セルビアとコソボが経済正常化合意~その背景にある「イラン包囲網」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月7日 17時40分
![セルビアとコソボが経済正常化合意~その背景にある「イラン包囲網」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_243386_0-small.jpg)
ホワイトハウスで経済関係正常化の合意文書に署名する(左から)セルビアのブチッチ大統領、トランプ米大統領、コソボのホティ首相(アメリカ・ワシントン)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月7日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。セルビアとコソボの関係について、そしてその背景にある世界情勢について解説した。
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合意文書に署名する米・セルビア・コソボ首脳=2020年9月4日 写真提供:時事通信
セルビアとコソボ、アメリカの仲介で経済正常化
セルビアのブチッチ大統領とコソボのホティ首相は、アメリカのトランプ大統領の仲介によってホワイトハウスで会談し、経済関係の正常化で合意した。コソボ紛争後も対立が続く両国の関係正常化に向けた第一歩となる。
飯田)旧ユーゴスラビアのセルビアのなかの自治州だったコソボは、激しい民族紛争を経て、2008年に一方的に独立を宣言しましたが、セルビアはいまも独立を認めておらず、対立が続いているという状況です。
国際社会へ復帰したいコソボとイスラエルとの関係樹立を望むアメリカの利害が一致
須田)コソボは独立を宣言しても、セルビアから認められていないということもあり、外交的には孤立した状況が続いていました。ですから、ある意味での国際社会への復帰、さらに言うと将来的なEUへの加盟を見据えたなかでの手続きになります。最終的には加盟することになるでしょうし、シェンゲン協定の枠組みのなかに入るという流れになるのでしょうが、空白地帯であるコソボの正常化を実現するために、アメリカが強く後押ししたということです。アメリカの顔でその流れに乗ったわけですが、コソボと言うと、大半の住民がイスラム教徒なのです。「イスラエルとの関係樹立」というところがアメリカの希望ですので、アメリカとコソボの利害が一致したということになるのだと思います。
飯田)今回、コソボはイスラエルと外交関係を樹立し、セルビアもエルサレムに大使館を移設することなどが盛り込まれています。これは、直接の合意とは関係ないところですものね。
UAEとイスラエルの国交樹立と同じ動き~イラン包囲網
須田)その前段として、アラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルとの外交関係樹立に向けての動きと、軌を同じくしているのだと思います。特にアラブの国々はそうなのですが、イラン包囲網というセンテンスのなかで、今回の一連の動きが起こっていると考えていいと思います。そして、イランの背後にはロシアと中国がいる。ですから、コソボなどの地理的な位置付けからすると、強くロシアを意識するということになるのだと思います。
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13日、米ホワイトハウスの執務室で発言するトランプ大統領(ロイター=共同)=2020年8月13日 写真提供:共同通信社
中東問題とイラン問題はワンパッケージで見なければならない
飯田)この話は、東ヨーロッパで動きがあるようなイメージでしたが、そうではなく、中東とイランとの向き合い方の延長線上にあるような話なのですね。
須田)そうです。その視点が、日本の報道では大きく欠けているのです。
飯田)独立したニュースのように受け止めてしまいますが、中東の話題とつながっているのですね。
須田)中東問題とワンパッケージで見ないと、「なぜここでイスラエルの話が出て来るのか」ということが理解できないのではないかと思います。
飯田)確かに、歴史的に言えばオスマン帝国など、いろいろなところが攻め入って来るような地域ではあるから、結びつきは強いのでしょうが、日本人のなかでは2つに分かれてしまいますものね。
須田)コソボが位置しているバルカン半島は、中東とヨーロッパの十字路だと、歴史で学んだではないですか。そういう地政学的な意味合いが強く出て来るのです。
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【日イラン首脳会談】イランのロウハニ大統領(左)を迎える安倍晋三首相=2019年12月20日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社
両方に顔の利く安倍首相が辞職してしまった
飯田)イランと対峙するということになると、世界的に見て、アメリカを含めての陣営と中国・ロシアとの陣営が、どんどん分かれる方向に行くわけですか?
須田)そのなかで1つ計算違いが起こっているのは、両方に顔が利く安倍首相が辞職してしまったということです。その役割を菅さんが果たせるのかというところが、世界の興味関心なのです。
飯田)外務大臣ではなく、首相でないとできないことがあるということですか?
須田)外務大臣でもいいのでしょうが、「では一旦休み」という状況になっていることが、いまの国際社会のなかでは懸念されているところです。
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