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バイデン氏が大統領になった場合~アメリカ大使館はエルサレムから移されるのか

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月6日 17時35分

バイデン氏が大統領になった場合~アメリカ大使館はエルサレムから移されるのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月6日放送)に放送大学名誉教授で国際政治学者の高橋和夫が出演。アフリカ南部のマラウイが、在イスラエル大使館をエルサレムに開設すると発表したニュースについて解説した。

2月11日、米サウスカロライナ州の集会で演説するバイデン前副大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

マラウイが在イスラエル大使館をエルサレムに開設

イスラエルのアシュケナジ外相とアフリカ南部マラウイのムカカ外相が3日、エルサレムで会談後に共同記者会見し、マラウイが在イスラエル大使館をエルサレムに開設すると発表した。イスラエル外務省によると、2021年夏までに設置される予定だということである。

飯田)エルサレムをどうするかということは、かつての中東戦争の要因にもなった非常にセンシティブな問題ですよね。

高橋)そうなのですね。「この時期になぜ」ということなのですけれども、1つはアラブ首長国連邦がイスラエルとの関係を改善しているので、「アラブ諸国自らはイスラエルと仲よくやっているのに、なぜ私たちアフリカ人が遠慮しなくてはいけないのだ」ということがマラウイにあったのは確かだと思います。イスラエルを喜ばせるために、大使館をエルサレムに移すということです。そして、イスラエルは何をするのかというと、おそらく経済援助を増やすのだと思います。イスラエルという国は、アラブ諸国に囲まれて、周りが認めてくれないので、アラブ諸国を乗り越えてブラックアフリカ諸国に経済援助を出して、関係を深めていたのです。

飯田)そうですね。

米ホワイトハウスでエルサレムをイスラエルの首都と認定すると発表したトランプ大統領(ロイター=共同)=2017年12月6日 写真提供:共同通信社

アラブ首長国連邦がイスラエルとの関係を改善したことにより、マラウイもイスラエルとの関係を再び深めることに

高橋)ところが、70年代から石油の値段が上がると、アラブ諸国が「イスラエルとの関係を切ったら援助をあげるよ」と言いだした。リビアのカダフィさんなどは、気前よくお金をばら撒いて、イスラエルとの関係を切るか、下げてしまった。しかし、もはやリビアはガタガタで、イスラエルに意地悪をしても、お金をくれる人は誰もいません。そういう意味では、中国と台湾の関係みたいなところがあります。どちらが経済援助をたくさん出してくれるかで、外交関係をどうするかを決める。そのことで太平洋の小さな国々は悩みますよね。それと同じようなところがあると思います。いまイスラエルと仲よくすると、トランプさんがいい顔をしてくれるし、ネタニヤフさんも喜んで経済援助も増える。アラブ側の反発も、アラブ自身がイスラエルとうまくやろうとしているので、「文句を言われたくない」というアフリカ人の気持ち、そういうところが出たのだと思います。これはマラウイ、そしておそらくマリと続くのでしょう。

ホワイトハウスで、スーダンとの関係正常化についてイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談するトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年10月23日 AFP=時事 写真提供:時事通信

スーダンがイスラエルと国交正常化した背景

飯田)先日はスーダンがイスラエルと国交正常化というニュースもありました。仲介役としてアメリカが入ってということのようですけれども、この辺りも同じ流れということでしょうか?

高橋)スーダンは過去にいろいろありましたので、アメリカからテロをやっている国の一覧に入れられていたのです。それだと、海外からお金が流入せず、ある意味で日干しにされてしまうのです。「イスラエルと仲よくするから、そこから外して欲しい」という取引があったのだと思われています。スーダンはアラブの国ですし、かつてイスラエルとアラブが戦争をした後、アラブ諸国の首領がみんなスーダンに集まって、「イスラエルを認めない、イスラエルと交渉しない、和平はやらない」という3つのノーを突き付けた場所です。その国がイスラエルとの国交を正常化するということは、イスラエルにとっては象徴的で、「自分たちの外交努力がついに実を結んだ」という、実質というより、気分のいいスーダンとの外交関係の改善でしたね。

飯田)そういう歴史的な経緯というものがあるのですね。

高橋)そうなのです。もう1つは、スーダンにユダヤ系の人がいて、その人たちがイスラエルに移住するというのもあり、裏ではずっとつながっていたのですが、それを正面からやったということです。みんな裏ではイスラエルとやっているのですが、正面からやるかどうかというのが問題で、イスラエルのように認められて来なかった国は、認められるということが嬉しいのです。「大使館を置いてくれて、その国の旗を上げてくれて、大使が来てくれる。ユダヤ人国家は世界的に認められている」ということが嬉しいのです。

4日、米大統領選で優勢となり、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ロイター=共同)=2020年11月4日 写真提供:共同通信社

バイデン氏とも良好な関係を持つイスラエル

飯田)なるほど。アメリカ大統領選がいま進んでいますが、イスラエルがアラブ諸国と関係を改善して行くという流れは今後どうなりますか?

高橋)バイデンさんもイスラエルとは関係がいいのです。

飯田)そうなのですね。

高橋)バイデンさんは大統領になっても、「アメリカ大使館はもうエルサレムから移さない」と言っています。トランプさんほど甘くはなく、言うべきことは言うけれど、「イスラエル支持」ということは、バイデンさんも言っています。バイデンさんは、アメリカのユダヤ人の支持を受けて来た政治家で、自身はカトリックですが、「シオニストになるのにユダヤ人である必要はない。私はユダヤ人ではないがシオニストである。イスラエルを支持している」ということを言っています。

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