ベーカリープロデューサー・岸本拓也~パン屋の店名を「考えた人すごいわ」とした理由
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年12月28日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にベーカリープロデューサーの岸本拓也が出演。これまでにプロデュースしたパン屋について語った。
黒木)毎日さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺う「あさナビ」。今週のゲストは食パンブームの仕掛け人、ベーカリープロデューサーの岸本拓也さんです。よろしくお願いいたします。
岸本)よろしくお願いします。
黒木)これまでにプロデュースしたパン屋さんはおよそ250店舗。肩書は唯一無二の「ベーカリープロデューサー」でいらっしゃる。2013年にはジャパンベーカリーマーケティングを設立されました。CCCメディアハウスから出された『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』という単行本がありますが、タイトルに使われている「考えた人すごいわ」というのは、何とこれ、パン屋さんの名前なのですね。
岸本)そうです。パン屋さんの名前です。
黒木)「○○ベーカリー」と言う名前が多いですよね。そうではなく、名前こそが「考えた人すごいわ」(笑)。
岸本)このパン屋さんは東京の清瀬駅にあるのですが、清瀬駅のホームからちょうど見えるのですよ。ホームに立っている人を観察していたら、みんな止まって何か考えているんです。「何ができるんだろう」とみんな思っていたと思います。
黒木)「考えた人すごいわ」というネーミングはどこから閃いたのですか?
岸本)我々のこのパンは常識に囚われないパンのつくりかたをしています。求めているものは口溶けがよくて、口のなかでスーッと溶けて行って、風味として甘いパン。老若男女が食べられるパンなのです。そして、実に美味しいパンができたときに、思わず「これ考えた人すごいわ」と言ってしまったのです。このときの感動の思いをダイレクトに伝えると、皆さんに伝わるのかなということで、この店名にしました。
黒木)ベーカリーからオファーがありますよね。まずはそのパンをいただくのですか?
岸本)パン屋さんをやりたいというオーナーの方からオファーをいただいたら、その会社、依頼する方のことを調べて、その地域の街を調べて、うまく掛け合わせるわけです。その地域の人口構成から、どのような方が住んでいるかということを調べて、どんなパンをつくるかを考えます。
黒木)調べ上げるのですね。
岸本)例えば、依頼するオーナーさんが「フランスパンが食べたい」と言ったら、フランスパンを食べるような地域を探しに行きます。そういうところからプロデュースをさせていただいています。
黒木)その「考えた人すごいわ」というパン屋さんもあるし、「これ半端ないって!」とか、「街がざわついた」「すでに富士山超えてます」といろいろなネーミングがあります。これもやはり閃くのですか?
岸本)つくりだめはしないので、依頼されるクライアントさんとその街を掛け合わせて考えていますね。
黒木)ネーミングとストーリー性の関係ですね。そこからパン屋さんの名前が閃いて行くわけですか。
岸本)閃いて行く感じですね。美味しいということは、私のなかでは当然だと思っていて、求めるのは「美味しいを越えたパン屋さんの存在」です。パン屋さんの存在そのもので笑顔をつくりたいのです。味以外のストーリーを語る上で、ネーミングというのは話題になるのではないかと思います。
黒木)パン屋さんが街を元気にして行くという。
岸本)はい。
黒木)「わたし入籍します」というパン屋さんもあるのですが、これは何だったのですか?
岸本)土地が枚方市役所という市役所のすぐ近くにあるのです。市役所と言ったら、皆さん婚姻届を出しに行く場所であるということと、「わたし入籍します」というのはフィクションのストーリーをつくることが好きで、「パンの顔をしたイケメンの男性と主婦が夢をみて、イケメンのパン君と結婚してこのパンをずっと一緒に食べて行こうね」というイラストを描いているのです。
黒木)なるほど。だから、同じような「朝起きたら君がいた」というパン屋さんの名前も。
岸本)そうです。明日の朝「おいしいパンが食べたい」と思って起きたら、パンの布団がいたという……。フィクションで話題をつくって楽しんでいただきたいと思いまして。
黒木)そういうことがベーカリープロデューサーのお仕事でいらっしゃるということですか。
岸本)「美味しさを超えた楽しさをつくって行きたい」というのがありまして。
黒木)もともとパンがお好きとおっしゃったのですが、パンが好きでそういうベーカリーのプロデュースをするようになったのですか?
岸本)小さいころによく母親にパン屋さんに連れて行ってもらいました。もちろんパンも好きなのですが、パン屋さんに入ったときのワクワク感が好きだったのです。母親にパンを買って来てもらって食べるというのもいいのですが、一緒にパン屋さんに行って、香りを楽しんで選ぶ、その「ワクワクする気持ち」を自分なりにプロデュースしたいと思っています。
黒木)以前は外資系のホテルで、全然違う仕事をなさっていたということですが。
岸本)ホテルマンはお客様に喜んでいただくという仕事です。共通点としては自分のなかであるのですが、「人に喜んでいただきたい」。そこだけですかね。
岸本拓也(きしもと・たくや)/ベーカリープロデューサー
■昭和50年、横浜市生まれ。関西外国語大学外国語学部スペイン語学科卒。
■外資系ホテルを経て20代後半で独立。平成18年、横浜市にベーカリーカフェ「TOTSZEN BAKER’S KITCHEN(トツゼンベーカーズキッチン)」を開業。
■平成23から異業種のベーカリー開業を支援するコンサルティング業務を開始。平成25年、その業務を専門に請け負う会社「ジャパンベーカリーマーケティング」を設立。代表取締役社長に就任。これまでに約250店舗以上のパン屋さんを手掛ける。
■岸本さんがプロデュースするパン屋さんは味の豊かさはもちろん、店舗名・商品名がユニークで驚きの連続! 全国各地で行列ができるお店となっている。
「考えた人すごいわ」「これ半端ないって!」「パンダが笑ったら」「アゴが落ちた」「街がざわついた」「うん間違いないっ!」など。
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