7年8ヵ月~安倍総理はどこまで日本を取り戻せたのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月1日 17時40分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月1日放送)にジャーナリストの有本香が出演。安倍政権の歩んだ7年8ヵ月の道のりを振り返り解説した。
安倍政権~7年8ヵ月の道のり
安倍総理大臣は8月28日に記者会見を行い、持病の潰瘍性大腸炎が再発し、国民の負託に応えられる状態ではなくなったとして辞意を表明した。安倍総理は8月24日、連続在任期間が2799日となり歴代最長となっていた。
飯田)佐藤栄作元総理の記録を抜いて歴代最長になりました。いまだ更新中という形ではあります。振り返ると、長かったですよね。
有本)今回、辞めることは青天の霹靂であったとは言うものの、ギリギリになって力尽きるというよりは、タイミングをご自身で十分に考えて辞められたという感じがします。今後も、政界に大きく影響力を残して行かれるのだろうな、ということは確かだと思います。
飯田)内閣支持率は20ポイントほど上がっていますからね。
有本)あと2週間しかない政権ですが、上がりました。ある女子高生は、「安倍総理は日本のお父さんのようになっていた」と言っていました。物心ついたときから安倍さんが総理でしたからね。
飯田)7年というのは、そういうことですよね。
本当の意味で各国首脳のセンターに立った初めての日本人首相
有本)メディアが安倍政権の実相を伝えて来なかった7年8ヵ月でもあります。しかし、単純に考えればG7、G20で日本の総理がセンターに立つという姿はなかったことです。
飯田)中曽根さんは、強引に割り込んで行って真ん中に、という感じがありました。
有本)並み居る国々の首脳を相手に、日本が調整役に立ち、本当の意味でセンターに立つということは、いままでなかったのです。しかし、7年も総理をやっていて、安倍総理が総理であることが当然だった。つまり「総理大臣と言えば、安倍さん」ということになっていて、センターに立つ姿も当たり前になっていた。これは、終わるとわかって初めて、「当たり前に続くわけではなかったのだな」と思うわけです。そして「安倍ロス」と言っている方々もいる。それから、安倍さんにアンチとして激しくいろいろなことを言っていた人たちも、安倍さんがいなくなってしまったら、生きがいを失ってしまうのではないかという感じになります。ですので、今後もいろいろと大きな目標に向かって、ユニークな活動をされるのではないかと期待をしています。
飯田)より自由な立場で、ということですか?
有本)より自由な立場で、しばらくはいる。ただ、菅さんの政権で菅さんが組閣、人事をやって行くとしたら、安倍さんに何も任せないのかどうかはわかりません。この1ヵ月弱の間にも、病気が改善されて行くことはあり得るわけです。
飯田)そうですよね。内閣総理大臣ということになると毎日、いろいろな対応がある。
有本)本当に激務ですので、そうではない役割をひょっとすると、という可能性はゼロではないかなと思います。
長期の安定した政権を維持
飯田)よく「レガシーは何だ」ということを聞かれると思いますが、有本さんはどういうものだと思いますか?
有本)私は7年8ヵ月もの政権が続いて、日本がこれだけ安定した政権でいられたことそのものがレガシーだと思います。日本はその前から中曽根さん、小泉さん以外は、次々と総理が代わっていました。国際的にも国内的にも、「日本の総理大臣は誰だ?」という感じでしたが、そうではない、強く長い政権を続けました。安倍さんは特に、人気取りの政策というよりは、人気を下げてしまうような安全保障関連の政策を前に進めた功績は大きいと思います。なかでも集団的自衛権の限定的行使を可能にした、安保法制です。集団的自衛権の行使を可能にするという命題は、過去数十年、それを口にしただけで多くの政治家が政治生命を危うくされて来ました。それから特定秘密保護法、組織犯罪防止法という、人気取りとは程遠い政策を前に進めたことは大きいです。また、いろいろな問題もありましたが、アベノミクスで日本の経済が上向き基調に入ったというのも大きいですよね。
成しえなかった~憲法改正、拉致被害者の帰国
有本)ただ、安倍さん自身が目指した憲法改正、そして北朝鮮による拉致被害者を取り返すことはできませんでした。大きな意味で「日本を取り戻す」と言って、この政権は始まりました。これらについてはどうだったのか。憲法改正や、拉致被害者を取り返すことには結びつかなかった。日本を取り戻すというところが全部成しえなかったのは、残念だなと思います。
飯田)確かにご指摘の安保法制にしろ、特定秘密保護法にしろ、いままでの政権でやっていてもおかしくなかったことなのに、やって来なかった。その借金返済をまずしました。
国民を取り戻せなかったことが痛恨の極み
有本)そうなのです。その負荷がすべて、安倍さんにのしかかってしまった。本当に大変な仕事だったと思います。また、「日本を取り戻す」という言葉にはいろいろな意味がありますが、「国民を取り戻せなかったことが痛恨の極み」とおっしゃっていて、本当にその通りだったと思います。しかし、私自身も感動したのは、5年前のアメリカの上下両院議会での演説です。あれだけのスタンディングオベーションが起きた。これも当時、メディアではきちんと報道されませんでした。そして、同じ年に「戦後70年談話」を出し、安倍さんははっきりと未来永劫、子子孫孫、「謝り続けるようなことはやめにしなければならない」と。この一言だけは、本当によく言ったと思いました。ですので、それだけ日本が戦後という体制のなかで、敗戦国として不当にいろいろなくびきのなかに留め置かれた。これを1つでも外して行こうと、物理的なことだけではなく、精神面も含めて尽力したのは、業績として大きいと思います。わかりやすく憲法改正をしたとか、北方領土を返還したなど、そういうことがないためにレガシーがないかのように言われるのは、本当に気の毒だと思いますね。
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