令和元年房総半島台風から1年~石井市長に訊く「南房総市の現状」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月9日 17時30分
【台風15号】 台風15号の影響で南房総市役所の敷地内には災害ゴミが多く集まっている。割れた屋根瓦、トタン、木材、濡れてしまった畳等が多く山積みになっていた=18日午前、千葉県南房総市
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月9日放送)に南房総市の石井裕市長が電話出演。2019年に台風15号によって災害を受けた南房総市の現状について訊いた。
現在も続く復旧作業
2019年9月9日に発生した令和元年房総半島台風(台風15号)の上陸から、9日で1年となった。同じく2019年10月12日に上陸した令和元年東日本台風(台風19号)の被害も含め、現在も各地で復旧作業が続いている。
飯田)今年(2020年)は9月6日から7日にかけて、台風10号が非常に強い勢力で九州地方に接近し、7月には熊本県を中心に甚大な被害をもたらした集中豪雨もありました。そして1年前の9月9日、台風15号が上陸し、房総半島を中心に大きな被害を出しました。この時間では、被害の大きかった千葉県南房総市の石井裕市長に電話をつないでいます。1年が経過した南房総市の現状などについて伺います。
石井)おはようございます。
建築関係の事業者不足が復旧に影響
飯田)あれから1年が経過しました。いまの状況をご覧になって、いかがですか?
石井)全体的に言えることは、まだ復旧途上にあるという状況です。具体的に言うと、被害を受けた住宅の復旧・修繕の状況は、感覚的に7割程度は終わっているかなと。農業用施設のビニールハウスなどは、5~6割程度が終わっているという状況で、残りはまだまだこれからですね。
飯田)ネックになっているのはどういうところですか?
石井)事業者さんの不足がいちばん大きいですね。
飯田)なるほど。住宅の修繕となると、やはり建築関係の仕事ということになりますが、そういう仕事が減って来ているというところがあるのですか?
石井)そうですね。そういう事業者さんの絶対数が、近年では減って来ている状況にありまして、地域内での事業者さんの数も減っています。
飯田)他の地域から来てもらうわけにもいかない事情があるのですか?
石井)全国的に台風被害が出ていますので、事業者さんも各方面へ行っているところもありますし、できるだけ普段からお付き合いのある事業者さんに頼みたいという心理もあるため、なかなか進まないですね。
農業も観光もコロナの影響で二重に受けた打撃
飯田)南房総というと、農業、あるいは漁業が基幹の産業でもあります。ここがダメージを受けているのは、市長としても頭の痛いところですよね。
石井)先ほど申し上げましたように、ビニールハウスの再建もまだ5~6割程度しか済んでいない状況ですし、今回はコロナも大きく影響しています。これから生産再開、販売というところにコロナが来ましたので、二重の打撃を受けています。
飯田)昨年9月のこの時期に台風被害があり、体制を整えて、年明けくらいからようやくという状態だったにも関わらず、コロナが来てしまったということですか?
石井)そうですね。ちょうどそのタイミングでした。
飯田)前にお話を伺ったときは、観光も1つの大きな産業で、しかも冬から春にかけては非常にいい時期なのだとおっしゃっていました。まさに稼ぎどきに来たわけですね。
石井)民宿や旅館等も被害を受けましたし、それによって修繕しなければいけない宿屋さんも、かなりありました。まだ終わらないところもありますけれど、まさに台風被害の修繕がようやく終わって、「さあ、これから再開だ」というところでコロナ禍になりました。
電力復旧のために東京電力の作業者が倒木を処理できる協定を締結
飯田)2019年の台風15号の場合では、復旧が遅れた「電力」というものが1つのキーワードとなりました。その後の対策は何かされたのですか?
石井)8月に東京電力さんと協定を結ばせていただきました。倒木等で、電力を復旧するための作業車が入って行けないという状況が多くあったのです。倒木の処理は、その道路が私道の場合は私道管理者が片付けなければなりません。県道であれば、県道管理者が片付けなければなりません。東京電力さんが直接倒木類を撤去することが、役割分担上できないという面倒な状況になっていました。
飯田)権利関係が難しいのですね。
石井)ですから、東京電力さんの作業車が自発的に行った先で処理できる、その処理にかかった経費は後から自治体の方が持つという形で、作業がスムーズに進むような協定を結ばせていただきました。
全国の市区町村で同様の問題が起きている
飯田)平時であればわからないことが、有事になってみて、そのような壁があるということに改めて気づかされたわけですね。これは南房総市だけではなく、全国津々浦々の市区町村で、必ず起こる問題ですよね。
石井)そうですね。災害時にボトルネックになる問題は、共通していると思います。
飯田)例えば法律、要するに国の対策や、あるいは県など、そういう対応はもっと包括的にやった方がいいですよね。
石井)そうですね。いま申し上げたような倒木の撤去などは、法律までいじらなくても、市町村と事業者さんとの協定でできる範囲ですが、被災した住宅の支援制度などは、法律を緩和する必要があるのではないですかね。
昨年の台風15号で通信手段が途絶した教訓から~衛星無線を市内に配備
飯田)今年も全国のどこかで、被害が起こる可能性があると思います。備えておくべきこと、市長がお気づきになった点などはありますでしょうか?
石井)私どもの地域では、昨年の災害後に通信手段が途絶してしまって使えませんでした。その教訓から対策を検討したところ、最終的には衛星無線が連絡を取るのに有効だということがわかりました。市内は広いのですが、だいたい偏在なく40ヵ所くらいに衛星無線を配備して、いざというときにそれぞれの状況を把握することができるし、連絡も取れるような体制を整えました。
飯田)なるほど。まずは情報が集まらないと、何を対策すればいいのかもわからないですからね。
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