保護犬に“かわいそう”とレッテルを貼らないで!~ハワイで犬からの言葉を伝える日本人女性~
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月21日 21時50分
【ペットと一緒に vol.221】by 臼井京音
ハワイに移住し、アニマルコミュニケーションを動物の保護活動にも活かしている、Shioriさん。今回は、『いぬと話す ねこと話す』(2019年/自由国民社)の著者でもあるShioriさんのハワイでの保護活動の秘話を紹介します。
ハワイ最大のアニマルシェルターで新境地を拓く
前回紹介したチワワのくぅくんは、心身ともに疲弊していたShioriさんを立ち直らせ、ハワイでのアニマルコミュニケーターとしての道に導きました。
くぅくんの晩年、Shioriさんはハワイ最大級のアニマルシェルター(動物愛護団体)でアニマルコミュニケーションとレイキを行うボランティアを始めたそうです。
Shioriさんが任されているのは、動物たちに充実した時間を提供するための“エンリッチメント・ボランティア”。
「アニマルシェルターでは『あのコ、様子がおかしいの。ベッドの下に隠れて出て来ないのよ。きっと怖がっているんだと思うの』『このコは噛み癖があるから、ちょっと見て欲しいんだけど』という相談が次々に舞い込みます」と、Shioriさん。
保護犬たちにアニマルコミュニケーションでつながると、さまざまなことが見えて来ると言います。
「まず、そのコとつながった瞬間に、不安なのか怖がっているのか、ウキウキしているのかといった感情の確認ができます。それから、体のどこがどういうふうに感じているのかもわかります」
ベッドの下に潜り続ける理由は……
Shioriさんが、先述のボランティアの人たちが「怖がってベッドの下から出て来ない」と思っていた保護犬にアニマルコミュニケーションをしたところ、驚くような答えが返って来たと言います。
「『放っておいてくれ』と。『いきなり捕獲されてお腹を切られて痛い思いをして、次はいろいろな人から見られて触られて……。何なんだよ』と伝えて来たんです。その犬は保護から数日で去勢手術を受けて譲渡可能な状態になっていました。
人間の目から見たら、人見知りで怖がりな犬に見えるかも知れません。でも実際はそうではなく、しばらくそっとしておいて欲しかったんですよね。目まぐるしく変化した状況を飲み込めずにいて、混乱すると同時に、少し怒ってもいたようです」
Shioriさんはそういった不安や戸惑いを抱えている保護犬たちに、「この場所は安全で、ここにいる人たちは安心できるのよ。あなたはこれからベストマッチな新しい家族を見つけるためにここにいるのよ」と、現状の説明もするそうです。
そして、怖がりでも神経質でもなく遊び好きでおおらかであるなど、その犬の本来の性格を引き出して行くと語ります。
“かわいそうな保護犬”というレッテルを貼らないで
アニマルシェルターでアニマルコミュニケーションを行うと、動物によい変化をもたらすことや譲渡されるまでの期間が短くなることを、Shioriさんは実感しているそうです。
「ハワイ最大級のシェルターであるヒューメイン・ソサイエティの譲渡率は高く、多くが1週間以内で新しい家族に迎えられて行きます。そんななか、3ヵ月も譲渡先が決まらない犬がいました。そのスイーティーにアニマルコミュニケーションでつながると、その返答に思わず笑ってしまいました。
『だって、太陽はポカポカだし、毎日みんなに遊んでもらったり散歩してもらったり、ここから出たくないよ~』と。居心地満点のシェルターにずっといたいと強く思い、自ら新しい家族を遠ざけていたようですね」
実はスイーティーちゃんは、アニマルシェルターのスタッフたちから「ずっと譲渡先が決まらなくてかわいそう」と思われていたそうです。他には、シェルターに2回の出戻りを経験したボーンズくんも「かわいそうなコ」という扱いだったとか。
「ボーンズは忠誠心が強くて、誰にでも尾を振らないタイプ。飼い主を自ら選ぶ犬でした。3回目には、ぴったりマッチする譲渡先を探せたようです。“かわいそうなコ”として見られている保護犬は多いですね。でも実際は、必ずしもすべての犬たちが自分のことをかわいそうだと思っているとは限りません。
“かわいそうなコ”という目で見られると、それだけで疲れ果ててしまう犬も少なくないんですよ。人間のフィルターを通して、保護犬たちに同情やあわれみの感情を送らないようにしたいですね」と、Shioriさんは語ります。
保護犬たちに安心感を抱いて欲しい
Shioriさんは、アニマルシェルターにいる保護犬たちの不安感や不調を軽減したいと願って活動しているそうです。
「たとえば、不安で不安で仕方がなく、広い犬舎を歩き回っていたミネルバという犬にレイキ(手当療法)を行ったところ、落ち着いてくれて、緊張から解き放たれて安心して眠りについてもくれました。レイキは、身体をリラックス状態に導き、エネルギーを注入することもできるんです」
また、飼い主さんからアニマルシェルターに持ち込まれたある犬は、飼い主さんが恋しすぎて、フェンスを引っ掻いて足から出血していたとか。
「初めは私のことなど見向きもしてくれなかったけれど、アニマルコミュニケーションをとおしてそのコのさびしさに寄り添い続けるうちに、こちらに来てくれました」(Shioriさん)
レイキやアニマルコミュニケーションを行うことで、Shioriさん自身の落ち着いたエネルギーを犬に送り込めるので、犬たちは同調して落ち着くのだそうです。
アニマルコミュニケーションは動物の心にある思いを吐き出させる役割を担うと、Shioriさんは言います。
「保護動物たちはさまざまな体験をして、多くの思いを抱えています。それを吐き出してもらうと、怯えていたコが安心した様子を見せたり、ハイパーで動き回っていたコが落ち着いたりといった行動変化が見られるんですよ」
アニマルコミュニケーションは、心のなかの声を言語化する手段でもあると、Shioriさんは考えています。
「日本に“言霊(ことだま)”という言葉があるように、言葉にはエネルギーが宿っていて、アニマルコミュニケーションはそのエネルギーを発動することにつながると実感しています」とのこと。
現在、Shioriさんは日本の動物愛護団体に向けて、アメリカのようにアニマルコミュニケーションやレイキを保護活動の現場で活かせる手助けをしたいと願い、新たな展開を始めています。
「アニマルコミュニケーションは、特殊な能力など必要なく、手法を学べば誰にでもできるものなんですよ。私も、愛犬のくぅちゃんがきっかけで、いまのスキルを身に付けました。拒食症でどん底から救ってくれたくぅちゃんのおかげで、いま私はハワイで動物たちの力になれてとても幸せです。まず人間が幸せになることで、犬も猫も動物たちも幸せに生きられるようになると信じています」
そう語るShioriさんの笑顔は、ハワイの太陽のようにキラキラと輝いていました。
■Shioriさんオフィシャルサイト
アニマルコミュニケーション ハワイ:https://www.achawaii.net/
連載情報
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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。
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