「三権分立は香港に存在したことはない」とする中国の次の狙いは“尖閣諸島”
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月9日 17時45分
13日、インタビューを受ける林鄭月娥香港特区行政長官。「中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法」が香港特区で公布、発効され、香港が平穏を取り戻し「一国二制度」が安定的かつ長期的な発展を遂げるための堅固な基礎が打ち立てられた。林鄭月娥(キャリー・ラム)香港特区行政長官はこのほど、香港礼賓府(行政長官公邸)の応接室で、同法の実施などについて新華社記者の単独インタビューを受けた。(香港=新華社記者/李鋼)=2020(令和2)年7月13日、クレジット:新華社/共同通信イメージズ
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月9日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。中国政府が「三権分立は香港に存在したことはない」との談話を発表したという報道について解説した。
三権分立は香港に存在したことはない~中国政府が談話を発表
中国政府は9月7日、「三権分立は香港に存在したことはない」との談話を発表した。香港では1日の会見のなかで、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が三権分立を否定したことに民主派が反発。中国政府が明確に立場を示し、反発を抑え込むことが狙いとされている。
飯田)談話を発表したのは、中国の北京政府で香港政策を担当する、国務院の香港マカオ事務弁公室の報道官ということです。香港は行政が指導するという形で三権分立がないのだと、林鄭月娥行政長官も9月1日に言っていますし、それを中国政府側が裏付けたということになります。
高橋)言っていることは正しいと思いますよ。憲法や軍隊の上に中国共産党がいて、「その指導にすべて従うから三権分立も何もない」と言われたら、「それはその通りだ」ということです。そうあるべきかという議論をしたら、「そうではない」と言いますが。
飯田)これを見る限り、一国二制度はもうないということは明確ですね。
中国に返還された時点で香港に三権分立はなくなった
高橋)あえて強烈に言うと、中国に飲み込まれた段階からないのですよ。
飯田)1997年の段階から、もうないのですね。
高橋)国際的に嘘をついたか、国際社会が勘違いしたか、ということかも知れません。冷酷に話をすると、中国は共産党の支配で、共産党の下に憲法があり、その下に行政府があって、その下に司法などがあるという、わかりやすい構造なのです。
飯田)完全トップですからね。香港に関してはもう、いままでは少し隠していたけれど、あからさまに抑え込みにかかったということです。
国家安全維持法~日本での批判も違反になってしまう
高橋)国家安全維持法が域外適用であるということは、いまここで私が香港政府を批判していることも、法律違反になるということです。
飯田)中国の法律に、我々が違反してしまうと。
高橋)たまたま日本と中国、香港で犯罪人引き渡し条約がないため、私は連れて行かれないだけで、私が香港に行ったら、逮捕されても不思議ではないのですよ。
飯田)実際、それに近いことが起こっていて、8日にオーストラリアの記者2人が本国に帰っています。事情聴取を求められていて、領事館や大使館に避難していたということです。
高橋)それは香港にいるからです。香港にいれば郷に入っては郷に従えということで、国際原則なのです。
飯田)国内に関しては、と。
高橋)どんなに変な法律でも、郷に入っては郷に従えということなので、仕方がないのです。それが嫌であれば、香港から出るしかありません。今後、半分くらいの人は香港から出て行くのではないですか。
飯田)いろいろなところへの移住ですね。イギリスも市民権を渡すと言っています。
中国の核心的利益~次は尖閣諸島
飯田)中国は、内に対しては強い弾圧をしながら、外に対してはプレッシャーをかけています。中国とインドの国境で威嚇射撃があったという報道もあり、南シナ海や尖閣なども含め、手あたり次第ですね。
高橋)隣国全部ということです。もともと中国のなかには「核心的利益(Core Interest)」というものがあって、ウイグルとチベット、南シナ海、香港、そして台湾と尖閣なのです。だから南シナ海で起こっていることは、次に台湾と尖閣に来ます。台湾にすぐ来るのは難しいので、次は尖閣に来るのです。香港の話はすでに核心的利益ですから、一国二制度を否定するという意味で、完全に取り込まれてしまいます。もはや中国にとっては処理済みの案件なのです。ウイグルとチベットも処理済み、南シナ海も処理済みです。最近はベトナムがいろいろと批判していますが、これも中国としては処理済み案件です。オバマさんが口出ししなかったからです。国際社会が言わなければ、既得権を奪った方が勝ちです。
飯田)南シナ海のパラセル諸島や、スプラトリー諸島で埋め立てが始まったときに……。
高橋)あのときに言わなければダメですよ。
飯田)当時はオバマ政権でした。
高橋)そのときにやらなかったら、「もういいのね」という形になります。4年前に仲裁裁判所の判決がありました。あのときがチャンスだったのです。
飯田)フィリピンと中国が争った仲裁裁判では、フィリピンの主張が全面的に通って、「あれは岩だ」という判決が下った。どんなに埋め立てても岩なのだから、領土や領海なんて存在するはずがないと。
高橋)そのときに、アメリカが実力行使に出たら変わっていたと思いますよ。でも言わなかった。それでポンペオさんが、4年後に言ったということでしょう。4年後では遅いですよ。4年間は取り戻せません。
中国思想そのものの「地球も宇宙も俺のもの」
飯田)世界中が中国側につくのか、西側につくのかという構図が、徐々に鮮明になって来ました。
高橋)香港国家安全維持法の域外適用が強烈です。中国側につけば、域外適用を認めるということですから。域外適用を認めるということは、自国の主権を放棄することと同義です。西側諸国としては認められないでしょう。
飯田)ある意味で、内政干渉を許すということですよね。
高橋)完全にそうです。日本にいて、いまここで話していることが香港の法律に反していると認めてしまったら、内政干渉を許すということでしょう。要するに、国内では主権が及ぶから、我々も安心していられるのですが、そこに主権が及ばなくなるということです。ですから民主主義国であれば、中国側に立つのは難しいですよね。
飯田)そんなことをすれば、いろいろなハレーションが起こることはわかりますよね。
高橋)中華思想そのままに言ってしまったのですよ。「世界は俺のもの」ということです。
飯田)いままではそれを隠していたけれど、もはや隠さなくなっているのですね。
高橋)表に出てしまって、「宇宙も俺のもの」ということです。もちろん、「日本も俺のもの」です。
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