災害派遣医療チームの現場に訊く「札幌、旭川の医療現場の現状」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年12月17日 17時30分
新型コロナウイルス感染拡大で医療体制の逼迫する北海道旭川市で、クラスターが発生した「慶友会吉田病院」に入る陸上自衛隊の看護官ら=9日午前
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月17日放送)にDMAT事務局次長の近藤久禎が出演。新型コロナウイルスのクラスターが発生している札幌、旭川の現状について解説した。
新型コロナの重症者が過去最多の618人
厚生労働省が12月16日に発表した新型コロナウイルスの重症者は618人で、15日よりも26人増えて過去最多となった。政府が11月末に宣言した「勝負の3週間」で、十分な効果が出なかったことが示されている。
災害派遣医療チームDMAT
飯田)16日、新たに確認された感染者数は2994人となっております。特に札幌や旭川など北海道でクラスターが発生している現場が多数あります。今回はその北海道で治療の指揮、救助にあたっていらっしゃる国の災害派遣医療チームDMATの事務局次長、近藤久禎さんに電話をつなぎ、現地の様子、クラスター対応などを伺います。近藤さん、おはようございます。いまどちらにいらっしゃいますか?
近藤)札幌市の保健所にいます。
飯田)保健所というと、クラスターがどう発生して、濃厚接触の方がどれくらいいらっしゃるかというようなことの支援にも当たられているということですか?
近藤)札幌市内で起こったすべてのクラスターの現場の情報を一元に集めます。そのなかで地元の札幌市の保健所の先生方などと手分けをして、どの施設を優先的に支援して行くかということを調整します。そして現場に向かい、然るべき支援をします。
飯田)DMATという組織ですが、もともとは災害時の派遣医療チームということで、地震等々が起きた際の初動に重点が置かれている組織と理解してよろしいですか?
近藤)はい、その通りです。災害時に医療支援を行うために、平時、医療機関で働いている職員の方々に4日間くらいの研修を受けて登録していただいています。災害時には飛び交う情報も多くなり、平時の医療体制では対応できない状況になりますので、各医療機関と連携して医療体制を確立させます。それから被災地に近い医療機関を訪問して、正確な情報を医療機関の方々と分析して、何が必要かということを明解にします。
飯田)なるほど。
一般災害でのライフラインの途絶~コロナの場合は医療機関での防護服不足
近藤)台風などの水害では、ライフラインが途絶しますので、電気や水をどのように供給するかという調整から始まることが多くあります。その後、その病院が避難をしなければいけないような状況であれば、避難のお手伝いをする。患者さんが多くいれば搬送のお手伝いをする。さらに診療の手が足りなければDMATを収集させ、そこで診療の支援をする。そのような活動を一般災害時ではやっております。
飯田)今回のコロナでは、ライフラインの途絶はないけれども、その先の方の支援というところに重点が置かれているわけですか?
近藤)コロナの場合、ライフラインにあたるものは、医療施設の防護衣だと思っています。防護衣がまったくないというところもありますので、まずは行政の方々と協力しながら防護衣を現場に届け、それからさまざまなことを始めるということになります。
飯田)現場の病院がそこまで手が回らないということで、DMATはそういう側面支援もするということですね。
近藤)災害時の医療支援チームということで、「被災地の医療を支えろ」ということを教育する際に言っています。
札幌、旭川の医療体制の現状
飯田)その視点から見て、いまの札幌、旭川の医療体制はいかがですか?
近藤)札幌は11月中旬くらいから入らせていただいていますが、そこでは100人規模のクラスターがさまざまなところで出て来ています。また、旭川でも大きなクラスターがいくつか起きて、地域病院のキャパシティを超えてしまうという状況がいくつかありました。現在は病院のクラスターというのは出口が見えていますし、札幌もまだ予断は許さないのですが、発生数自体は減少して来たのかなという印象はございます。
飯田)行政もかなり注意喚起をしていますので、行動様式が変わって来たということですか?
近藤)クラスターの発生数は、市中の感染と一定程度の相関はあると思います。単純に考えて、市中感染が多くなれば、クラスターも多くなります。しかし、大きなクラスターが出るか出ないかというのは、運のようなところがございまして、市中感染がまったくないところでも、突然大きなクラスターが起きている地域もあります。市中感染が収まると、クラスターの数が収まるというのは事実です。
さまざまな理由で看護師が減っている医療機関
飯田)医療機関についてはある程度の目処はついて来たということですか?
近藤)少なくとも、いまの札幌、旭川、特に旭川については一定の山場は超えていると思っています。
飯田)働く方々の環境面、物資の面などで不足しているものはありますか?
近藤)我々が見ていて、ものが足りないということは、いまのところありません。ただ、医療現場はもともと人材不足ということもあります。そういう地域でコロナのクラスターが起こると、通常の作業に比べて3倍くらいの負荷がかかると言われています。それに対して、看護師の方が感染してしまう、もしくは濃厚接触者になる、もしくは濃厚接触者にならなくても子供を預けられない、ご家族に反対されるなど、さまざまな理由で出勤できなくなってしまう方々がいらっしゃいます。そういう意味で、仕事が増えて行くなかで職員が減ってしまう。そのような状態もございます。
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