「はやぶさ2」カプセル確認作業続く……そして2020年の暮れに
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年12月28日 17時20分
「報道部畑中デスクの独り言」(第226回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、探査機「はやぶさ2」のカプセル確認作業に関する続報について—
2020年も残すところわずか。まさに新型コロナウイルスに明け暮れた1年となりましたが、そんななかで小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載されたカプセル帰還は、日本にとって朗報でした。
カプセルの確認作業は順調に進められています。12月24日、JAXA=宇宙航空研究開発機構は年内最後の記者説明会をオンラインで開き、サンプルキャッチャー内の“小部屋”の中身を明らかにしました。
前回15日の記者説明会で判明したのは3つの小部屋のうち、「A室」の中身。ここには小惑星「リュウグウ」への1回目の着陸の際に採取された砂粒が「ドッサリ」入っていました。
今回は「C室」の開封も行われました。確認された砂粒はA室のそれより大きく、最大で1cmのものもあるということです。なぜ、大きさが違うのかは不明ですが、解析を担当するJAXAの臼井寛裕グループ長は、「着陸地点の岩盤が固く、大きな粒子が割れて入りやすかった可能性がある」と話しています。
C室は2回目の着陸で採取されたもの。人工的につくったクレーターから採取した“地中”の砂粒と期待されますが、これが本当に地中からのものかどうかは、今後の分析を待つことになります。
なお、C室からは砂粒の他に人工物とみられる金属片のようなものも確認されましたが、JAXAではクレーターをつくる弾丸を発射する際に、装置の一部であるアルミ箔が混入した可能性を挙げています。試験でも同様の現象が確認されており、想定通りであれば、分析に影響はないということです。
残る「B室」からも、肉眼で見えるレベルの黒い粒が確認されました。いまはこれらの砂粒を回収容器に移し、顕微鏡による観察を始めています。
また、オーストラリアではサンプルコンテナ処理の際に、砂粒のものとみられる音を小型マイクで収録し、説明会で公開されました。臼井グループ長が説明した音は「シャリシャリ」という、小さいながらも貴重な響きです。
説明会ではカプセルを回収したスタッフも参加。ただ、新型コロナウイルスの影響で、オーストラリア・ウーメラから帰国後も隔離措置が続いており、スタッフはそれぞれの場所での出席となりました。順調に見えた一連の作業にもさまざまな困難があったようです。
現地は砂漠地帯だけに、昼は最高47度の灼熱地獄となる一方、夜はぐっと気温が下がります。カプセルの光学観測チームは暑さと寒さの他、昼は蠅、夜は蛾の襲来に悩まされたと言います。
方向探索チームも、到着直後の隔離政策と灼熱下の作業で体力維持に気を使いました。ただ、日本で10回以上のリハーサルを重ねたため、「本番の方が簡単だった」と語ります。
軌道解析の担当者は解析1条件あたり5000通りの計算が必要だそうで、そのためにコンピュータを1日がかりで稼働させ、解析にあたったと明かしました。マリンレーダーのチームは装置設営の厳しさの他、情報連絡の困難さを挙げました。
衛星電話がリハーサルでなかなかつながらず、本番では「念じながら受話器に耳を強く押し当てて」対応。本番が終わってホテルに帰っても、耳に呼び出し音がついて離れなかったと言います。
万が一に備えたドローンのチームも、ヒートシールドの位置特定に貢献。カプセル帰還から11時間で、すべての構成品を回収できたのは「驚きであった」と担当者は語ります。
数々の困難に見舞われながらも任務を完遂。「やるべき人がやるべきことをやる」……こうしてみると、津田雄一プロジェクトマネージャが日ごろから心を砕いて来た「チームワーク」は伊達ではないと、改めて感じます。
現在はカプセルの状況を確認している段階で、分析というステージに移るにはまだまだ時間を要しますが、来年(2021年)に向けて「ワクワクする宿題」と言えましょう。
新型コロナウイルスは変異種も出現し、終息への道筋は混とんとしています。一方で探査機「はやぶさ2」のような快挙もあり、年の暮れの小欄は宇宙関係の話題が集中しました。
2020年もさまざまなニュースに接して来ましたが、いま我々はこれまでにも増して「歴史の大きな転換点にいる」と実感します。そんな意識の下、今後も使命を果たして行ければと思います。
今年も小欄「報道部畑中デスクの独り言」をご覧いただき、ありがとうございました。皆さま、どうぞよいお年をお迎えください。(了)
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