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「はやぶさ2」の快挙、極限の技術がもたらす“美しさ”

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年12月23日 17時25分

「はやぶさ2」の快挙、極限の技術がもたらす“美しさ”

「報道部畑中デスクの独り言」(第225回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、探査機「はやぶさ2」がもたらした快挙と、その「機能美」について—

輝くサンプルキャッチャー 「機能美」を感じる(JAXA提供)

12月6日、探査機「はやぶさ2」のカプセルが無事、地球に帰還。カプセルはJAXA相模原キャンパスに移送されて慎重な開封作業が行われ、ほぼ1週間後、期待を超える結果がもたらされました。

「非常に喜ばしいご報告ができる」

15日、オンラインによるJAXAの記者会見で吉川真ミッションマネージャがあいさつした後、津田雄一プロジェクトマネージャのビデオメッセージが流れました。

「明らかにリュウグウで採取された砂が相当量入っているということが確認できた。はやぶさ2はサンプルリターンミッションを完全完遂できたことになる。計画して10年以上、打ち上げてから6年、私たちが夢にまで見た小惑星の砂、地球外の天体のサンプルがいま、私たちの手元にある」

サンプルキャッチャーの画像、その直径は48mm、高さは57mm。その容器のなかに黒い砂粒=“お宝”がごそっと入っていました。砂粒が入っていたのはA室と呼ばれるスペースで、1回目の着陸の際に採取されたものです。

サンプルコンテナの底面で黒い粒子が確認できた(JAXA提供)

「言葉を失うぐらい予想を超えていた。感動するほど入っていた。数ミリサイズのサンプルがゴロゴロ。どっさり入っていた」

数多の砂粒が確認されたのは、この日の午前。“第一発見者”澤田弘崇主任研究開発員は、“ホヤホヤ”の発見に興奮冷めやらぬ様子でした。

また、名古屋大学大学院の渡邊誠一郎教授は、「相当いろいろなことがやれるとワクワクしている。有機物がどのように天体で進化して来たか、いろいろなことがわかればと期待している」と話しました。

採取された砂粒の重量は5.4gであることがその後、明らかになりました。目標(要求値)の0.1gを大きく上回るもの。先に判明したキャッチャー入口付近の砂粒は、この重量には含まれておらず、実際はさらに増えることが予想されます。

また、カプセルから採取した気体=ガスも、リュウグウからのもので間違いないとされました。

詳細は今後の分析を待つことになりますが、「オーストラリアで簡易分析されたガスが地球大気(比率が窒素4:酸素1)と違っていたこと」「特殊なアルミニウムのシールにより、密閉が設計通り行われていたこと」「オーストラリアで採りきったと思われたガスが、相模原でさらに検出されたこと」がその根拠です。ガスは砂粒の表面がこすれることによって遊離したのではないかというのが、JAXAの見立てです。

初期分析を担当する東京大学大学院の橘省吾教授は、「揮発性のガスは星が生まれる場所、誕生しようとする場所に豊富に存在することが天文観測でわかっている。太陽系の最初のころに私たちを連れて行ってくれるようなガスではないか」と、今後の研究に期待を寄せました。

まさにゴロゴロ! サンプルキャッチャー「A室」から”大量”の砂粒が!(JAXA提供)

多分に感覚的ではあるのですが、私はこの砂粒が入ったサンプルキャッチャーを見て、ある種の「美しさ」を感じました。「機能美」という言葉がありますが、機能に徹し、虚飾を廃したデザインは見る者を魅了するオーラを放つことがあります。

今回のサンプルキャッチャーについても、容器の加工精度、研磨を尽くした表面、ネジの精密さなどは、まさに目的のために極限まで機能を追求したものの美しさではないかと思います。

以前、自動車メーカー、スズキの鈴木修会長が軽自動車を「芸術品」と評したことがあります。軽規格という厳しい制約のなかで、最大の機能を追求したことからそう感じたのではないかと私は推測します。

大量生産の自動車はいわゆる「一点もの」(もちろんリハーサル用のバックアップはありますが)の宇宙関連機器とは違いますが、同じ工業製品という面では、相通じるものがあるのではないでしょうか。

宇宙開発の魅力は何か……スケールの大きな世界に対するロマン、未知なる世界がかき立てる知的好奇心などさまざまですが、極限の技術でそれらを実現する機器も大きな要素だと思います。それは日本の実験棟「きぼう」や補給機「こうのとり」からも感じるものでした。

52億kmもの長期飛行、小惑星への着陸、粒子の採取……いくつもの厳しいハードルを乗り越えるために叡智を結集し、研鑽を重ねた技術がこのような美しさに結集したのではないかと改めて感じます。そして、そうした技術は人間によって磨かれたもの。その意味では携わる者たちの“魂の発露”とも言えるでしょう。(了)

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