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法廷闘争に持ち込んでも「トランプ陣営が勝つ保証はない」理由

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月6日 6時50分

法廷闘争に持ち込んでも「トランプ陣営が勝つ保証はない」理由

ホワイトハウスで指名受諾演説に臨むトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月5日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。大接戦となっているアメリカ大統領選挙。現地ワシントンの状況について、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でスティムソン・センター東アジア共同部長の辰巳由紀を電話ゲストに迎えて解説した。

ホワイトハウスで指名受諾演説に臨むトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年8月27日 AFP=時事 写真提供:時事通信

アメリカ大統領選挙、激戦続く

共和党の現職ドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン前副大統領が、激しい争いを繰り広げているアメリカ大統領選挙。郵便投票が大幅に増えたこともあり、大接戦で勝者の判明が遅れている。勝敗が見えないなか、バイデン前副大統領は「勝利に向かっていると信じている」と発言。一方、共和党のトランプ大統領は、早くも勝利を主張している。

飯田)トランプさんは、事実上の勝利宣言を勝手にやっています。

宮家)根拠はないのですけれどね。

飯田)新聞各紙でも、さまざまな論評がされていますが、激戦州のウィスコンシン州、ミシガン州というところで、アメリカの大手メディア各社も「バイデンさんの勝利である」というような報道をしています。この辺りをバイデンさんが獲るとなると、バイデンさんの勝利が近くなりますが、現地はどのような様子なのか、ワシントンにいらっしゃいます、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でスティムソン・センター東アジア共同部長の辰巳由紀さんと電話がつながっています。辰巳さん、おはようございます。

辰巳)おはようございます。

ドナルド・トランプ米大統領=2020年10月5日 AFP=時事 写真提供:時事通信

勝利への道筋が狭くなりつつあるトランプ陣営

飯田)まず、いまのワシントンの様子、メディアの報道はいかがでしょうか?

辰巳)バイデン前副大統領が少しずつ優勢を固めつつあるという感じで、トランプ大統領の陣営は法廷闘争などの話をしていますが、トランプ陣営にとって、勝利へ向けての道筋は狭くなって来ているという印象の報道が続いています。

飯田)バイデンさんが会見を行いましたが、どのようなことを言っていましたか?

辰巳)まだ複数の州では結果が出ていませんので、勝利宣言とまでは行かないのですけれども、「このまますべての票が集計された最後の結果は、自分たちが勝つだろうということを確信している」というような発言でした。「選挙が終わったら、結果がどうであれ、自分は自分に投票してくれた人も、自分に投票してくれなかった人も、民主党でも共和党でもないアメリカの大統領として、自分は政権運営に臨む」という感じで、大統領感を醸し出しているような演説でした。ただ、短いコメントで、もちろん質問なども一切受け付けない状態での一方的な発信をしました。いちばん強調していたのは、「すべての票が集計されなければいけない。それまで自分たちは結果を粛々と待たなければいけない」ということです。

「スーパーチューズデー」で予備選が行われた米カリフォルニア州ロサンゼルスでの集会で、聴衆に笑顔をみせるバイデン前副大統領=2020年3月3日 写真提供:産経新聞社

アリゾナ州、ネバダ州をバイデン氏が獲れば、ペンシルベニア州の結果がどうであれ、バイデン氏が当選か

飯田)長くかかりそうだということも、各々感じていらっしゃるわけですか?

辰巳)そうですね。ただ、いまの状況ですと、先ほどのお話にもありましたように、ミシガン州、ウィスコンシン州という、2016年の大統領選挙でトランプ大統領が勝った州2つをバイデン前副大統領が獲っています。いまのこちらの報道ですと、いちばん投票結果の集計で揉めているのが、ペンシルベニア州なのですが、アリゾナ州、それからネバダ州の2つの州で、バイデン前副大統領が勝つということになると、ペンシルベニア州の結果がどうなっても、バイデン前副大統領が当選となるという感じの報道になっています。

飯田)スタジオには宮家邦彦さんもいらっしゃいます。

宮家)ワシントンという特別区は、民主党が強く、メディアも民主党贔屓が多いので、我々も気をつけて聞いているのですが、そちらの共和党系の人たちはどのように報じているのでしょうか?

辰巳)FOXニュースなどを見ますと、「まだまだ結果はわからない」という感じの報道もあります。しかし、報道としては、表向きには「まだまだトランプ陣営は勝てる」という感じなのですが、悲観的な感じにもなって来ています。メディアに登場している共和党系の弁護士や、選挙管理の法律に詳しい人たちは、どこまで票の集計を認めるかというところは、州の権限で決まっているところが多い。それは州の司法にすべてかかっているので、トランプ陣営が何を言っても、「ダメなものはダメ、大丈夫なものは大丈夫」というようなことを言っています。

15日、米ノースカロライナ州で、期日前投票の列に並ぶ有権者(ロイター=共同)=2020年10月15日 写真提供:共同通信社

「トランプ寄り」のFOXニュースが「バイデン当確」に向けての報道

宮家)しかし、トランプさんの性格から言って、絶対に負けを認めたくないでしょう。相当のことをやって来る可能性があります。すでに何百人も法律家や弁護士を雇ってお金をかけているそうですが、この泥仕合はどこまで続くと思いますか?

辰巳)それは、どのくらいの早さでいろいろな州が当確を出すかにかかっていると思います。どちらかと言うと、トランプ派であるFOXニュースのほうが、前のめりの結果を出していまして、いわゆるリベラル、民主党寄りと言われているメディアは「バイデン前副大統領が253人の選挙人を獲得した」という感じなのですが、FOXニュースでは「もう264人を獲得」などと、「バイデン当選」に向けての報道をしています。

宮家)トランプさんも「FOXはけしからん」と怒っていましたね。

辰巳)そうですね。メディアのなかでも、いちばんトランプ寄りと言われているのがFOXニュースなので、FOXニュースでこの結果というのは、非常に興味深いと思います。

2020年10月22日、米テネシー州ナッシュビルで開かれた2回目の候補者討論会で発言するトランプ大統領(左)とバイデン前副大統領(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

郵便投票の問題をトランプ陣営が法廷闘争に持ち込んでも、証拠がなく最高裁が取り合わない

宮家)最悪の場合には、最高裁なりの判断をして、6対3で政治色のある判断をして、その上で来年(2021年)の1月20日まで物事が決まらず、憲法上も混乱して、最終的に下院議長が大統領代行だという議論もあるではないですか。そこまでは行かないのでしょうか? それとも行く可能性もあるのでしょうか?

辰巳)今回の選挙で、引き合いに出されるのが、2000年の大統領選挙のジョージ・ブッシュ対アル・ゴアの選挙です。これは「フロリダ州の投票の再集計を認めるか」ということについてアメリカの連邦最高裁が介入して、「認めない」という判断を下しました。今回の場合も、引き合いに出されて論じられているのですが、2000年のときは、フロリダ州の投票の結果があまりにも近すぎて、「どちらかの当確が出せない」ということが現実としてあったわけです。今回は、トランプ陣営の方から、「不正行為があった」とか、「投票箱が消えた」というツイートは流れているのですが、実際にそれを裏付けるような現実が何もなく、目撃者もいないので、法廷闘争に持ち込もうとしても、証拠がないということで、そもそも最高裁が取り合わないのではないかという報道になっています。

宮家)最高裁がそこで政治化してしまったら、アメリカの民主主義の根本が崩れてしまいます。

辰巳)今回、共和党系の判事が過半数を占めてはいるのですが、これまでトランプ政権がさまざまな案件で最高裁に判断を求めたものを見ると、共和党政権のときに指名された判事が、トランプ政権の言い分を却下するような判断を下している場合がけっこうあります。ですので、最高裁に持ち込んだとしても、必ずしもトランプ政権側に有利な判決が出るということは、保証できないと思います。

宮家)法律の専門家は法律の判断をすべきですよね。

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