18~19歳 起訴後に実名解禁~本当の大人はどこからなのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月14日 17時40分
少年法の適用年齢引き下げの是非を議論する法制審議会(法相の諮問機関)の部会。少年の中で18~19歳を別扱いして厳罰化し、検察官送致(逆送)後に公判請求(起訴)されれば実名報道を解禁するなどとした答申案を承認した =9日午後、東京都千代田区
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月14日放送)に中央大学法科大学院教授の野村修也が出演。少年のなかで18~19歳を厳罰化し、検察官送致後に公判請求されれば実名報道を解禁するなどとした答申案を法制審議会の部会が承認したニュースについて解説した。
少年法、18~19歳を厳罰化~適用年齢20歳未満は維持へ
少年法の見直しを議論している法制審議会の部会は9日、要綱案をまとめた。更生を重視する原則を維持し、「20歳未満」とする適用年齢の引き下げについて結論を見送る一方、罪を犯した18~19歳を原則は検察官送致する犯罪の範囲を広げ、厳罰化する。起訴されれば18~19歳でも実名報道を可能とする方向も示した。
飯田)成人年齢もこれから引き下げになるなかで、少年法との整合をどうするのか、ということが議論されています。
野村)民法の成人の年齢を下げて、18~19歳になったら大人扱いでもいいのではないか、という考えがベースになって来たのですが、これに合わせて選挙権も下がりました。それならば、犯罪を犯したときも大人扱いでいいのではないか、という話が出て来たわけです。飯田さんはご自身が18~19歳のときに、自分が大人だと思っていましたか?
飯田)大学に入ったくらいで、世間的にも大人として扱われる感じはしていました。けれど、パスポートを取ろうとすると、親の承認や承諾書が必要だということがありました。要らないと思ってパスポートを取りに行き、必要だということで、慌てて父親の会社に駆け込んだことがあります。大学生になると大人扱いされてしまうので、勘違いしていました。
本当の大人はどこからか~議論が錯そうして決着がつかなかった
野村)人によると思うのですが、気分的には大人ですよね。ただ、本当の大人から見ればまだ子どもだという部分を、どちらに寄せるかという問題です。とんでもない罪を犯したときに、「大人であれば当然、刑事罰を受けるべき出来事だから、18~19歳になったら大人と同じ扱いにするべきだ。そうでないと犯罪を抑止できないのではないか」と言う人たちはたくさんいるわけです。しかし、他方において、「まだ十分に考えが至らなかったから、こんなことになってしまったのではないか」というのも、18~19歳のときの、羽目をはずしていろいろなことをやっていた自分を見返すと思うわけです。
飯田)そうですね。
野村)「本当の大人はどこからか」という問題は、微妙なところがあります。厳罰化という言葉になっていますが、どちらかと言うと「18~19歳でも普通の刑事事件として扱うべきだ」という声が、世の中的には多いのです。それに対して、人権を強く意識する人たちは「まだ幼い部分をきちんと見て、教育することが必要なのではないか」という声があり、法制審議会はまったくまとまらないのです。議論が錯そうしてしまっていて、決着がつかないのではないかという状況に至っていたわけです。
検察側に逆送致する適用範囲が拡大
野村)紆余曲折あったのですが、最終的には依然として少年法の20歳という基準を下げるという議論はしなかったということです。ただ、18~19歳のときに一旦は家裁に行くのですが、そこから検察に「刑事事件として扱ってください」と逆送致して来るものの適用範囲を広げることによって、かなりの犯罪については、普通の大人と同じように扱われる可能性が広がったということです。いまでも重大な犯罪については、家庭裁判所の判断で、検察側の方に「普通の刑事事件と同じように扱ってください」とすることはできるのですが、そのなかで必ず逆送致しなければならないと言われていたのが、「16歳以上で、故意に被害者を死亡させてしまったという事件は、必ず刑事事件として扱ってもらってください」ということが決められています。「必ず扱ってもらわなければいけない」という範囲を広げたということです。
刑事罰に科されるケースが増える~起訴されれば実名報道されることに
野村)今回の改正では、いままでの懲役を少し整理することになっています。新しくできる自由刑で1年以上の刑に該当するものは、原則、検察に1回戻して判断してもらうということにしようとしています。ただ、最低が1年となると、3ヵ月以上のような罪は除かれますので、少しは当たらないものもあるわけです。しかし、いままでのように「人を死に至らしめた」ということに比べると、例えば強盗や、強制性交と言いますが、昔の強姦罪のようなものについては、これまでは判断が分かれてケースバイケースだったところを、原則として検察に送らなければいけないことになるので、刑事罰を科されるケースが増えるということは言えると思います。
飯田)検察に逆送地され、そこから起訴された段階で、実名での報道も可能になるということですか?
野村)その通りです。これまでは、家裁で審議が付されたものについては、実名報道しないということになっています。逮捕したときについてのルールはなかったのですが、報道の方の自主規制という形で、名前を出さずに来ました。しかも、起訴されたからと言って報道されるわけでもなかったのですが、今後は起訴されれば、裁判は公開されていますから、傍聴に行けば誰なのかということがわかるので、報道してもいいだろうということになり、実名報道も可能になります。
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