麻酔で歯石除去を決意! 愛犬を全身性の疾患から守るために
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年10月24日 21時50分
【ペットと一緒に vol.217】by 臼井京音
筆者は11歳の愛犬に、動物病院で全身麻酔による歯石除去をしてもらいました。さまざまな面で悩みましたが、歯のケアをしてよかったと思っています。
今回は、筆者の体験談と歯石除去手術で得た学びを紹介します。
11歳まで病気知らず
筆者は高齢のノーリッチ・テリア2頭と暮らしています。
異物誤飲や靱帯損傷や乳腺腫瘍で手術を複数回経験している15歳半のリンリンと違い、11歳半のミィミィは、これまで下痢などの体調不良で病院にかかったことすらないほどの健康体です。
リンリンは手術の際、ついでに歯周病の治療として歯石除去と歯のクリーニングを数回行ってもらいました。けれども、ミィミィにはそのような機会はありませんでした。
デンタルケアをしないと、3歳以降の犬の8割が歯周病を患うと言われています。人間と犬では口腔内のpHが異なるため、犬に虫歯はほぼできませんが、歯周病にはなりやすいのです。
筆者はミィミィには子犬期から歯ブラシと犬用歯磨きペーストを使い、歯と歯茎の間の汚れを掻き出すケアを心がけて来ました。
ところが、ミィミィが2~3歳のころに筆者自身の妊娠出産があり、歯磨きをさぼりがちに。すると、やはりミィミィの歯には歯石がつき始めました。
無麻酔の歯石除去は無意味!?
そのまま数年が過ぎ、歯石を気にしながらも歯磨きをたまに行ったり、歯磨きが面倒なときはデンタルスプレーだけは続けていました。
「ミィミィもシニア犬になったから、リンリンのように病気での手術もそろそろあるのかな……。何度も麻酔をかけるのは少し心配だし、手術が必要な病気になったら、そのときに歯石を取ってもらおうかな」
そんなふうに考えながら月日は流れ、気づいたらミィミィも10歳に。10歳半での詳しい健康診断でも内臓などの異常はなく、歯周病だけを指摘されました。
犬専門誌の20年間のライター経験のなかで、筆者は獣医師から無麻酔歯石除去はすすめられないと聞いて来ました。
犬のすべての歯石を除去するには1時間前後かかります。また、歯石を取った歯には歯垢が付着しやすくなるので、それを防ぐためにスケーラーで表面をツルツルに磨かなければなりません。それらの作業中、犬がじっとしているのはむずかしいでしょう。
「そもそも、肉眼で確認できる歯の表面の歯石だけを取っても、口臭は軽減するかも知れませんが、歯周ポケットの歯垢と歯石は残りますからね。麻酔をかけずスケーラーで歯石を除去するだけでは、歯周病の治療にはなりません。歯の表面の研磨もなしでは、逆に歯垢や歯石がつきやすくなりますし、施術中に犬が動いて口腔内を傷つけるケースも少なくありません」と、筆者が取材した獣医師は口をそろえます。
そのため、ミィミィにも無麻酔の歯石除去を行うという選択肢はありませんでした。
歯周病はただ単に歯肉の炎症にとどまらず、口腔内の細菌が全身に及んで内臓疾患の引き金になると、人間同様に近年は犬や猫でも言われています。
リンリンは数年前、歯周病菌が鼻腔内に及び、鼻から膿を出したりくしゃみで苦しんだりした経験があります。やはり、そろそろミィミィにも獣医師による歯石除去が必要かな……、と筆者は1年ほど悩んでいました。
歯石除去手術を決意
犬の歯石除去だけの手術は、病院や抜歯の有無などによって異なりますが、日帰り入院で費用が4万~9万円ほどかかります。正直なところ、実はその費用もネックになっていました。
けれども、現在、心臓と腎臓と膵臓を患っているリンリンを見つめながら、「よし。ミィミィの内臓に歯周病菌などが悪影響を及ぼす前に口腔内をキレイにしよう!」と、筆者は決意したのです。
動物病院に電話をすると、まずは血液検査とレントゲン検査などの術前検査が必要とのこと。ちょうど健康診断をしてから1年ほど経っていたので、健康診断も兼ねられる検査になると思いながら、筆者はミィミィを病院に連れて行きました。
検査結果は、どこも異常なし。問題なく手術が行えるとのことでした。
「だけど、歯石除去をしてから毎日歯磨きをしないと、またすぐ歯垢と歯石がつきますからね。安心せずケアを継続することが大切ですよ」と、獣医師から伝えられました。「はい!」と、筆者も気持ちを引き締めたのは言うまでもありません。
数日後、「がんばってね」とミィミィを動物病院に連れて行きました。その日の夕方、無事に手術が終わったと聞き愛犬を迎えに行きました。
抜歯が必要な歯もなかったとのこと。ミィミィも元気そうで、安心しました。ミィミィの口臭が、ほとんどなくなっていたのにも驚きました。
さぁ、きょうもまた、歯磨き頑張るぞ! ミィミィ、健康で長生きしてね。
連載情報
ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。
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