日英がEPA協定に正式署名~失われつつある「マルチなインターナショナリズム」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年10月25日 11時40分
日英経済連携協定(EPA)に署名した茂木敏充外相(右)と英国のトラス国際貿易相=23日、東京都港区の飯倉公館[代表撮影]
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月23日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。日英が正式に署名した経済連携協定(EPA)について解説した。
日英EPA~茂木外相とトラス国際貿易相が署名
EPAとは“Economic Partnership Agreement“の頭文字を取ったもので、経済連携協定と訳す。特定の国や地域同士での、貿易や投資を促進するためのさまざまな約束事を決める条約である。日本とイギリスの両政府は10月23日、東京都内で経済連携協定(EPA)の署名式を開いた。協定は関税の削減などで、日本と欧州連合(EU)とのEPAの内容を概ね踏襲したもの。茂木外相とトラス国際貿易相が署名し、2021年1月1日に協定を発効するよう協力することで一致した。
飯田)茂木外務大臣と、イギリスのトラス国際貿易大臣が署名したということです。
宮家)イギリスがEUから離脱をしつつあります。それはイギリスを拠点としてヨーロッパ大陸を見て来た日本の産業界にとっては、大変な問題なわけです。ですから、法的にきちんとした権利義務関係をしっかりしておかなくてはいけないので、当然こうした協定はイギリスも必要だし、日本も必要なものです。もちろんEPAもWTOの協定のなかに位置づけられていて、そうしたアプローチは間違いではないのですが、昔だったら、2国間の日英などと、こんな細かいことをやらないで、WTOでドーハ・ラウンドとか、ウルグアイ・ラウンドというような自由化交渉(ラウンド)を、みんなでドーンとやったものですよ。
マルチなインターナショナリズムが変わってしまった
宮家)それがもう今はWTOの「ダ」の字もないでしょう。そして、EUも崩れて行く。少なくともイギリスは出て行くわけで、昔のマルチなインターナショナリズムというのがすべて変わってしまったということです。第二次大戦後につくられたいろいろな枠組みが、少しずつ変わって来ているのだという気がします。昔はEPA協定をやるなんて本当に少なかったのですが、今後はこれが主流になって行くのでしょう。よきにつけ悪きにつけ。
飯田)地域的なところまでが限界という感じですかね。
守って来たものを維持できるように努力を続けなくてはいけない時代になってしまった
宮家)WTOをうまく活用できなくなった1つの理由は、中国が入ったことだと思いますが、中国だけのせいではありません。TPPから抜けたりするわけですから、アメリカもやりたい放題ですよね。昔のようなマルチの経済の枠組みで、「権利義務関係をみんなで決めて、自由化を進めて行きましょう」というような状況は変わってしまいました。中国は中国で自由化をする気はないし、アメリカはアメリカで「アメリカファースト」と言って勝手なことをやっている。いま日本は踏ん張りどころです。TPPも日本が頑張ってまとめて、11か国で維持したというのはよくやったと思いますが、こういうEPAをとにかくやって、いままで守って来たものを、少しでも維持できるように努力を続けなくてはいけない時代になってしまったということでしょう。
TPPにも色気を見せるイギリス
飯田)イギリスはTPPにも色気を見せているという話も出たりしますが。
宮家)イギリスは海洋国家で貿易も盛んな国だし、昔は香港にもいたのですから、彼らがアジアに対して関心を持つことは、十分あり得る話です。違和感があるかも知れませんが、これからはそういう形で、イギリスや他の国々がアジアに向かって来ますよ。それはアジア太平洋地域が発展しているからです。
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