「所得税未納報道」が逆にトランプ氏に有利に働く~アメリカ大統領選

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月30日 17時30分

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ホワイトハウスで指名受諾演説に臨むトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月30日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。トランプ候補とバイデン候補によるアメリカ大統領選挙について解説した。

ホワイトハウスで指名受諾演説に臨むトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年8月27日 写真提供:時事通信

アメリカ大統領選~オハイオ州で初めてのテレビ討論会を実施

11月に控えるアメリカ大統領選挙、共和党のトランプ候補と民主党のバイデン候補による初めてのテレビ討論会が、日本時間の9月30日午前、オハイオ州のクリーブランドで行われる。2人の候補が意見を戦わせるのは初めてで、90分間にわたり、6つのテーマで討論を行う。

飯田)いよいよ直接対決、討論会が始まります。

奥山)トランプさんの無茶苦茶な議論に対して、まともなバイデンさんがどう受け答えるのかというところです。バイデンさんは討論が苦手です。奇抜なトランプさんとバイデンさんがどう戦うのか、そのマッチングが楽しみです。

飯田)派手なヒールと地味なベビーフェイスという感じですか?

18日、オンラインの米民主党大会で、司会役を務める女性の後ろの画面に映し出されるバイデン前副大統領とハリス上院議員の写真(ゲッティ=共同)=2020年8月18日 写真提供:共同通信社

討論会で選挙の流れが決まるということはない

奥山)プロレスに例えるとそんな感じになるのかも知れません。大統領選において、討論会が重要であると言われています。しかし、討論会を学問的に調べた人がいて、討論会で流れが決まるかどうかについては、あまり関係がないということです。

飯田)「第1回討論会の頭30分ぐらいで大統領選が決まってしまう」というようなことを言われたりしますが。

奥山)ところが、綿密に調べると、それほどインパクトはないのではないかという研究が出ています。

飯田)投票行動に直接の影響はないと。

ホワイトハウスで記者会見するトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年7月28日 写真提供:時事通信

国内の分断が激しくなっているアメリカ~このままでは外交に余力を出せなくなる

奥山)それ以前の、現職の実績などが作用すると言われています。これに関して気になっているのは、アメリカが討論会を行っている状況のなかで、アメリカの政治思想の分断、分裂が激しいものになっているということです。アメリカのメジャーなメディアには出て来ませんが、地方の現地メディアの情報がネットにあがっていて、YouTubeでも観ることができます。そこでは、カウンター・デモも含めて、デモ隊同士が暴力沙汰になっていることが報道されています。車で相手のデモ隊を轢く、または機関銃AR-15という殺傷力の高いもので撃ってしまうようなことが起こっています。撃ち合いをする世界が展開されているのです。これほどの分断状況を、次の大統領がまとめることはできるのでしょうか。また、そのような状況が続けば、下手をすると、アメリカが内戦的なことになって、外交の方に余力を出せなくなるのではないかということが心配されます。

飯田)内向きというのが、意図的に戻って行くのではなく、実象として、それだけで限界にまでなってしまうのですね。

奥山)それがいちばん恐れているシナリオです。

飯田)そうなると、かつて南北戦争がアメリカでありました。あのように州で別れるより、さらに細かな分断になるのでしょうか?

奥山)私もどういうシナリオになるかはわかりませんが、内部で抱えている火種が強くなり過ぎてしまい、外に向かう、例えば中国を懲らしめるという方向に行かなくなってしまう。我々日本は安全保障をアメリカに頼っている部分もありますので、中国に対抗してくれないと困ります。また北朝鮮に対しても、何かあったときに、アメリカにお願いしても来てくれないという状況になると、厄介な問題になります。

24日、米共和党大会で親指を立てるトランプ大統領(左)とペンス副大統領=2020年8月24日 ノースカロライナ州シャーロット(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

トランプ氏の節税はスマート~所得税未納報道

奥山)もう1つはニューヨーク・タイムズが出したスクープ記事で、「トランプ大統領が就任前の15年間のうち、10年間にわたって所得税を納めていない。また2016年、2017年の納税額も、日本円にして8万円ほどだった」というものです。アメリカのリベラル側のメディアは、トランプさんのことを「とんでもない」と言っています。ここで指摘したいのは、それとは逆で、トランプさんが国税を納めていなかったことは、「頭がいい」ということで、むしろ国民の評価が上がるということです。

飯田)そうなのですか。

奥山)アメリカの文化として、連邦政府にお金を払わないことは、「えらい」ということになるのです。日本では「納税は国民の義務」とされていますが。

飯田)社会の授業でも習いますね。

奥山)アメリカではそういうことはなく、「連邦政府が国民からお金を摂取するのを回避することは、頭のいい人間がする」という考えです。

飯田)連邦政府にお金を持って行かれるのはマヌケな奴だと。

奥山)2016年にトランプさんがヒラリー・クリントンさんと討論したときに、「あなたは政府に税金を納めていないではないか」と言われました。そこでトランプさんは、「払わないのは俺がスマートだからだ」と切り返し、喝采されました。納税をするのはスマートではないという認識がアメリカ国内にはあります。トランプさんは、それをアピールできるという現実があります。

飯田)もともと独立自主というか、政府の縛りはいらないという人が集まっていますよね。

奥山)それだけに、政府にお金を取られるのは悪という考え方があります。むしろ、納税しないトランプさんを見習いたいという人たちがいることを、我々は忘れてはいけません。これはアメリカ文化の1つです。

「スーパーチューズデー」で予備選が行われた米カリフォルニア州ロサンゼルスでの集会で、聴衆に笑顔をみせるバイデン前副大統領。スーパーチューズデーで獲得代議員数を積みあげ、「本命」に返り咲いた=2020年3月3日 写真提供:産経新聞社

追い上げてはいるが、まだ厳しいトランプ氏の状況

飯田)いまのところ、世論調査ではバイデンさんがリードとなっていますが、まだわかりませんか?

奥山)追い上げてはいますが、まだ厳しいでしょう。コロナで20万人が亡くなっていますし、経済は落ち込んでいます。株価は上げていますが、雇用関係が不安定です。アメリカの有権者は、前の大統領がやった仕事によって、自分たちの生活がどれだけ向上したかというところを見ています。トランプさんは状況的に厳しいです。

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