落合恵子~「あなたを生きられるのは、あなたしかいない」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月6日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、作家で児童書籍専門店「クレヨンハウス」主宰の落合恵子が出演。これまでの「クレヨンハウス」について、また今後の活動について語った。
黒木)今週のゲストは、作家で子どもの本の専門店「クレヨンハウス」を主宰している落合恵子さんです。今年(2020年)6月に第55回ENEOS児童文化賞を受賞された落合さんですが、「クレヨンハウス」の活動は45周年を迎えます。これまでの活動を振り返っていかがですか?
落合)「子どもに教えてもらって来た」ということが大きいですね。大人は子どもに教える側だと思ってしまうときがあるではないですか。私も大学の教師をしていたので、どうしても若い人を見ると、「こちらが教える側」となってしまうことがあったのですが、子どもはいろいろなことを教えてくれるのです。驚くこと、道端の草1本について。あるいは、その1本に止まっているテントウムシについて。子どもから教えてもらったことはたくさんあります。「いろいろ学ばせていただいてありがとう」という気持ちです。
黒木)「クレヨンハウス」の活動でいろいろなことがおありになったと思うのですが、印象に残っていることは何ですか?
落合)夏のオーガニックの野菜があるではないですか。ある子どもが、うちの夏のオーガニックの野菜を見て、「カットされていない野菜を見た」と感動していたのです。いつもはスーパーでカットされた野菜を見ているのですって。来年(2021年)はきちんとトマトを育てて、ナスを実らせて、その子たちに見せたいと思っています。このように、嬉しいことはたくさんありますね。
黒木)そうなのですね。
落合)お好きな本を見に来られるお年寄りのなかには、「自分は、本当は絵本作家になりたかった。ずっと夢見て来たのだけれど、親父の跡を継がなくてはいけなくて」という方もいます。「長男だったから、全部諦めて生きて来た。75歳になったので、もう自由になった。これから絶対に1冊絵本を描くから」とおっしゃるのです。私は待っているのですよ。
黒木)描いて欲しいですね。
落合)本当に。実際の人生は、なかなか夢が叶わないケースもたくさんあると思いますが、70数年かけた夢として、1冊の絵本ができるということは素敵だと思いますね。
黒木)本当に楽しみですね。これからの「クレヨンハウス」はどのようにしたいですか?
落合)おそらく私は、そのときこれをやりたいと思ったら、やってしまうと思うのです。いつも、いま目の前にあるもので、最も関心のあることをやりたいと思いますから、いろいろなテーマをきっとやって行くのだと思います。もう1つ、私は若いときに編集者になりたかった。その夢をいまようやく叶えられています。それはものすごく楽しい。自分の本をつくるよりはるかに楽しくて、これはずっとやって行きたいと思いますね。
黒木)欲しいものがあったらやってしまうと。
落合)どうしても欲しいものがなかったら、「つくる」ということになるかも知れません。私の好きな言葉に「I can’t live your life」という言葉があります。そのまま訳せば、「私はあなたを生きられません」ということですが、少し深めると、「あなたを生きられるのはあなたしかいない」という意味になります。1人ひとりの子ども、それもその子どもの人種や、親の仕事、あるいは親がいるとかいないとか、そんなことにまったく関わりないところで、その子がその子として生きて行ってもらえたら嬉しいと心から思います。
落合恵子(おちあい・けいこ)/作家・クレヨンハウス主宰
■1945年、栃木県宇都宮市生まれ。
■1967年、文化放送にアナウンサーとして入社。「セイ!ヤング」「こんばんは、落合恵子です」などでパーソナリティを担当。
■1974年に文化放送を退社。本格的な文筆活動を開始。
■海外取材で子供の本の専門店を見たのがきっかけで、1976年、本をはさんで大人と子どもが向かい合う場として児童書籍専門店「クレヨンハウス」を開設。
■東京都渋谷区神宮前に開店。1986年に港区北青山へ移転。約5万冊の児童書、オーガニックレストラン、子どもと大人の本のフロア、安全安心な玩具、女性の本やオーガニックな生活必需品などを扱う。
■1991年には大阪府吹田市に「クレヨンハウス・大阪店」をオープン。
■クレヨンハウスが絵本や児童書を月に1度届けるサービス「絵本の本棚」も人気。
■その他、総合育児雑誌『月刊クーヨン』、オーガニックマガジン『いいね』の発行人も務め、絵本の刊行や翻訳も多数手がける。
■近著に『泣きかたをわすれていた』『明るい覚悟』などがある。
■2020年、第55回ENEOS児童文化賞を受賞。
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