バイデン政権が日本に課すであろう「炭素関税」の重み
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月16日 17時45分
米東部デラウェア州ウィルミントンで演説するバイデン前副大統領(アメリカ・ウィルミントン)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月16日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。今後のトランプ氏の動き、またバイデン政権になった場合の日本への影響と中国への対し方について解説した。
トランプ大統領支持者、ワシントンで大規模集会とデモ行進
アメリカ大統領選で敗北を認めていないトランプ大統領を支持する大規模集会とデモ行進が、11月14日に首都ワシントンで行われた。中心部の通りを埋め尽くした数万人の支持者らは、トランプ氏の主張に沿って選挙で不正があったと叫び、トランプ氏の再選を訴えている。
飯田)各地で訴訟が行われているということです。大統領選が終わって2週間あまりが経ちますけれども、どうご覧になりますか?
トランプ氏の動きは2024年の再出馬に向けてのものか
須田)不正の証拠が出て来れば、展開は変わるのでしょうが、そこが具体的に出ていません。出ていない以上、世界の流れとしては、「バイデン当選」というところで動き始めているのだと思います。トランプさんの今後の戦略から考えると、法廷闘争があるなかで、1つとしては、2024年の再出馬を伺うような展開になっているのではないでしょうか。今回、仮にバイデンさんが大統領に正式に就任したとするならば、通常であれば、1期4年やって、それで結果を出して2期目を伺うということになります。再選を狙う大統領が落選したケースは、数えるほどしかありませんから。しかし年齢的な問題も含め、バイデンさんに2期目はないと言われています。そうすると、次の2024年の大統領選挙は現職がいないという、異常な大統領選挙になりかねない。そこに向けてトランプさんも動き始めている可能性があります。しかし、まだまだアメリカ国内の分断・混乱は続いて行くのだと思います。
飯田)今後のスケジュール的には、12月8日までに選挙人を各州確定させて、14日に投票という流れになるはずですが、これが確定しないとなると、いろいろとややこしいことになりますね。
須田)ただ、下院での1州1票の選挙になりますから、バイデンさんの当選は揺るがないものだと私は見ています。そのなかで次の戦略というところを共和党も伺い始めたのかなと。或いはトランプさんサイドも伺い始めたのかなと思います。
万が一、上院も民主党が獲ると、「大統領・上院・下院」すべて民主党となる
飯田)一緒に行われた上院の3分の1改選ですけれども、こちらはジョージアの2つの議席を今後の決選投票でやることになります。いま50対48で、一応共和党が2議席リードはしているけれども、過半数には届かずと。ここがどうなるかというのが、注目になって来ますね。
須田)残り2議席で、1つは補欠選挙ということで来年(2021年)1月と。もう1つは決選投票ということになったのですが、仮にここで民主党が2議席を獲ったとしましょう。そうすると50対50で均衡になるのですが、そうなった場合、最終的にはどうやって下院の意向を多数決で決定するのかというと、上院議長なのです。上院議長というのは副大統領が兼務するので、カマラ・ハリスさんがこのまま行くと投票権を持つことになります。そうすると、2議席を民主党が獲ってしまうと、上院も民主党が握るという展開になります。今回の決選投票では共和党が有利ではないかなと思いますが、万が一、民主党が獲ってしまうと、「大統領・上院・下院共が民主党」という状況になりかねません。そうなった場合とそうならない場合、要するに上院・下院でねじれていない場合と、ねじれている場合とでは、アメリカ国内の政治情勢は大きく変わります。
環境左派の動きにブレーキをかけるのが共和党~注目される上院の投票結果
飯田)もしすべて民主党が獲るということになると、逆に共和党を支持してトランプさんに入れていた人たちは疎外感を味わい、より分断が進むということになりますか?
須田)そうですね。そしていま民主党の主軸は、バイデンさんがバーニー・サンダースさんと政策協定を結んで指名候補争いのなかで支持を受けたように、かなり左派寄りです。もともとバイデンさんは中道なのですが、そこで左寄りになってしまったようです。左と言っても、アメリカの場合リベラルですから、そのなかで注目しなければならないのは、環境左派の動きなのだと思います。そこに対して一定程度のブレーキを利かせるのが共和党ですから、果たして上院の投票結果はどうなるのか。そこは注目だと思います。
環境左派の政策により日本が負うこととなる「炭素関税」
飯田)その環境左派の政策がそのままということになると、自動車産業を抱える日本としても看過できないことになります。EVを積極的に入れようとする話も出ていますよね。
須田)日本もその辺を意識して、菅総理は所信表明のなかで2050年温室効果ガス0宣言を盛り込んでいますから、その辺りの平仄(ひょうそく)は合ったのだけれども、それが現実的に実行できるのか。それが年度ごとに実行されないと、アメリカはペナルティを課すという方向性をいま打ち出しています。それが炭素税と言われている、炭素関税なのです。
飯田)炭素関税。
須田)日本はただ目標を設定するだけではなく、それを実行するものを負ってしまう。実行しなければ貿易上、大きな不利益を被ることになります。それについては、アメリカ国内の先ほど申し上げたような政治情勢が、大きく影を落とすということになると思います。
バイデン政権になっても、オバマ政権のときのように「親中国」にはならない
飯田)バイデンさんが大統領になったとすると、新しい政権が中国に対してどういうスタンスで行くのか。オバマさんのときのイメージがあるので、警戒している部分がありますが、これはどうですか?
須田)バイデンさんの政策公約集を丁寧に読み解くと、バイデンさんがというよりも、民主党の環境左派の人たちが一帯一路構想については非常に厳しい目を向けています。一帯一路の本質は何かと言いますと、中国はつくらないけれども、一帯一路構想とアジアインフラ投資銀行(AIIB)によって、途上国である提携国に対して、「石炭火力発電所を中心とする火力発電所を輸出して行く」ということが軸なのです。そうすると、中国自体は環境対策をやるけれども、火力発電所を輸出しているではないかと、厳しい目を向けられています。一帯一路構想に対して、一定程度の対決姿勢を取るということは、政策公約集に盛り込まれているのです。ですから、必ずしもオバマ時代が再来するとは限らないということです。
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