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加賀温泉駅「金沢日和」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.24「高野商店」編(7))

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年1月12日 11時50分

加賀温泉駅「金沢日和」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.24「高野商店」編(7))

【ライター望月の駅弁膝栗毛】

683系電車・特急「サンダーバード」、北陸本線・大聖寺~加賀温泉間

北陸本線を走る特急「サンダーバード」の横では、着々と北陸新幹線の工事が進みます。
現在、工事が行われている金沢~敦賀間の約125kmには、いまの特急停車駅に準じて、小松・加賀温泉・芦原温泉・福井・南越(仮称)の各駅が設けられる予定です。
なお、新幹線開業後の東京~加賀温泉間は約3時間、さらに、大阪まで全通しますと、大阪~加賀温泉間の所要時間は、約1時間と見込まれています。

(参考)JR西日本ホームページ、石川県加賀市ホームページ

高野商店・高野宣也社長

新幹線開業に向けて、いまは仮駅舎での営業が続く加賀温泉駅を拠点に、金沢駅や、福井駅向けにも駅弁を製造する「高野商店」。
5代目の高野宣也社長のインタビューをお届けしてきた「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第24弾も、いよいよ完結編となります。
今回は、高野商店・創業125年の節目に当たって、今後への抱負を伺いました。

高野商店、「金沢日和」製造風景

●創業125年、冷凍技術を磨いて“通販駅弁”の拡充を!

―大黒屋が今庄駅で駅弁を売り始めてから、令和3(2021)年で125年です。「高野商店」が、これから力を入れていきたいことは、何でしょうか?

冷凍駅弁による「通信販売」の充実ですね。
高野商店のマンパワーでは、普通のクール便で駅弁をお送りするのは難しいので、クオリティを上げて、冷凍技術をさらに磨いていかないと……と思っています。
ただ、冷凍技術を突き詰めてしまうと、駅弁とは程遠いものになってしまいかねませんので、駅弁としても成立するものをつくることで、相乗効果を狙えたら……と思っています。

―高野社長が今後、開発したい駅弁はありますか?

石川県の名物を使った駅弁や海鮮丼系の駅弁にチャレンジできたらと思っています。
加えて、レンジでチンして解凍する駅弁もいいんですが、自然解凍で食べられる駅弁は、何とかつくってみたいと考えています。
やっぱり駅弁屋ですから、「弁当が食べたいときにすぐ食べられる」というのは、とても大事なことですので。

W7系新幹線電車「はくたか」、北陸新幹線・新高岡~金沢間(2018年撮影)

●「駅弁を食べるためだけに金沢へ行く」、そう思わせる駅弁をつくりたい!

―高野社長は、これからニッポンの駅弁をどんな形で盛り上げていきたいですか?

いまは何でも食べられる時代ですが、駅弁には「伝統と地域性」が残っています。
これを大切にしていかないといけないと思います。
全国でも世界でも、人がある地域を訪れたら、その地域のものを食べたいんです。
駅弁自体のクオリティは総じて高いですが、それでもまだ「伸びしろ」があると思います。
街でいただくものとは少し違った、地域性や文化の要素をブラッシュアップしたいです。

―高野社長が感じる、いまの課題は?

若い方へのアプローチが足りていないように思います。
いま、若い世代の方のほうが、「食べ歩き」がとても好きですよね。
「あるものを食べたい!」となったら、自分でよく調べて、どこへでも足を運ばれたりします。
となれば、「駅弁を食べるためだけに金沢へ行きたい!」と思わせるような駅弁をつくりたい。
駅弁は、それができるくらいのクオリティとポテンシャルがあるものだと思っています。

681系+683系電車・特急「サンダーバード」、北陸本線・粟津~動橋間

●白山の山並みを眺めながら、高野商店の駅弁を!

―「駅弁をいただくために金沢へ……」、夢が広がりますね!

幸い、会社が小さい分、フレキシブルな対応はできると思うので、あとは見た目の美味しさ、キャッチーな感じをどれだけ出していくことができるか、その部分の追求は続きますね。
「見た目+美味しい=食べてみたい」の方程式を解かなくてはいけません。
綺麗な盛り付けは、日本の食文化ではありますが、つくり手としては熟練の技が必要です。
手取り足取り教えても、一朝一夕にできるものではありません。

―高野社長お薦め、高野商店の駅弁を“美味しくいただくことができる”車窓は?

北陸本線の加賀温泉~小松間で見られる、四季折々の白山連峰ですね。
我が家もそうですが、この地域で家を建てるときは、白山が見えるところを選ぶんですよ。
特に冬の雪をいただいた景色が綺麗ですよ。
近い将来、北陸新幹線が開業したら、この区間は高架ですので、美しい景色が楽しめる区間になるんじゃないかと思っています。

(高野商店・高野宣也社長インタビュー、おわり)

金沢日和

高野商店の昔ながらの駅弁とはひと味違った、ポップなイメージを受ける駅弁といえば、「金沢日和」(1100円)でしょうか。
金沢散策のお供に“女子旅”をイメージしてつくったという、小さめの海鮮ちらし駅弁です。
お品書きを兼ねた可愛らしい雰囲気が感じられるスリーブ式包装ですが、じつは前田家の家紋・加賀梅鉢をベースにつくられていて、しっかり伝統の重みも感じさせます。

金沢日和

【おしながき】
・ベニズワイガニといくらのちらし寿し 錦糸玉子
・のどぐろの塩焼き
・牡蠣のいしる煮
・たらのこ旨煮
・人参煮 きぬさや
・小松菜醤油漬
・刻み椎茸煮
・五郎島金時の甘露煮

金沢日和

ふたを開けると、ベニズワイガニの棒肉が載って錦糸玉子と共に色鮮やかなちらし寿司にのどぐろ・牡蠣など、ひと手間かけた海鮮系のおかずもまとまっていて、女性だけでなく、男性がいただいても嬉しい構成です。
金沢を拠点に存分に旅を楽しんだら、帰りはこの「金沢日和」で〆。
東京・大阪までの2時間半、金沢の旅の余韻に浸るのに最適な駅弁とも言えましょう。

681系電車・特急「しらさぎ」、北陸本線・加賀温泉~大聖寺間

江戸時代の旅籠をルーツに、昭和の半ばまでは福井・今庄で、鉄道の高速化に合わせ、石川・加賀市で新たなスタートを切ってからは、間もなく60年を迎える「高野商店」。
高野社長は、駅弁づくりで最も大切なことは、「ご飯を大切に」という思いだと語ります。
石川県が誇るご飯の美味しい駅弁をベースに、その上でもっと「旅の楽しみを提供したい!」という、熱い気持ちがお話のなかから伝わってきました。
いい時期になったら、北陸の変わりゆく鉄道風景を記憶に留めながら、今庄時代の立ち売りを模した「高野」のマークが入った駅弁を片手に、のんびりと旅に出てみませんか。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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