中国王毅氏来日~「方向性の見えない」菅政権
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月24日 17時40分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月24日放送)にジャーナリストの有本香が出演。中国がブータンの領内に道路を建設したニュースを受け、今後日本がどのように中国と付き合うべきかについて解説した。
中国がブータン領内に集落を建設か~3年前から行われる中国の実効支配化
インドのニューデリーのテレビ局は11月22日、中国がヒマラヤ山脈の小国ブータンの領内におよそ9キロ入った地点まで道路を新たにつくり、その途中に集落も建設したと報じた。
飯田)現地の報道を見ると、集落だけではなく、航空機を守る掩体壕もつくったとのことです。
有本)これは実は数年前から言われていたのです。ネパールに住んでいる人と話をしていましたが、3年前の段階で、相当深刻であるということでした。ブータンという国は、日本では「幸福度の高い国」などと言われていますが、非常に小さな国です。そのネパールに住む人が言っていたのは、「これは陸の南シナ海だ」ということです。中国が少しずつ侵食して来て、いろいろなものをつくって、実行支配化をしている。ブータンは小さな国で、安全保障面はもっぱらインドに頼っています。
民族衣装を着て公用語として英語を使うことが義務~それによって人口侵略を防いで来た
有本)ただ、ブータンが小さな国であるにも関わらず、いままで中国お得意の周辺諸国に対しての経済交流や、人が移民として入り込んで来て一種の人口侵略的なことをしても不思議ではないのに、それが起きなかった。それは、ブータンは面白い国で、外を出歩くときは民族衣装を着なくてはならないのです。着物みたいなやつです。それと、公用語が英語なのです。ブータンの人たちは、チベット系の民族なので、自分たちの民族語はありますが、学校や役所の文書などで使われるのは、すべて英語です。そういう制約があるために、中国系の人が入って来たとしても、そこに定住するのは難しいのです。
飯田)英語を話さなければならないし。
有本)それもそうだし、なかでのルールが守れないということになりますから。言葉の問題だけではなく、民族衣装を着ることも含めて、そういうことによって国を守ろうとしている。
飯田)知恵ですね。
有本)一方では、ブータン政府は積極的に外国人を登用しています。国内だけでは人材が足りなく、登用するのですが、登用された外国人もそのルールに例外はありません。日本人でブータンに行って、ブータン政府で働いたことのある人がいますが、その人も向こうにいるときは、常に民族衣装を着ていたということです。「郷に入りては郷に従え」ということで、一種の人口侵略を防いで来た国なのです。
ブータンをめぐっても衝突が続くインドと中国
有本)このブータンをめぐって、保護国的立場にあるインドと中国との関係は、今後非常に厳しくなると思います。カシミールやアクサイチンなどでも、衝突が小規模に続いています。
飯田)今年(2020年)も死者が出ています。
有本)もともと中国は、インドとは休戦状態です。58年ほど前に中印国境紛争があり、休戦状態で睨み合いを続けていて、特定地域で衝突が起こるのですが、その頻度が最近増えている。中国もインドも近年軍拡がめざましく、国境の小規模な衝突のなかでも、中国は新しい兵器を試しています。台湾海峡に緊張が高まっていると言いますけれど、中印も緊張が高まっています。
中国の王毅外相来日の目的~菅政権の様子を見に来るためか
飯田)台湾海峡もそうですけれど、中国の膨張が進んで行き、外で膨張し、なかで弾圧する。昨日(23日)は、香港の民主派の代表者が収監されました。
有本)中国の王毅外相が来日しています。
飯田)24日~25日の予定です。
有本)外交当局に関係のない人たちは、「一体何しに来るのだろう」と疑心暗鬼なのです。私は、ここで日本の様子を見に来る、試しに来るのだと思います。この国際情勢と、日本の尖閣海域での動き。中国工船は、当たり前のように海域に居座るようなことをしています。この状況があって、なお外務大臣をいままで通りの曖昧な笑顔で迎えて、少しだけ「遺憾です」というようなことを言うだけであれば、中国にしてみたら「しめしめ」という感じです。
飯田)政権交代して「たいしたことないな」と思われてもおかしくない。
有本)いままでもそれほど厳しかったわけではありませんが、「よりいっそう楽になったな」と思うのではないでしょうか。ですから、香港でのいまの状況、あるいは、前々からずっと言っている新疆ウイグル自治区における人権状況、尖閣諸島における状況を相当厳しく突き付けて話をしないと、「日本の外交はどうなっているのだ」ということになると思います。
菅政権の方向性の見えなさ~ここでなぜ王毅氏を受け入れるのか
飯田)世界的に見ると、ヨーロッパ各国でインド太平洋戦略をかなり策定する動きがあります。フランスは既にやって、ドイツもやり出した。イギリスは再び東洋艦隊をつくろうかという話が出ています。
有本)イギリス海軍は、インド太平洋に軸足を移して来るのではないかという感じですよね。
飯田)同じ価値観を持って連携しようと思えば、ヨーロッパともようやく連携できるかも知れないというタイミングですよね。日本はいま逆に行っていないですか?
有本)そう見えますよね。「菅政権の方向性の見えなさ」と言うのですかね。デジタル庁もそうですが、「順序が違いませんか?」というのがあります。王毅さんが来ると言った段階で、「なぜ普通に受け入れているのだろう」というところがまず疑問ですね。
飯田)しかも、事前の報道で、「習近平氏の来日は国賓としては扱わない」ということでした。そうなると、ますます何をしに来るのだろうという感じですよね。
有本)対中国にどう向き合うのかというところですね。いままで通りのレベルで物事を考えるようだと、非常に危ういですよね。
実相を把握できていない日本~新型コロナも、対中国も
飯田)より経済優先となってしまうのか。
有本)「経済優先」と言いますが、今回のコロナでわかりませんでした? 中国に経済依存するということは、こういう「しっぺ返し」を食らうのです。
飯田)マスク1枚入って来なかった。
有本)これだけのリスクがあるということです。最近、マスクは買えるようになりましたが、ほとんどのマスクがいまだに「メイド・イン・チャイナ」です。ここが台湾とは対照的です。
飯田)台湾は自分のところでつくっています。
有本)計画的にね。流通させるマスクの枚数も、コントロールしながら徐々に上げているではないですか。なぜ、こういうことをできないのということです。国の規模が違うということではなく、国が実相を把握できていないのです。このコロナ対策はまさに、大きな試金石でもあったし、これをきっかけに、あらゆる課題が見えたところを直せばいいというところだったのだけれど、抜本的に直す方向へは行っていません。中国との付き合い方もそうです。
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