演。新型コロナウイルスの対応をめぐり、冬に向けて感染症法に基づく現在の運用を見直すとする安倍総理の会見について解説した。
政府、感染症法の運用見直しへ~保健所などの負担軽減図る
新型コロナウイルスの対応をめぐって、安倍総理大臣は8月28日の記者会見のなかで、冬に向けてインフルエンザなどの患者の増加が予想されることから、保健所や医療機関の負担軽減を図りたいとして、感染症法に基づく現在の運用を見直す考えを示した。その上で重症化リスクの高い患者に重点を置いた対策に転換するということである。
新型コロナウイルスはどういうルールの下で運用するべきか~見直しが示された
飯田)辞任表明の会見でもあったので、そちらばかりが報道されている感じもありますが、辞任表明の1つの理由として、「冬を見据えてコロナの実施すべき対応策を取りまとめることができた」と発言しております。法律面などから見て、いかがですか?
野村)まず、このタイミングでこれが出て来たのは、第1次安倍政権の辞任のときに「政権投げ出し」という批判があったので、今回はそうではなく、道筋をきちんとつけて退陣されるということにこだわられたのでしょう。2週間くらい前から指示を出されて、今回のパッケージを精力的にまとめておられたということが言えると思います。「感染症法」という法律に基づいて運用していますが、新型コロナウイルス感染症というのは、どういうルールの下で管理して行けばいいのか、ということの見直しが示されたというところが、最大のポイントだと思います。
飯田)指定感染症になっていますが、「何類相当」ということがよく言われて、「2類相当で、これを見直すのだ」と前々から報道されていましたが。
いまの新型コロナウイルスの症状に合ったルールをつくる~その都度政令によってアレンジする
野村)過去に存在している感染症については累計化をして、「この病気はこの類に当てはまります」という規律になっているのですが、新しいものについては、その都度政令によって、条文の適用を決めて行くという形になっています。よく報道では「2類相当」だとされていますが、現在は政令が2回改正されていまして、1回目は「2類と同じ規律に当てはめる」というものでした。しかし、数日後に無症状でも人に感染させるということがわかったので、「無症状の人でも入院勧告ができる」という、1類にしか認められていないものですけれども、これも適用することになりました。このように、アレンジしてつくっているものなのです。今後の方針、方向としては、重症の方が中心ということになっていますから、「症状に応じて入院勧告をする人と、しない人に分ける」ということになります。これは政令のつくり方なので、「何条と何条は重症者に適用します」、または「原則を付けるけれども、何条と何条は軽症者には適用しません」というつくり方をすれば、いまの病気の症状に合った形のルールになると思います。
秋冬に向けて無症状患者も収容すると病院がパンクしてしまう
飯田)現在運用しているルールでも、政令上は入院勧告という形になっていますが、事実上は、ほぼ入院を義務付けるような形でやっています。これを少し変えることによって、「軽症者は入院・隔離しなくても大丈夫」というような運用にする。秋冬は患者が増える可能性がありますからね。
野村)医療崩壊との関係が重要です。無症状でも感染者だからということで、みんな病院に収容する体制にしてしまうと、病院がパンクします。そうすると、本当に治療を受けなくてはいけない方々が後回しになってしまうことにもなりますから、政策として「命を守る」というところに力点を置くというのが今回、明確になったのだと思います。
飯田)ただ、これをやろうとすると、「いままでの政策は何だったのだ」などと批判が出て、官僚としては及び腰になるところではありますよね。
野村)まさにその通りです。日本の官僚制度の悪いところは、無謬性と言って、「自分たちがやったことに間違いはないのだ」という仕組みになるので、一旦やったことを取り下げたり、変えたりすることが苦手なのです。政治主導でしっかりとやって行かなくてはならない部分なのですが、今回これで修正するために、官僚の人たちには理屈を付けてあげなくてはいけない。ある意味では「病気の状況がわかって来たので、前は大きく網をかけたけれども、フィットした的確な対応をすることにした」のだと。「前は前で間違っていなかった」ということを言うのだろうと思います。
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