「イスラエルとUAEの国交正常化」がもたらす中国への脅威
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月10日 17時35分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月10日放送)に作家で自由民主党参議院議員の青山繁晴が出演。9月15日に行われるイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化の合意文書署名式について解説した。
ワシントンで行われるイスラエルとUAEの署名式
8月にアメリカの仲介のもとで国交正常化に合意した、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)による合意文書の署名式が9月15日、アメリカの首都ワシントンで行われることがわかった。式典にはイスラエルのネタニヤフ首相、UAEのアブドラ外相、アメリカのトランプ大統領が出席する。
飯田)イスラエルとアラブ諸国というと、エジプトとヨルダンの2ヵ国で国交が結ばれています。ヨルダン以来、26年ぶりだということです。
青山)これはすごいことです。下世話な話をしてしまいますが、功労者はクシュナーさんということになっているでしょう。
飯田)トランプさんの娘婿の。
イスラム教の根幹にまで行く、画期的なイスラエルとUAEの国交正常化
青山)お嬢さんのイヴァンカさんという、とても目立つ方のご主人で、ユダヤ教の信徒です。いままではまったく評価されていませんでした。「背が高いだけで何も取り柄がない」というようなことを言った、政権内部の国務省の人もいました。それが、ユダヤ教を信じるという自分のルーツも生かして、ここまで漕ぎ着けた。クシュナーさんだけでできた話ではもちろんないのですが、四半世紀動かなかったことを動かした。当然、パレスチナ側は大ショックです。イスラエルとパレスチナとアラブ諸国とは、私も民間のころから付き合いが深いですが、これほどのことを大統領選挙の直前にできるとは誰も思っていませんでした。UAEは日本でも知られるようになったと思いますが、意外に経済力があるので、影響もあるのです。イスラム教のなかでもイランはシーア派で、サウジをはじめとする他の多数はスンニ派という、昔からある対立が、アメリカとイランの対立のために起き上がっているのです。UAEは狭いペルシャ湾を挟んでイランと向かい合っていますから、イスラエルと手を組まざるを得なかったということは、地政学的に見れば、しっかりとした話なのです。ただ何となく、タイミングを見て結びついたというものではなくて、根深いものですから、イスラム教の根幹にまで行く話でしょう。一時的な話ではないのです。
アメリカのユダヤ教の票はトランプ氏に流れる
青山)とりあえず、これでアメリカのユダヤ教の票は、トランプさんに流れるでしょう。合衆国の大統領選挙は世界を左右しますから、その影響もあります。見かけより大きな話なのです。私は「オールドメディア」と呼んでいますが、日本のメディアでもかなり報道されたので、そこは社会全体のレベルが高いなと思いました。
飯田)しかし、日本のメディアは大統領選目あてでぶち上げたのだ、という意見が多かったですね。
青山)大統領選目あてなのは当たり前です。ただ、先ほど申し上げた通り、構造的なものなのです。クシュナーさんは上級顧問という役職ですが、トランプさんが負けたら、それをすべて失います。しかし、この合意が変わることはありません。構造変化があったところに、サッとトランプ政権が手を入れたということです。
アラブ諸国の深い部分をうまく掬い取ったアメリカ~中国にとっては脅威
青山)アメリカは中国と向き合わなくてはならず、そう決心して体制も転換しましたから、中東に力を割けないという事情もあります。そして、第7艦隊だけでなく他の艦隊も、アジアの方に動かしたいという思いがあるのです。
飯田)確かに、中東辺りで睨みをきかせているはずだったアメリカが、だんだんこちらに来ているということで、トルコとギリシャの間でも角を突き合わせることがありました。
青山)上から抑えていたものがなくなると、必ずああなるわけです。アメリカはシェールガス、シェールオイルという自前資源を実用化した。日本ではなかなか自前資源の実用化が阻まれるけれど、アメリカはこれに何十年もかけています。それが背景にあって、逆に言うと中東、特にアラブ諸国は非常に不安なのです。自分たちの油にアメリカの関心がなくなる。いままで生きて来た根本的なものがなくなる。そうすると、イスラエルのような軍事強国と対立をするわけにはいかない、という深い問題もあります。そういう深い部分が絡まっているところを、上手に掬い上げたのです。トランプ外交最大の成果でしょう。そして、中国にとっては脅威です。これでアメリカの力が東シナ海、南シナ海に集中して来るのかと。実際にそうなります。
弱っているいまのロシアと中国にアメリカと向き合う力はない
飯田)イランのバックにも、ロシアや中国がいると言われています。こうなると、世界中が2つの陣営に分かれて行っているように見えるのですが。
青山)しかし、いまのロシアと中国に、イランを支えてアメリカと向き合う力があるかと言うと、ないです。特にロシアは急激に弱っています。だからプーチンさんは、余計に強く見せなくてはいけないのです。軍事力で言うと、アメリカ軍とは比較にならなくて、専門家の間では中国軍の10分の1くらいだと言われています。経済も依然として天然ガス頼みでしょう。そして、資源価格はものすごく安くなっています。アメリカ車はときどきいらっしゃいますけれども、ロシア製の車に乗る日本人はいないではないですか。車はその国の工業力を表すので、ロシアの地盤沈下が激しく、その分、中国はグッとのせるかと言うと、そんな状況ではないのですね。武漢熱を引き起こしてしまったこともあり、困っているから強い態度に出るわけです。
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