市川染五郎の母・藤間園子さんが忘れられない愛犬とは ~20年ぶりに犬を迎えて~
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年12月19日 21時50分
【ペットと一緒に vol.225】by 臼井京音
歌舞伎俳優の十代目松本幸四郎さん・八代目市川染五郎さんの家族である藤間園子さんは、忘れられない愛犬ケンケンのような男性と将来結婚したいと思い続けて来たそうです。
今回は、2020年の春に約20年ぶりに犬との暮らしをスタートさせた、藤間園子さんのストーリーをお届けします。
愛犬みたいな人と結婚したい!
歌舞伎俳優の松本幸四郎さんの妻で、市川染五郎さんの母である藤間園子さんは、物心ついたときからそばに犬がいたと語ります。
「生まれてから結婚するまで、ずっと犬と一緒に暮らして来ました。シェットランド・シープドッグ、ビーグル、真っ黒なトイ・プードルなど、さまざまな犬種が自宅にいましたね。なかでも最も心に残っているのは、父が突然買って来た柴犬のケンケンです」
ケンケンは野性味のあるオスの柴犬だったと言います。
「朝起きて庭にいるケンケンのもとへ行くと、捕らえたハトを食べていたこともありましたね。そんなケンケンに、中学や高校の登校前によく語りかけていました。そのままケンケンは、横をトコトコと歩きながら私を駅まで送ってくれたんですよ」と、園子さんは振り返ります。
思春期だった園子さんは、家族に言えないような心の内も、ケンケンにならば安心して話せたとか。
「どんな話でも私の顔をじっと見ながら聞いてくれましたし、私に寄り添ってくれました。とにかく男気があり、家族を守ることに徹していました。そんなケンケンみたいな人と、将来は結婚したいと思い続けたものです(笑)」
留学中に愛犬が行方不明に
園子さんは20代の初めごろから、ニューヨークに留学をしていました。するとある日、日本から1本の連絡が入ったそうです。
「それは、ケンケンが行方不明になったという知らせでした。もう老犬になっていたケンケンを兄たちが必死で探すと、歩道でひとりポツンと佇んでいるところを発見したそうです。慌てて近づき手を伸ばすと、ケンケンは兄の手をガブっと咬んだとか。それまで、一度も家族を咬んだことなどないんですよ。そしてケンケンは、そのまま走り去ってしまったと言うのです」
園子さんはその報告を聞き、「ええっ、ケンケンがそんな!?」と声を上げずにはいられなかったと言います。
「アメリカから日本に飛んで帰りたい気分になりました。ケンケンに会いたい! ケンケン、無事でいて! その思いを抱えながらしばらく過ごしました。すると次第に、ケンケンは家族に弱った自分の姿を見せたくなくて、誰の手を煩わせることもなく独りで死のうと決断して姿を消したのではないかと思うようになったんです。ケンケンは、とても誇り高い犬でしたから」
その後、園子さんも日本にいる家族も、ケンケンに再び会うことはできなかったそうです。
「ニューヨークでは街を歩く犬を見ながら、そして帰国してからもずっと、ケンケンにはたくさん守ってもらったなぁ……と、折に触れて思い出していました」
新型コロナ禍で愛犬を迎える
2020年の春、園子さんはおよそ20年ぶりに犬との暮らしをスタートしました。
「新型コロナウイルス感染症の影響で、夫である松本幸四郎の歌舞伎の仕事がすべて延期やキャンセルになってしまったのがきっかけです。家族みんなが自宅に籠る日々が続くなかで、『そろそろ犬を迎えられるかも』という話が子どもたちと私との間で最初に出ました。実家でいつも犬と暮らして来た主人も賛成してくれ、子どもたちの長年の夢が叶うことになったのです」とのこと。
こうして、高校生の市川染五郎さん、中学生の松田美瑠さんも交えての家族会議の末、ラブラドール・レトリーバーのオスの子犬が藤間家に仲間入りしました。
「名前は、ニッキー。息子の染五郎が、高麗屋(屋号)にちなんだ名前を付けました。高麗屋の当たり役である、『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』に登場する悪役の仁木弾正(にっきだんじょう)から採ったようですね。私はとても、この名前が気に入っています」と、園子さんはニッキーくんを撫でながら微笑みます。
現在、ニッキーくんの散歩は幸四郎さんや染五郎さんが行くことが多いとか。また、染五郎さんの家庭での夢は、ニッキーくんが成犬になったら同じベッドで眠ることだそうです。
「ニッキーはイタズラっ子で、いまのところケンケンとはだいぶ性格が違います(笑)。息子のイヤホンを噛んでボロボロにして飲み込んでしまったり……。眠っているとき以外は、目が離せませんね。一段落した子育てが、また始まったような感じがしています。でも、本当にかわいくてかわいくて。家族みんなの笑顔が、ニッキーのおかげで増えました。そして、犬が持つ癒しの力の大きさを数十年振りに日々実感しています」
そう語る園子さんのそばで、遊び疲れてゆったりとくつろぐニッキーくん。いまはまだ1歳に満たず幼さが残りますが、成犬になったら、園子さんが学生時代に結婚したいと思ったケンケンのように頼もしくなり、園子さんを守ってくれる存在になるかも知れません。
※藤間園子さんのインスタグラムでも『#ニッキーの日記』が紹介されています。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。
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