日中外相会談~尖閣諸島問題について強気の王毅氏に対し「何も言わなかった」茂木外相
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月26日 17時40分
日中外相会談 中国の王毅国務委員兼外相と会談する、茂木敏充外相 =24日午後5時33分、東京都港区の外務省飯倉公館
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月26日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。来日した中国・王毅国務委員兼外相と茂木外務大臣、また菅総理との会談について解説した。
中国・王毅国務委員兼外相の来日
菅総理大臣は11月25日、中国の王毅国務委員兼外相と総理官邸で会談した。会談で菅総理は日中のビジネス関係者の往来再開や、2021年夏のオリンピック・パラリンピック、2022年に行われる北京冬季オリンピック・パラリンピックへの協力を確認。また、沖縄県の尖閣諸島周辺海域での中国公船への対処を要求した。
飯田)王毅さんは加藤官房長官とも会い、自民党の二階幹事長とも会談しています。
鈴木)このコロナの時期に、わざわざ専用機で直接王毅さんが来るということ自体、異例です。それなりの中国の目的があるということです。前にもお話ししたと思うけれど、安倍さんは以前に、「中国とはWin-Winで行く」と。「自分は思想家ではなくて政治家だ」と言っていました。思想的に言えばいろいろ合わないことは山ほどあるが、政治家だから、中国とお互いにWin-Winで行くために、言うべきことは言い、するべきことはする。対話もきちんとやるという姿勢は、いまの菅政権でも続いていると見ていいと思います。
尖閣諸島問題について強く「一歩も譲らない」という王毅外相に対して、何も言わなかった茂木外相
鈴木)ただ、茂木さんと王毅さんの記者会見を聞いて、極めて違和感を持ちました。王毅さんは、尖閣諸島周辺のことに関して、かなり強い口調で「一歩も譲らない」と言っています。
飯田)主権を守って行くと。
鈴木)それに対して茂木さんは、「我が国のものだという主張は変わらない」ということを主張して、お互いの意見が合わなかったと見せるかと思いきや、何も言わなかった。言われっぱなしで、「日本はどう考えているのか」ということを言わなかった。私はメッセージとして、これはおかしいと思いました。というのは、その前になるのだけれども、菅総理がバイデン前副大統領と電話会談をしました。10分くらいだったでしょうか。
飯田)そのくらいだったという話ですね。
バイデン氏から「尖閣は日米安保の範疇なのだ」という確約を取ったにも拘らず
鈴木)10分しかないのですが、話すことは山ほどある。「おめでとう」からコロナやオリンピック、経済についてと、たくさんあるわけです。そのなかでわざわざ尖閣の話をして、「尖閣は日米安保の範疇なのだ」ということを確認しました。「尖閣で何かあったら、アメリカが出て行きますよ」ということです。
飯田)その確約を取ったということですよね。
鈴木)話すことが山ほどあるなか、わざわざその話をし、そしてそのあとの記者発表でも、それを全面に出した。政務三役経験者の自民党議員が、「これは極めて意図的です」と言っていました。それは中国とこれから対話や関係をつくって交渉して行くなかで、「我々には日米安保という後ろ盾があります。そういう強い姿勢なのですよ」ということです。
飯田)伝家の宝刀。
後付けで言うことのマイナス~菅総理が王毅氏に言うことになってしまう
鈴木)そうです。「そういう強気を背負ってこれから交渉して行く」という意味なのですと。「なるほどな」と思いました。「Win-Winでしっかりと交渉して行く」と思っていたのに、あの2人の外相の会見は「なんでこんなに弱腰になっちゃったの」という気がしました。翌日に訂正したということですが。
飯田)外務報道官がコメントを出したということのようです。「強い懸念を中国外相に言っていたのだよ。実は」という形で。
鈴木)後付けで言うと、それはマイナスです。外相同士がお互いに「この領土問題についてそれぞれ主張があります」ときちんと見せることは、外交上のマイナスでも何でもなく、演出上もそれは必要だったと思います。やらないと、今度は批判が来たら、菅総理が王毅さんと会うときに言わなければならなくなる。菅さんのイコールパートナーというのは習近平さんでしょう。
飯田)そうですよね。トップ同士ですよね。
鈴木)外相同士がバチバチやって、総理が今度会うときには、ニコニコしていれば。
飯田)「まあまあ、現場に任せているから」みたいな。
王毅・茂木外相会談は日本側の失敗
鈴木)そういうことです。これから日中外交の交渉をして行くなかで、ちょっと出足が躓いた感じがします。その背景に、例えばいまの政権は二階さんが菅政権の後見人と言われているけれども、二階さんは「中国とはうまくやって行こう」という姿勢なので、それもあって少し弱腰になってしまっているのかなということも感じます。
飯田)そうですね。
鈴木)この時期に中国が日本に来るのは、アメリカがゴタゴタしているなかで、アメリカや日本、それから韓国、オーストラリア、インド辺りの中国包囲網に楔を打つチャンスだと思っているわけです。日本をうまく取り込むことによって、アメリカとの関係を悪くさせる狙いがある。逆に言うと、いま日本は高く売れるわけです。でも、高く売るためには、相当したたかにやらないといけません。そう言う意味では今回、私は王毅さんに対しての、少なくとも表に出ている会見では、やられてしまった感じがします。日本が失敗したと言ってもいいかも知れません。
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