落合恵子~小さいときに「大好きな1冊」に出会った子は、その感触を忘れない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月4日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、作家で児童書籍専門店「クレヨンハウス」主宰の落合恵子が出演。子どもの読書離れについて語った。
黒木)今週のゲストは、作家で子どもの本の専門店「クレヨンハウス」を主宰している落合恵子さんです。最近はインターネットや動画配信があふれておりますので、紙の本に触れる機会が少なくなって来ていますが、読書の習慣が薄れていると思われますか?
落合)小さいときに「大好きな1冊の本」に出会った子というのは、そのあと、インターネット、動画、SNSがあるという時代を経ても、最初に出会った1冊の本の感触やページをめくる感覚は記憶に残ると思います。ですから、私はあまり世のなかが言うほど、本が読まれなくなってしまうことはないと思います。それよりも、大人は、その子が本当に好きな1冊に出会うための環境づくりをするべきだと思います。
黒木)本当に大好きな1冊が見つかった人は、環境が変わっても、きっとまた本を読み始めるだろうと。
落合)そうだと思います。そういう意味では、本を子どもが最初に読むのは、誰かの膝の上かも知れないし、ベッドかも知れない。そのとき、必ず大人がそばにいるわけです。その膝の感触や、大人の息遣いなども読書体験のなかに入っているのだと思います。それは大事にしたいですね。
黒木)私は絵本や本を買ってもらえませんでした。お友達の家に行くと、本や絵本がたくさんあるので、「早く読みたい」という気持ちが芽生えて、小学校に上がると、図書館に行くことが趣味のようなものになりました。ですので、膝の温もりも知らないのですが、それはそれで「やっと読めた」という喜びがあったのです。いまも本屋さんで本を買うと、「私のために自分で本を買っている」と思い、すごく嬉しいですね。
落合)私もいまでもそうです。自分で書店をやっているのだから、「クレヨンハウス」に行って読めばいいではないかと言われるのですが、やはり気に入ると、どうしても買いたいのです。「これは買って帰る」と言って買いますね。
黒木)やはり、子どものころから本を読まれていたのですか?
落合)私は1人でいるのが好きな子どもだったのです。一人っ子だったというのもあると思うのですが、人見知りでお友達になりたいけれど、自分から言えない子でした。ですので、いちばん近くにあったのは本ですね。あとはチロという柴犬がいて、彼とも親友でしたが。
黒木)人見知りで、しかしラジオのパーソナリティという。
落合)パーソナリティは、就職すると仕事ですので、「嫌です」とはもちろん言えませんから。人と接することなど、とてもいい勉強をさせていただきました。当時はメールもなくて手紙を通してでした。でも、葉書や手紙というクッションがあったのです。そうでなかったら、きっと辛くなっただろうという気がします。深夜放送もやったし、天気予報もやりました。私が深夜放送をやっていたころは、大学に進学する子どもは13%くらいしかいなくて、ほとんどの子は就職していました。ラジオを聴いている方も、若者が多かったのですが、さまざまな背景を持っていらっしゃる人たちでした。それを現実に、手紙を通して教えていただきましたね。
落合恵子(おちあい・けいこ)/作家・クレヨンハウス主宰
■1945年、栃木県宇都宮市生まれ。
■1967年、文化放送にアナウンサーとして入社。「セイ!ヤング」「こんばんは、落合恵子です」などでパーソナリティを担当。
■1974年に文化放送を退社。本格的な文筆活動を開始。
■海外取材で子供の本の専門店を見たのがきっかけで、1976年、本をはさんで大人と子どもが向かい合う場として児童書籍専門店「クレヨンハウス」を開設。
■東京都渋谷区神宮前に開店。1986年に港区北青山へ移転。約5万冊の児童書、オーガニックレストラン、子どもと大人の本のフロア、安全安心な玩具、女性の本やオーガニックな生活必需品などを扱う。
■1991年には大阪府吹田市に「クレヨンハウス・大阪店」をオープン。
■クレヨンハウスが絵本や児童書を月に1度届けるサービス「絵本の本棚」も人気。
■その他、総合育児雑誌『月刊クーヨン』、オーガニックマガジン『いいね』の発行人も務め、絵本の刊行や翻訳も多数手がける。
■近著に『泣きかたをわすれていた』『明るい覚悟』などがある。
■2020年、第55回ENEOS児童文化賞を受賞。
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