アメリカの財政赤字が350兆円~この状態が続くとインフレに
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月4日 17時30分
![アメリカの財政赤字が350兆円~この状態が続くとインフレに](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_243038_0-small.jpg)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月4日放送)に元内閣官房参与で前駐スイス大使、現TMI総合法律事務所顧問の本田悦朗が出演。アメリカの財政赤字が過去最大の350兆円になるというニュースについて解説した。
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」
この状態を続けるとインフレに~GDP比でフラットにさせる経済運営が必要
アメリカ議会予算局(CBO)は9月2日、2019年10月~2020年9月までの2020会計年度の連邦財政赤字が、過去最大の3兆3000億ドル(約350兆円)になるとの予測を明らかにした。2020年度の財政赤字はGDP比16%の見通しで、19年度実績の4.6%から拡大し、第二次大戦以来の大きさとなる。
飯田)コロナ対策でお金を使った、ということだそうです。
本田)350兆円という数字そのものを問題にしても、あまり意味がないのです。財政は持続性があるかどうかということがよく議論になりますが、それを判定する方法は1つではないのです。最も重要なのは、これまで累積した財政赤字をGDPで割った値、つまりGDP経済規模に比較して、これまで累積した赤字がどれくらい大きいのか、この数字がいちばん大事だと思います。それで見ると、2020年度は98.2%、そして2021年度はここにある350兆という数字ですが、104.4%と増えているのですね。ですから、実はよくないのです。この状態を未来永劫続けると、必ずインフレになります。いまはコロナで経済活動を止めていますから、特殊な状況にあるということを我々は理解しなくてはいけません。ただ将来を見通すと、一刻も早く対GDP比でどうなるかということを、少なくともフラット、あるいはゆっくりと収束させる、落として行くという経済運営が必要だと思います。これまでは上がって来たのですから。
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27日、新型コロナウイルス感染症のワクチン研究が進む富士フイルムの子会社の工場を訪れ、マスクを着けるトランプ米大統領=2020年7月27日 ノースカロライナ州(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社
財政赤字をGDPで割り、フラットであれば問題ない
本田)日本においては、デフレ時代に累積債務をGDPで割った値が上がって来たのですが、アベノミクスで少なくともフラットにしました。最近は若干落として、収束しかかっていました。そのときにコロナが来てしまったのは、非常に残念だと思います。
飯田)よく国家財政を家計に例えて、だから借金はいけないのだ、すぐにでも0にしなくてはいけないのだと言う人がいますが、少しずつでも下がっていればそれでいいと。フラットでもいいということなのですね。
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」
マクロ経済はミクロの積み重なりではない~国家の財政運営は会社経営とは次元が違う
本田)はい。例えば、金利が1%としますね。ところが経済成長率が3%とすると、毎年2%ずつ改善するのです。GDPに比例する分だけ、税収が上がります。金利に比例する分だけ利払いがあります。しかし、税収の増え方の方が、利払いの増え方よりも多いのですから、放っておいても財政は改善するのです。ですから、皆さんに申し上げたいのは、「1人あたりの借金は」と言い始める人がいたら、その人は何もわかっていないと思っていただいてけっこうです。「1人あたりで800万円の借金があります」と言った瞬間に、「では1人あたり800万円の資産もある」のではないかと。借金というものは、その裏側で必ず誰かが資産を持っているはずなのです。国債は政府の借金ですが、国民の資産でもあるのです。同時なのです。ですから、表と裏の両方で判断しないと、すべて「1人あたりの」と換算してしまうのは、完全にマクロ経済学をわかっていない人の理論です。
飯田)確かに、我々も住宅ローンを組みます。借金は何千万とあるかも知れませんが、同じだけ家を持っている、資産があるということですよね。
本田)そういうことです。
飯田)国家財政においても同じだと。
本田)つまりマクロ経済というのは、ミクロの積み重なりではないのです。マクロ経済はマクロ経済の原理で動いているのです。それをわからないものだから、特に会社の経営者の方に多いのですが、会社の経営者はミクロの専門家です。会社の運営は難しいので、いろいろな財務状況や、マーケティングなどを考えて経営されます。しかし、国家財政の運営はまったく次元が違うのです。ですから、政府の関係審議会に、企業経営者として成功された人が入って来ると、入って来ること自体は否定しませんが、間違ったことを言う可能性は非常に高い。実際に間違っています。往々にして、間違った提言をされていることが多いです。
飯田)大体は、借金を返した方がいいと言う。企業経営者は借金があると不安だということでしょうか。
本田)そうですね。企業はリストラできます。それから、債務削減もできます。しかし国家はリストラできません。国家、政府は日本国民全員の面倒を見なくてはいけないのです。財政赤字が多いから日本国民をやめろ、なんて絶対に言えませんから。
飯田)それは棄民政策になってしまいますものね。絶対にやってはいけないことです。
本田)ええ。マクロ政策は難しいのです。日本全体をケアしなくてはいけない。根本的に違うのです。
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