はやぶさ2、カプセル帰還まであと1ヵ月あまり……いよいよ大詰め
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月5日 17時20分
「報道部畑中デスクの独り言」(第217回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、カプセル帰還まで1ヵ月あまりとなる探査機「はやぶさ2」について—
約6年にわたる「はやぶさ2宇宙の旅」……小惑星「リュウグウ」からの粒子が入ったカプセルが帰還する2020年12月6日まで、あと1ヵ月あまりと迫りました。
JAXA=宇宙航空研究開発機構によると、カプセルを搭載した探査機「はやぶさ2」の状況は正常で、カプセル帰還に向けた軌道修正も順調だということです。軌道修正により、地球に最も接近する高度が約400kmから330kmに近づきました。そのぶん、カプセル着地の確実性がより上がったということになります。
「いよいよだなと身の引き締まる思い。一方でワクワクもしている。大きな成果を上げることもできた。“お宝”もきっと入っているだろう、星のかけらを見てみたい……」
JAXAの津田雄一プロジェクトマネージャ(以下、プロマネ)は10月29日のオンラインによる記者会見で、改めて心境を語りました。
カプセル到着予定地のオーストラリアに向かう回収スタッフ73人のうち、先発隊14人は11月1日に出発、本隊59人はそれから8日遅れて9日に出発する予定です。新型コロナウイルスの感染拡大は、ここにも影を落としています。
感染防止のため、スタッフはまず、日本国内のホテルに隔離、アルコールによる消毒はもちろんのこと、PCR検査を2回パスして出発の許可が得られます。チャーター機で羽田からアデレードへ向かい、さらに2週間の隔離の上でウーメラ到着という入念な対策がとられます。
はやぶさ初号機のときは100人近くが現地に向かいましたが、今回は広報スタッフなどを削減し、73人という回収に必要な最小限の人員となりました。
カプセル回収にも細心の注意が払われます。カプセルはパラシュートが開いた後、通常、ビーコンと呼ばれる信号を発信、マリンレーダーも駆使して着地場所が特定されますが、今回はドローンも投入され、空撮による画像解析も行われます。
回収作業におけるオーストラリア側との交渉にも時間を要しました。昨年(2019年)は数回現地を訪れていましたが、今年はコロナ禍で連絡はすべてメールとオンライン、ようやく今年夏に許可が下りました。JAXAの中澤暁サブマネージャ(以下、サブマネ)は「ホッとした」と話していました。
カプセル着地の際の貴重な観測機会も制約を受けています。カプセルが大気圏に突入する際の電磁波の観測など、予定されていた7件のうち、1件が取りやめに。残る6件もオーストラリアの研究者との共同研究か、JAXAによる代理観測という形になります。
探査機「はやぶさ2」はカプセルを分離した後、別の小惑星に向かう「第二の宇宙の旅」に臨む予定ですが、その前にまだまだこのようなハードルが立ちはだかります。中澤サブマネは「コロナの問題で難しさが増しているが、安全確実にやって行きたい」と意気込みを語りました。
一方、小惑星探査には強力なライバルがいます。アメリカの探査機「OSIRIS-Rex=オシリス・レックス」が小惑星「Bennu=ベンヌ」に着陸し、先日、地表から回収した粒子を保管用カプセルに収納することに成功しました。粒子が大き過ぎて一部が「こぼれる」というアクシデントに見舞われたものの、地球にサンプルを持ち帰る大きなハードルを超えたことになります。
津田プロマネは会見で「さすがNASA、決めるべきところは決めて来る」と敬意を表しました。そして、小惑星探査の分野について「猛追して来ている」としながら、「仲間ができたというのはうれしいもの。NASAをライバルと呼べることは、われわれにとってある種恐れ多いが、そういう状態になったのは誇らしいこと」とも語ります。
宇宙開発はさまざまな国の間で競争が激化していますが、こと小惑星探査に関しては、日米はまさに切磋琢磨、今後もお互いを認め合う関係であって欲しいものです。(了)
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