柳亭小痴楽~師匠が3度も代わったワケ
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月21日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に落語家の柳亭小痴楽が出演。真打になるまでの経緯、また、落語の魅力について語った。
黒木)毎日さまざまなプロフェッショナルの方にお話を伺う「あさナビ」、今週のゲストは落語家の柳亭小痴楽さんです。去年(2019年)の9月に真打になられたということで、おめでとうございます。
柳亭)ありがとうございます。
黒木)真打になるには、どのくらいの修行期間が必要なのですか?
柳亭)前座、二ツ目、真打と階級が3つありまして、前座が入門を許されてから4~5年くらいです。休みなしで毎日師匠の家に行き、寄席に行って、師匠の家に帰って、寄席に行って……と、休みのない日が4年くらい続きます。
黒木)そのときは、噺の勉強はしないのですか?
柳亭)高座にもあがらせてもらいます。楽屋入りしてすぐに、「噺は教えたな、できるな、やれ」ということもありますが、師匠によります。4年間で一席だけしか教えず、「その一席で4年間、いろいろな高座をやれ」、「その噺で絶対に受け続けろ」という師匠もいれば、「何十席もいっぱい覚えて、いろいろなネタをできるようにしなさい」という師匠もいます。師匠によって教え方は違うのですが、基本は寄席に毎日行って、いろいろな師匠方のお世話をする修行が4~5年続きます。
黒木)それは、苦しい時代なのですか?
柳亭)そうですね。僕はその2年半で1度クビになって、いろいろな師匠方に方法を考えてもらい、何とか首の皮一枚つなげてもらったのですけれども。
黒木)もともと、お父様がやっていらしたということで。
柳亭)そうです。父親が噺家でした。最初の師匠は文治師匠という方で、引き取ってくれたのですが、「無理、ダメ、お前」と言われ、「お父さんのところに返すから、そっちで頑張りなさい」という、ギリギリ噺家を辞めなくてもいいという判断でした。
黒木)師匠が2人いらっしゃるということですが、しくじった内容はどんなことだったのですか?
柳亭)だいたいが寝坊でした。いちばんひどかったときは、「明日の12時に来なさい」と言われて、「わかりました」と了解し、携帯を見て12時に師匠の家に行き、「いま来ました」と言ったら、「それは昨日のことだ」と返されました。どういうことだと思ったら、約束していたのは行った日の前日で、丸々1日以上も寝てしまっていたのですね。文治師匠もそのときは怒らずに、「病院に行ったほうがいいな」と言われました。
黒木)それは噺のネタではないですよね?
柳亭)ネタではありません。
黒木)それは大物ですね。それでお父さんのところへ戻り、そのあとお父さんの弟弟子の方へ。
柳亭)父親が死んで、その弟弟子に頼むという形になりました。楽輔という師匠です。3人目の師匠になります。
黒木)それでも、噺家になりたいという志を持っていらしたのですね。
柳亭)普通、師匠を変えるというのはあり得ないことです。大昔はプロフィールを見ているとけっこう変わっていたりするのですが、いまの時代ではあり得ないので、師匠が変わるなら辞めなければいけないと思っていたのですが、上の師匠方が「やりたいのであれば」と話し合ってくださって、残していただいたのです。
黒木)その熱意は、お父様が落語家でいらして、その志を継ぎたいということですか?
柳亭)親父のおかげで落語を知れたし、この世界に入れて、残ることができたので、親父のことは関係ないと言ってはいけないと思いますが、親父を追いかけたいというわけではありません。「僕は僕、親父は親父」であり、同期の人たちも「俺は俺、お前はお前」という感じにずっと考えていたので、あまり意識をしないようにしていました。入門のときは16歳だったので、周りからことあるごとに親父のことを言われ、それが悔しくて、「俺を見て」という思いがあったのでしょう、あるときからそっちを考えるのをやめてしまいました。
黒木)小痴楽さんの思う、落語の魅力とは何でしょうか?
柳亭)年々、落語を好きになっているのですが、落語に出て来る登場人物がカラッとしているのですね。現実にいるはずなのに、そんなに会わないなという感じで、「いいな、こんなにヘラヘラしていて」という人たち。聞いているお客さんも、そういう人たちと触れ合っている気分になれるのだと思います。登場人物の人柄が、落語の魅力だと思います。
柳亭小痴楽(りゅうてい・こちらく)/落語家
■1988年12月、5代目・柳亭痴楽の次男として誕生。本名:沢辺勇仁郎。
■2005年10月、16才のとき、入門を申し出た途端に父が病に伏したため、2代目・桂平治(現:桂文治 )へ入門。「桂ち太郎」で初高座。
■2008年6月、父(痴楽)の門下に移り「柳亭ち太郎」と改める。
■2009年9月、父(痴楽)の没後、父の弟弟子・柳亭楽輔の門下へ。
■2009年11月、二ツ目昇進を期に「3代目 柳亭小痴楽」を襲名。その後、二ツ目の若手落語家と講談師11人によるユニット「成金」を結成。メンバーには講談師の6代目 神田伯山ほか、昔昔亭A太郎・瀧川鯉八など。
■2011年2月、「第22回 北とぴあ若手落語家競演会」奨励賞を受賞。
■2015年、2016年と2年連続「NHK 新人落語大賞」ファイナリスト。
■2019年9月、真打に昇進。同時に6代目・柳亭痴楽襲名の話もあったが襲名せず。
■ユニット「成金」については、メンバーの誰かが真打になったときに終了するとされていて、小痴楽の真打昇進前日の2019年9月20日に終了。全メンバーが出演する年末開催の「大成金」は継続。
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