防災・危機管理アドバイザーの山村武彦~やってはいけない「防災の常識」!
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月11日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に防災・危機管理アドバイザーの山村武彦が出演。間違っている防災の常識について語った。
黒木)今週のゲストは防災・危機管理アドバイザーの山村武彦さんです。実は、いままで常識だと思っていた防災の知識が、いまでは間違っているケースがあるということですが。
山村)いままでは、地震時には机の下に身を隠す訓練もされていました。それは決して間違いではありません。時間がないときや、それしか方法がないときには、頑丈な机の下に身を隠すというのはいいのですけれども、古い木造家屋の1階であれば、そうではなく脱出した方がいいです。
黒木)そうですね。
山村)阪神淡路大震災のときは、亡くなった人の83.3%が建物の下敷きになって亡くなっているのです。ですから、特に1階にいた場合、古い木造で潰れる可能性があるのだったら、脱出した方がいいです。私は平時から「“我が家の安全ゾーン”をつくって欲しい」とお願いしています。我が家の安全ゾーンというのは、転倒・落下物の少ない、ガラスから離れた、閉じ込められない場所です。私の我が家の安全ゾーンは玄関です。玄関は比較的ものを置いていないし、いざというときは脱出できます。ですから、古い木造家屋でしたら、玄関を安全ゾーンに決めてみんなで行き、そしてドアを開ける。ドアを開けても、手を離したら閉まってしまいますから、閉まらないようにストッパーをかけたり、サムターンを回して閉まらないようにしてから靴を履く。木造家屋でも2階にいたら、慌てて1階へ降りないでください。家が潰れても、2階にいれば助かる確率が高いです。1階の方が危険度が高いわけですから、2階にいたら1階には慌てて降りない。いる場所によって行動が違うのです。安全ゾーンをいまのうちに準備して欲しいと思います。
黒木)車の運転中に地震が来た場合、すぐに車を降りるというのも間違っていると。
山村)降りる場所にもよると思いますが、実際には揺れている最中に急ブレーキをかけようとすると、走っていれば追突されたり、対向車もあるのでかなり危険です。緊急地震速報や地震の揺れを感じたら、ハザードランプをつけた上で、徐々に徐行して左に寄せて止まり、ラジオで情報を聞いてから行動を起こすということが大事だと思います。
黒木)そして災害が発生したら、すぐに避難所へ避難するというのも考えた方がいいということです。
山村)身の安全が確保できた元気な人は、家で暮らせるならば家で暮らした方がいいですよね。水害の場合なら、家が流される危険性があるときは、脱出して避難しなくてはいけないですけれども、安全な2階に垂直避難する。また避難する場合にも、避難所だけでなく、自宅が危険な場合は自治会館や親戚の家、車中避難など、分散避難も考える。自分や家族に合わせた避難方法を、事前に話し合っておくことが大事だと思います。
黒木)最後に山村さんから、リスナーの皆さんに一言お願いいたします。
山村)関東大震災から97年目が、9月1日の防災の日でした。この97年の間に、100人以上の犠牲者を出す地震が16回発生しています。日本はおよそ6年に1度、大地震に見舞われている国なのです。台風は毎年11個ほど接近し、3個が上陸します。そして、パンデミックは20年に1度発生している。いつ、どこで大規模災害や複合災害が発生してもおかしくないということを考え、せめて我が家の安全、家族の安全、自分の安全のために、事前に準備や対策をしておいてください。すべての防災対策は事前対策です。ぜひやって欲しいと思います。
山村武彦(やまむら・たけひこ)/防災・危機管理アドバイザー
■1943年、東京都出身。防災システム研究所所長。
■1964年、学生時代に遭遇した「新潟地震」でのボランティア活動を契機に、防災システム研究所を設立。
■その後、50年以上にわたり、世界中で発生する災害の現地調査を250ヵ所以上で実施。
■その知見を活かし、報道番組での解説や3000回以上の日本各地での講演、執筆活動などを通じ、防災意識の啓発に取り組む。また、多くの企業や自治体の防災アドバイザーを歴任し、BCP(事業継続計画)マニュアルや防災マニュアルの策定など、災害に強い企業、社会、街づくりに携わる。実践的防災・危機管理の第一人者。
■座右の銘は「真実と教訓は、現場にあり」。
■著書は『感染症×大規模災害 実践的 分散避難と避難所運営』(ぎょうせい)、『災害に強いまちづくりは互近助の力 ~隣人と仲良くする勇気~』(ぎょうせい)など多数。
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