落合恵子~「クレヨンハウス」をつくるきっかけになった欧米での体験
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月3日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、作家で児童書籍専門店「クレヨンハウス」主宰の落合恵子が出演。「クレヨンハウス」をつくることになった経緯について語った。
黒木)今週のゲストは、作家で子どもの本の専門店「クレヨンハウス」を主宰している落合恵子さんです。「クレヨンハウス」は今年(2020年)の12月で45周年だということです。
落合)早いですね。
黒木)オープンされたのは1976年12月です。45周年を迎えて、どんな気分でいらっしゃいますか?
落合)気持ちとしては25周年くらいですね。私自身は75歳ですが、気分としては、40代から50代初めのときとあまり変わっていません。45周年と言われて自分で驚いています。
黒木)取材で行かれた欧米で海外の子どもの本に出会ったことが、「クレヨンハウス」を始めるきっかけだと伺ったのですが。
落合)当時は、海外というと欧米でした。欧米に行くと、1つの街に必ず1軒、古くからある子どもの本屋さんがあるのです。その古い本屋さんの真ん中に古い机があって、古い椅子が置いてあって、そこに近所のお父さん、お母さんが来て、「自分が小さいときにこの本を読んだよ」という説明を子どもにしているのです。そこに入って行ったら、子どもが走って来て、「知ってる? うちのパパって昔は子どもだったんだよ」と私に言うのですよ。子どもにとっては、きっとそうなのでしょうね。「この椅子に座って、この本を読んでいた」という本を子どもたちに教えている。「ああ、いいな」と。少し照れ臭いけれど、もし「文化」という言葉を使うならば、「これが文化だろう」と、とても感動して帰って来たのです。
黒木)いいですねえ。
落合)当時を振り返ると、戦後ははるか向こうに行って、みんなが「お金はすごい」という、拝金主義、バブルの時代に入って行こうとしているのに、この文化は日本にはない。建物にはたくさんお金をかけるけれど、「子どもたちの未来や明日にもっとお金をかけていいよね」という気がしたのと、私が子どものころは、本があまりなかったので、1冊の本を買ってもらうと毎日毎晩読んでいた。そういうことを思い出して、「好きな本に出会う幸せ」を体験して欲しいと思ったのです。自治体にも、「そういうものをつくりませんか」と声をかけたのですが、なかなか動くところがありませんでした。それでも、子どもの本の専門店はどうしても欲しくて、「ないならつくろう」と決めてしまったのです。
黒木)31歳でしたよね。
落合)はい。初めて海外で子どもの本屋さんを見たときに、そこにあった古いテーブルが本当に素敵でした。何十年か経ったら、いまここにあるテーブルも古くなって、「うちのパパが、うちのママが」と言う子がきっと出て来てくれるということを、ずっと夢見ていました。いまは「うちのおじいちゃんが、おばあちゃんが」という時代になりましたが。
黒木)欧米で見られた「うちのパパは子どもだったんだよ」という景色が、「クレヨンハウス」でまた、繰り返されているわけですね。
落合)そうなのですよね。
黒木)いろいろな人たちの人生を垣間見ていらっしゃって、その皆さんの幸せ、笑顔を「クレヨンハウス」のなかでご覧になっているのですね。
落合)あるとき、事情があって学校に行けなくなってしまった男の子が通って来て、ガブリエル・バンサンという女性作家が描いた『アンジュール』という絵本を毎日読んでいました。捨てられてしまった犬の物語なのですが、毎日毎日読んでいたのです。それを読んでいた彼も、もう高校生の息子さんがいらっしゃいます。
落合恵子(おちあい・けいこ)/作家・クレヨンハウス主宰
■1945年、栃木県宇都宮市生まれ。
■1967年、文化放送にアナウンサーとして入社。「セイ!ヤング」「こんばんは、落合恵子です」などでパーソナリティを担当。
■1974年に文化放送を退社。本格的な文筆活動を開始。
■海外取材で子供の本の専門店を見たのがきっかけで、1976年、本をはさんで大人と子どもが向かい合う場として児童書籍専門店「クレヨンハウス」を開設。
■東京都渋谷区神宮前に開店。1986年に港区北青山へ移転。約5万冊の児童書、オーガニックレストラン、子どもと大人の本のフロア、安全安心な玩具、女性の本やオーガニックな生活必需品などを扱う。
■1991年には大阪府吹田市に「クレヨンハウス・大阪店」をオープン。
■クレヨンハウスが絵本や児童書を月に1度届けるサービス「絵本の本棚」も人気。
■その他、総合育児雑誌『月刊クーヨン』、オーガニックマガジン『いいね』の発行人も務め、絵本の刊行や翻訳も多数手がける。
■近著に『泣きかたをわすれていた』『明るい覚悟』などがある。
■2020年、第55回ENEOS児童文化賞を受賞。
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